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KITAHARA COLUMN キタハラコラム

第12回 人材消費削減への5ステップキタハラコラム

人材消費削減への5ステップ

ラクラス人事クラウドサービスは、人事情報システムに求められるおよそすべての機能を持ちながらも、人材消費を削減することができます。処理を自動化することで、給与担当者は毎月の繰り返し作業から解放されます。設定を自動化することで、エンジニアはプログラミング作業から解放されます。人事クラウドは、人材の消費を大幅に削減します。

デジタル処理による自動化は、人材消費抑制のための有効な手法です。しかし人事業務には手作業に頼るアナログ処理も数多く残っています。ラクラスは、画像処理等を駆使することにより、アナログ処理の効率化も実現しています。今回のキタハラコラムでは、情報技術によって人材消費を抑制するためのラクラスの戦略を解説することにします。

題して、人材消費削減への5ステップです。

ステップ1:業務を分類する

まず、業務を規模の経済の大小によって分類します。規模の経済については、キタハラコラム第9回「クラウド経済学」に詳しく解説しています。

左図は、規模の経済が小さいときの処理量と資源量の関係を示しています。人手による業務である限り、処理に必要な資源の量は、処理すべき業務の量に比例します。分業や習熟により費用曲線の傾きを寝かせることはできますが、増加の割合はほぼ一定です。
右図は、規模の経済が大きいときの処理量と資源量の関係です。コンピュータによる給与計算のバッチ処理は、処理量が倍になったとしても、処理に必要な資源量(処理に必要な時間)は倍になりません。費用曲線はだんだんと横に寝ていきます。増加の割合が減少するのです。平均コストが減少すると言い換えることもできます。
ただし、規模の経済が大きいときには、処理量の大小に関係なく一定の固定的な費用が発生します。それは、規模の経済を大きくするための仕組みの構築にかかる費用です。コンピュータにより規模の経済を大きくしようとすれば、処理量の大小に関係なく、最初からコンピュータが必要になるということです。

人材消費削減への第一歩は、すべての業務がどちらのタイプなのかを分類することです。「勤務時間を集計する」の例をご覧ください。

業務 規模の経済の大小

 勤務時間を集計する

 1. 紙のタイムカードを社員から収集する⇨小
 2. タイムカードの出退勤時刻をエクセルに入力する⇨小
 3. 社員が出退勤時刻を記入するエクセルをメールで送付する⇨大
 4. 社員からメールで返信されたエクセルを開いてコピペする⇨小
 5. 計算式を組んであるエクセルで勤務時間を集計する⇨大
 6. 打刻から集計まで就業管理クラウドを利用する⇨大

⇨小の場合は、その業務にかかる時間が社員数に比例します。
⇨大の場合は、社員数にかかわらずかかる時間はほぼ一定です。
ただし社員数にかかわらず、5ではエクセルに計算式を組む工数が最初にかかりますし、6ではクラウドを設定する工数が最初に発生します。

既にお気づきのように、規模の経済の大小を判断するルールは簡単です。人手で処理すれば規模の経済は小さくなります。システムで処理すれば、最初に設定する工数はかかりますが、以降繰り返される工数は処理量にかかわらずほぼ一定になります。
とすれば、人材を消費しない方法は次の4つになります。

・規模の経済が大きければ、それをさらに大きくする。
・規模の経済が小さければ、規模の経済が大きい方法へ移行する。
・規模の経済が大きい方法に移行できなければ、費用曲線を寝かせる。
・あるいは、これまでのパラダイムと異なる方法で変革する。

順番に説明してまいりましょう。

ステップ2:規模の経済が大きければ、それをさらに大きくする

規模の経済が大きい仕組みであれば、処理量を増やすことにより、処理にかかる平均コストを下げることができます。つまり、一つの情報システムで処理できる量を多くすれば、平均コストは下がります。
多数の子会社をもつ大企業グループが、給与計算業務をシェアードサービスセンターに集約するのも、処理量を増やして平均コストを下げるという目論見があるからです。

しかし、集約によって平均コストを下げるためには、2つの条件を満たす必要があります。 第1の条件は、「その業務の規模の経済が大きいこと」です。情報システムを用いた業務であれば規模の経済は大きくなります。しかし、各子会社が手作業で行っていた業務を、手作業のままシェアードサービスセンターで引き受けたところで、平均コストの減少幅は限られています。手作業のまま平均コストを減少させる方法は、アダム・スミスの言う「分業」、ボストン・コンサルティング・グループの言う「習熟」、複数の業務を組み合わせることによる「平準化」、地方や海外に作業拠点を置くことによる「安価な賃金・賃料の利用」等しかありません。費用曲線をやや寝かせることはできますが、処理量と資源量がほぼ比例するという関係性は変わりません。
どの子会社も給与支払日が25日である限り、業務の平準化にも限界があります。作業拠点を地方に置けば、給与計算経験者の確保に頭を悩ますことになります。そして人数がある限界を超えると、集約による非効率性が目立ち始めます。社員の管理・教育等にかかるマネジメントコストや、情報共有のためのコミュニケーションコストが増加するからです。規模の経済が小さい業務を集約して処理量を大きくしたところで、平均コストは下げるのは困難です。

第2の条件は、「一つの仕組みでの処理量を増加させること」です。給与計算のバッチ処理という規模の経済が大きい業務であれば、集約により規模の経済をより大きくできます。しかしそこには、「一つの情報システムで処理できるのであれば」という条件が付きます。
給与計算のバッチ処理は規模の経済が大きい業務です。そこからシェアードサービスセンターに給与計算業務を集約しようというアイデアが生まれてきます。しかし、給与計算業務を集約したところで、子会社ごとに別々の情報システムを構築していては、規模の経済は大きくなりません。
一つの情報システムでの処理量を増加させる技術が「マルチテナント技術」です。マルチテナント技術は、規程の異なる企業の情報処理を一つの情報システムで処理するためのアーキテクチャです。マルチテナントであれば、ハードウェアの処理能力の上限まで処理量を増加させ、平均コストを減少させることができます。
ラクラス人事クラウドが提供するワークフロー、就業管理、統合人事データベース、給与計算、他システム連携等の機能はすべてマルチテナントです。各社別の規程に合わせたカスタマイズを、短期間に柔軟に行うことができます。
大企業グループのシェアードサービスセンターのために、マルチテナントのプライベートクラウドも提供しています。

ステップ3:規模の経済が小さければ、規模の経済が大きい方法へ移行する

人手をかけて行っている規模の経済が小さい業務を、コンピュータによる規模の経済が大きい業務へと移行させるのは、最強の効率化手法です。給与計算を電卓で行えば、処理量と資源量は正比例します。これをコンピュータで行えば、100人分であろうと10,000人分であろうと、気になるような時間差は生まれません。
毎月繰り返される給与・社会保険業務には、紙書類を人手で処理する業務が多数残っています。ラクラスは、これらの業務をコンピュータ処理に移行させるための技術開発を行っています。

まず、創業以来高い評価をいただいているワークフローです。身上申請や年末調整はもとより、勤怠申請、手当申請、人事評価、自己申告、経費精算、入退社手続き、アンケート、稟議など、社員と企業の間でやり取りされる紙書類をすべて電子化します。紙書類を収集し、内容を情報システムに入力しているのであれば、それらはすべて手作業です。ワークフローを使えば、件数に関係なくコンピュータが処理します。

もう一つは、e-Gov電子申請システム「Matsu」です。社会保険手続は、これまでほとんど紙書類で処理されてきました。社員が入社すれば、雇用保険被扶養者資格取得届に必要事項を記入して、管轄のハローワークまで持参しなければなりませんでした。ハローワークからの返信も、これまた紙でした。規模の経済の小さい業務の典型です。
厚生労働省が最初に作った電子申請の仕組みは、1件1件のデータを画面に手入力するという方式でした。コンピュータとインターネットを使っていながら、その中身は小さい規模の経済というお粗末としか言いようのない仕組みでした。
しかし今は違います。国は、複数の申請を一括してアップロードできるe-GovのAPI(Application Program Interface)を提供しています。件数にかかわらず届出にかかる時間は一緒ですから、規模の経済はとても大きくなります。
ラクラスが提供するe-Gov電子申請クラウドサービス「Matsu」は、お客様が保有する人事ERPとデータ連携して、社会保険等の届出を自動化する、大企業向けのサービスです。

ステップ4:規模の経済が大きい方法に移行できなければ、費用曲線を寝かせる

給与・社会保険業務の中には、規模の経済が大きい方法に移行したくても、どうしても人手が入ってしまう業務があります。税務署、市区町村、金融機関といった外部組織との情報のやり取りは、いまだに紙と印鑑が必要になります。大きい方法に移行できなければ、規模の経済は小さいままで、費用曲線を横に寝かせる技術開発を行います。

一例として、年末調整支援システム「Hiiragi」を紹介します。年末調整書類の配布・回収業務は、クラウドに移行することで規模の経済が大きな業務に変わります。この部分だけを取り扱うクラウドサービスも増えています。
しかし年末調整においては、もう一つ規模の経済が小さい業務が残ります。それは保険料控除証明書の確認業務です。人事部を毎年悩ます膨大な紙書類の手作業です。この業務は、保険料控除証明書のフォーマットが保険会社ごとに異なるため、コンピュータ化は難しいと考えられてきました。
そこでラクラスは、社員が提出した保険料控除証明書をスキャンし、発行した保険会社を高速に判定するシステムを開発しました。どの保険会社が発行したのかを判定できれば、照合すべきデータが記載された場所を特定できます。記載場所が特定できれば、照合作業は専門知識のない作業者でもできる業務に変わります。記載場所を探し回る必要もありませんから、作業時間は大幅に短縮されます。高速マッチング技術は当社の特許です。
ラクラスは、Hiiragiを用いた年末調整BPOサービスを提供いたします。

ステップ5:技術革新による人材消費の抑制

最後に取り上げるのは、パラダイムを変革するような技術革新です。ラクラスが開発したフレームワーク「SQN」は、「処理の自動化」「設定の自動化」を実現しました。ラクラス人事クラウドサービスは、SQNを用いて開発されています。
ラクラス人事クラウドは、1ヶ月にわたる給与計算の手順を記憶し、これを自動実行します。人間の役割は、人事クラウドが実行した手順と結果を確認することに変わります。そして、自動実行の手順を設定するのにプログラミングは必要ありません。人間の役割は、最も効率的で付加価値の高い手順は何かを構想し定義することに変わります。
SQNは、情報システムの構築と運用にかかるパラダイムを一変させる可能性をもっています。

最後にちょっと雑談を。 米国カリフォルニアにSine Qua Nonというワインのブランドがあります。生産量が少なく極めて高品質です。カルトワインと称されています。
ブレンドは毎年異なっています。ワイン名もエチケットのデザインも毎年違います。
そして2009年のビンテージに付けられた名前は、パラダイムを変革するという私たちの心意気を英語で表現してくれています。
“Turn the whole thing Upside Down.”