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KITAHARA COLUMN キタハラコラム

第11回 いよいよ収集が始まるマイナンバーのリアル

従業員からのマイナンバー収集がいよいよ始まります。「保管と廃棄」について解説するという前号の予告を覆し、これまで「マイナンバーのリアル」で提供してきた情報をアップデートさせていただきます。

生年月日プレ印字方式での収集を始めます

マイナンバーのリアル 第9回では、免許証やパスポートではない「もう1つの身元(実在)確認書類」が認められていることを説明しました。「個人番号関係事務実施者から送付される個人識別事項(氏名及び住所又は生年月日)がプレ印字された書類」です。

国税庁が発行する「国税分野における番号法に基づく本人確認方法[事業者向け]」33ページに記載されたこの方法は、従業員からの収集に絶大な威力を発揮する方法です。しかし残念ながら、厚生労働省からの本人確認のガイドラインが出てこないという状況の中では宙に浮いたままでした。

そのような中、2015年10月5日が過ぎました。この日、住民票住所を基準にマイナンバーが付番されたというのに、厚生労働省からのガイドラインは出ないままでした。

私どもの結論は、この「氏名・生年月日プレ印字方式での収集を開始する」ということです。同じ結論に達して既に動き始めている企業もあります。その中には、充実した法務部門を持つ大企業グループも含まれます。この方法を用いた個人番号収集を実現するための情報システムや収集キットもできあがり、当社はいよいよマイナンバー管理サービスを開始いたします。

もとより厚生労働省の関係者は、国税庁と異なる基準を持ち込むことで混乱を引き起こすつもりはないと述べていました。第9回にアドバイスした「厚生労働省のガイドラインを待て」という言葉は撤回します。今後は国税庁ガイドラインが基準になるでしょう。皆様におかれましても、ぜひこの方式を研究くださいませ。

…といっても、当コラム以外では相変わらず解説されていない方法ではあるのですが。

本人に渡す源泉徴収票へのマイナンバー記載が不要になりました

マイナンバーのリアル 第5回のTips 1「本人宛の源泉徴収票と支払調書へのマイナンバーの記載」を見てください。私はここで、本人に渡す源泉徴収票には、所得税法施行規則第93条の定めに従いマイナンバーを記載しなければならないことを説明しました。

そして2015年10月2日、この施行規則が改正されました。本人に渡す源泉徴収票等には、個人番号の記載が不要になったのです。

同じ回のTips 1で述べたように、もとより支払調書へのマイナンバーの記載は求められていませんでした。従って、この改正により源泉徴収票にも支払調書にもマイナンバーの記載は不要になりました。ただし、税務署に渡すもの、および会社が保管する控えには、マイナンバーの記載が必要ですのでお忘れなく。

この改正の実務面への影響を、社会保障と税に分けて考えてみましょう。マイナンバーの利用開始は2016年1月です。社会保障に関しては、雇用保険(および国民健康保険)に関する手続きにおいて、定められた帳票に個人番号を記載する欄が追加されます。さらに2016年1月以降のいずれかの時期には、既存従業員と扶養家族のマイナンバーをハローワークに提出することになります。

これまでの経験からいうと、2016年1月が旧帳票と新帳票の絶対的な切れ目かというとそうはならないでしょう。ある程度の期間は両者が共存することになると思います。

次に税について考えてみましょう。今回の施行規則改正によって、退職者に渡す源泉徴収票へのマイナンバーの印字が不要になりました。1月退職者に対しても、マイナンバーを記載していない源泉徴収票を渡せばよいのです。これは企業にとって、目の前のプレッシャーが消えたことを意味します。この改正のニュースを聞いた人事部の方々は、一様にホッとした顔になります。

しかし、よく考えれば2017年1月に税務署に提出する源泉徴収票には、退職者とその家族の分を含めてマイナンバーが記載されていなければならないのです。原則は、2016年1月1日の在籍者全員のマイナンバーが収集されている方が良いことに変わりはありません。

「収集の制限」の補足

次は第10回「やってはならないこと」の記事の補足です。私は収集の制限の説明で「何人も社会保障と税に関して法令上認められる場合を除き、他人のマイナンバーを含む特定個人情報を収集・保管してはなりません」と書きました。そうしたところ、「家族の分もいけないのか」といった趣旨の質問をいただきました。ここで補足させていただきます。

ここでいう他人とは「自己と同一の世帯に属する者以外の者」と定義されています。従って、子供や配偶者等、自己と同一の世帯に属する者に対しては、個人番号の提供を求めることが許されています。

他の組織からの委託

最後に、第3回「企業の役割は何か」に関する補足です。この回の文末で「金融機関等から企業への委託・受託関係がある」ことを指摘しました。実は、既存従業員に対して利用目的を明示する上で、金融機関等を含む他組織から企業への委託をどのように表現するのかが、収集を開始する上での重要な課題になっています。

持株会であれば証券会社、財形貯蓄であれば金融機関、企業年金であれば信託銀行、団体保険であれば保険会社から、それぞれ別々に収集の依頼状が届き始めています。現段階において彼らは、それなりの内部検討を済ませた上で、委託する側としての依頼事項を列挙しています。その依頼事項にどのように応じるかは、企業の側に委ねられています。

マイナンバーが記載された従業員からの財形貯蓄等の申込書を、どのように安全に扱うかといった問題はまったく未解決です。しかしその問題以前に、どのように収集キットの利用目的に書き加えて、既存従業員のマイナンバーを金融機関等に渡す道筋を作るかが喫緊の課題となっています。皆様におかれましては、怠りなくこれら金融機関等からの情報収集を行うことをお勧めいたします。

次回こそは「保管と廃棄」を解説していきたいと思います。

Tips 4:労災保険を利用目的に含めることはできない

10月14日に厚生労働省から次の告知がでました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000096093.html

「個人番号を利用する労災保険手続については、事業主は番号法上の個人番号関係事務実施者とはならず、他制度の事務とは異なり、従業員などから個人番号を取得することはできません」と明記されています。ネット上で検索できる法律事務所等からの雛形には、利用目的として労災保険が入っているものがほとんどです。ご注意ください。