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【2026年】労働基準法の大幅改正は仕切り直し!提出見送りでも準備が必要な理由とは?

2026.02.04
労働基準法と書かれた書類と本

労働基準法は、2026年に大幅な改正が予定されていましたが、通常国会への法案提出が見送られる方針のようです。そこで本記事では、大幅改正が仕切り直しとなる労働基準法に関して、今後のためにも変更予定だった点や方向性についてまとめています。労基法の今後について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
監修者:社会保険労務士 伊藤大祐

 

労働基準法は、2026年前後の施行を視野に入れた包括的な見直しの検討が進んでいましたが、通常国会への法案提出が見送られる方針と報じられています。約40年ぶりとなる大改正は、日本の労働環境に大きな変化をもたらす可能性がある一方、現時点では施行時期は不透明です。

 

ただ、今回の見送りは企業にとって「何もしなくてよくなった」わけではなく、「準備できる猶予が少し延びた」と考えるのが現実的でしょう。
企業の人事担当者としては、引き続き日本政府が改正に向けて議論・検討されている論点を理解したうえで、いまからできる対策を講じておくことが重要です。

 

そこで本記事では、2026年1月時点で見えている労働基準法見直しに関する主な論点と、具体的な制度内容の公開までに人事担当者が行っておくべき一般的な準備内容を紹介します。今後施行されるであろう労働基準法改正について、具体的な変更点や方向性を知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

 

 

 

労働基準法改正の必要性と社会的背景

 

そもそも労働基準法の包括的な見直しが検討されている背景には、大きく分けて以下の2つの要因があるとされています。

 

 

(1)労働環境の変化や新たなニーズに対応するため

(2)国際的な労働環境の基準との整合性を図るため

 

 

まず、近年のビジネス環境には、スマートフォンを中心とするデジタルデバイスや、リモートワーク、副業・兼業などが普及しており、前回の大改正が行われた約40年前と比べて労働者の働き方や企業がマネジメントすべき対象・方法が大きく変わっています。

 

また、これらの変化は、労働者の適切な休息・休日の確保や健康問題、労働時間の管理などの面において、約40年前には考えられなかったリスクを企業にもたらすことが多くなっています。

 

今回想定されていた労働基準法の包括的な見直しには、現行の労働基準法に残存する「古いルール」を現代の労働環境に合わせることで、今の時代に働く人々および企業にWin-Winの関係を築きやすくする狙いがありました。

 

また、現行の労働基準法にもとづく日本の労働環境には、欧米諸国で採用されている国際的な労働基準と比べ、乖離が生じている点もあります。今回、法案提出が見送られる方針と報じられた改正議論では、EU指令や欧州、米国の制度などを参考にしながら、日本の労働環境を国際基準に近づけるための見直しを盛り込む方向で検討されていました。

 

現段階で審議を行っている労働政策審議会・労働条件分科会では、各国の制度が持つ利点や柔軟性なども参考にしています。こうした調査結果や情報を踏まえて今後整理・検討される改正の方向性は、国際的な労働基準との整合性という観点からも注目されやすい論点です。

 

 

労働基準法見直し改正の概要と主なポイント

 

先述したとおり、労働基準法の見直しは、当初は2026年の通常国会提出を念頭に議論が進んでいましたが、提出見送りが報じられており施行時期は不透明です。

 

ただ、厚生労働省の労働基準局では、以下の資料のなかで2026年前後に予定されていた労働基準法見直しにつながる項目および、各改正が求められる背景的な調査結果などを公開資料で示しています。

 

<参考>:労働時間法制の具体的課題について (法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利)<PDF>|厚生労働省

<参考>:労働時間法制の具体的課題について (テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示)<PDF>|厚生労働省

 

ここでは、厚生労働省が示す情報などを通して見えてくる制度改正のポイントを整理していきましょう。

 

ポイント(1)法定休日・連続勤務規制

 

今回の改正対象として議論されていたのは、法定休日に関する以下の2つの制度です。
これらの制度は、働く人の連勤(連続勤務)とも大きく関係します。

 

 

【週休1日制の原則( 第35条第1項)】
使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を
与えなければならない

 

【変形週休制(第35条第2項)】
週休1日制の原則は、4週間を通じ4日以上の休日を与える
使用者については適用しない

 

<出典>:労働時間法制の具体的課題について (法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利)<PDF>|厚生労働省

 

 

労働政策審議会・労働条件分科会では、休日およびそれに関連する連続勤務について、「定期的な休日の確保」および「法定休日の特定」を検討すべきとしています。

 

連続勤務は労働者の疲労回復や生活バランスの維持に支障をきたすこともあるため、審議会・分科会では、現行法の法定休日の特例である「4週4休」を「2週2休」にすることで連続勤務の最大日数をなるべく減らすべき、という見解を示しています。

 

このことから、2026年労働基準法大改正に関する一般記事などでは、「14日以上の連続勤務の禁止」と紹介されることもあるようです。

 

また、法定休日は、労働者のプライベートを尊重するうえでも非常に大切なものです。審議会・分科会では、法定休日について以下の①から②に原則的な考え方を変えるとともに、罰則適用についても変える必要性があることを示しています。

 

 

 ① 週1回の休日が確保されること

 ② あらかじめ特定した法定休日が確保されること

 

<出典>:労働時間法制の具体的課題について (法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利)|厚生労働省

 

 

ポイント(2)勤務間インターバル

 

勤務間インターバルとは、1日の勤務時間を終えて翌日出社するまでの間に、一定時間以上のインターバル(休息時間)を設けることで、労働者の生活および睡眠の時間を確保するものです。

 

平成30年7月6日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が公布されたことで、この勤務間インターバル制度が企業の努力義務になりました。

 

<参考>:勤務間インターバル制度をご活用ください(厚生労働省・東京労働局)

 

労働政策審議会・労働条件分科会では、資料のなかで各国における勤務間インターバル制度の概要(原則・例外・罰則など)や日本国内における導入事例を紹介したうえで、抜本的な導入促進と義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討すべきとの見解を示しています。

 

ただし、義務化の度合いについては、以下のようにさまざまな選択肢があげられており、具体的な方向性は不透明な状況です。審議会・分科会での議論を経て、これらのなかから有効性の高い考え方に絞り込まれていく可能性が高いでしょう。

 

 

  • 労働基準法による強行的な義務とする
  • 労働時間等設定改善法等において勤務間インターバル制度を設けることを義務付ける規定や、勤務間インターバルが確保できるよう事業主に配慮を求める規定を設ける
  • これらと併せて労働基準法において勤務間インターバル制度を就業規則の記載事項として位置付け行政指導等の手法により普及促進を図る
  • 現行の抽象的な努力義務規定を具体化する

 

<参考>:労働時間法制の具体的課題について (法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利)<PDF>|厚生労働省

 

 

ポイント(3)つながらない権利

 

近年のビジネス環境では、スマートフォンやタブレット端末といったデジタルデバイスの普及により、労働者と仕事の関係者が常に連絡を取り合うことも可能な時代になっています。

 

こうしたなかで問題視されているのが、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、ワークライフバランスや労働者の心身の健康が損なわれやすくなってしまうことです。

 

「つながらない権利」とは、勤務時間外や休日に、仕事上のメールや電話への対応を拒否する権利になります。
2016年にフランスで改正された労働法典にこの権利が盛り込まれたことで、世界的に注目されるようになりました。

 

労働政策審議会・労働条件分科会では、各国における「つながらない権利」の対応状況を示すとともに、労働者が「つながらない権利」を行使しようとしたことによる不利益についても言及しています。

 

労働者が企業からの不利益扱いを恐れることなく「つながらない権利」を行使するためには、勤務時間外における「許容すべき連絡」と「拒否できる連絡」の明確化や、連絡できない場合の業務フローなどを含めた社内ルールの整備も労使間で検討する必要があるでしょう。

 

<参考>:労働時間法制の具体的課題について (法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利)<PDF>|厚生労働省

 

ポイント(4)テレワークなどの柔軟な働き方

 

テレワークなどの柔軟な働き方の部分で議論されているのが、最長労働時間の規制とも関係する以下の2つのトピックです。

 

 

  • フレックスタイム制の部分適用
  • テレワーク時のみなし労働時間制

 

<出典>:労働時間法制の具体的課題について (法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利)<PDF>|厚生労働省

 

 

まず、フレックスタイム制の部分適用についてです。

 

たとえば、子育て中の従業員がテレワーク(在宅勤務)をする場合、「赤ちゃんにミルクを与える」や「洗濯物を干す」といった家事・育児と仕事の時間が混在しがちです。こうした場合にテレワークでの柔軟な働き方に対応するためにフレックスタイム制を活用することも一つの対策ですが、現行制度では部分適用ができません。

 

また、この従業員がオフィス出勤できる日は原則的に子育て・家事の影響を受けないため、フレックスタイム制ではなく通常の労働時間制度のなかで働いてもよいかもしれません。

 

労働政策審議会・労働条件分科会では、テレワークに限らずフレックスタイム制が広く導入されることは有用であるとの考え方から、フレックスタイム制を部分適用できる制度の導入が必要との見解を示しています。

 

次に、テレワーク時の労働時間制についてです。

 

在宅勤務の場合、家事・子育てと仕事の境界がわかりにくいものですが、そういったなかで「今日のタスクが終わらない」となれば、夜遅くまで作業をすることで健康面に支障が出る可能性があります。そこで審議会・分科会が提案しているのが、みなし労働時間制のもとで検討される実効的な健康確保です。

 

審議会・分科会では、労使コミュニケーションの実態把握などを行いながら、継続的な検討が求められるとしています。

 

<参考>:労働時間法制の具体的課題について (テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示)<PDF>|厚生労働省

 

ポイント(5)副業・兼業

 

現行の副業・兼業制度では、本業と副業先で働いた時間について「通算」という考え方を用いて割増賃金の支払いなどを行う仕組みとなっています。そこで労働政策審議会・労働条件分科会が問題点としてあげているのは、労働者が副業・兼業を行う場合、以下の2つを分けるべきだということです。

 

 

  • 賃金計算上の労働時間管理
  • 健康確保のための労働時間管理

 

 

具体的には、労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しながら、割増賃金の支払いに関しては「通算」を要しない制度改正に取り組む必要があるとしています。その場合、「通算すべき場合・そうではない場合」が生じることから、現行法(労働基準法第38条)の解釈だけを変えるのではなく、新たな法制度の整備が必要としています。

 

また、審議会・分科会では、割増賃金の支払いに関する通算対応が不要になる一方で、対象労働者の健康確保については、これまで以上に万全を尽くすべきと述べています。

 

<参考>:労働時間法制の具体的課題について (テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示)<PDF>|厚生労働省

 

ポイント(6)管理監督者

 

管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者のことです。現行法では、管理監督者に該当すると、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けなくなります。

 

この管理監督者について労働政策審議会・労働条件分科会が問題視しているのは、以下の2点です。

 

 

(1)管理監督者に対して、労働基準法の制定当時から現在まで特別な健康・福祉確保措置が設けられていない

(2)本来は管理監督者に当たらない労働者が、管理監督者として扱われているケースがある

 

<出典>:労働時間法制の具体的課題について (テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示)<PDF>|厚生労働省

 

 

(1)については、労働安全衛生法において、管理監督者等の労働時間の状況把握が義務付けられることになりました。それによって長時間労働者への医師による面接指導の対象とされてはいます。しかし、健康・福祉確保措置は設けられていないため「要検討」ということです。

 

(2)については、いわゆる「名ばかり管理監督者」に関する問題です。審議会・分科会では、以下の現行制度における趣旨を踏まえて、要件の明確化が必要としています。

 

<参考>:労働基準法における管理監督者の範囲の適性化のために|管理職はみんな『管理監督者』?<PDF>(厚生労働省)

<参考>:労働時間法制の具体的課題について (テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示)<PDF>|厚生労働省

 

ポイント(7)年次有給休暇取得時の賃金算定方法

 

年次有給休暇における賃金の算定方法も、制度見直しの方向性が示されました。この件については、令和7年1月21日の第193回の労働条件分科会における参考資料で示されていました。

 

この分科会で議論されたのは、年次有給休暇を取得した際の賃金算定方法において、現行の以下3つが妥当であるかどうかです。

 

 

 

① 労働基準法第12条の平均賃金

② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

③ 当該事業場の労働者の過半数代表との労使協定により、健康保険法
  (大正11年法律第70号)上の標準報酬月額の30分の1に相当する額

 

<引用>:参考資料|第193回・労働条件分科会<PDF>(厚生労働省)

 

 

上記の①②③については、以下のように呼ぶのが一般的です。

 

① 平均賃金方式
② 通常賃金方式
③ 標準報酬日額方式

 

現行の労働基準法第39条9項では、労働者が年次有給休暇を取得したときに、上記のいずれかで賃金を支払わなければならないと定めています。そこで問題視されているのが、①もしくは③の方法が選択された場合、計算式上、労働者の賃金が大きく減額される可能性がある点です。

 

労働者が日給制・時給制などの場合であっても、①もしくは③を選択せざるを得ない状況がどういったケースかを考慮しつつ、原則として②「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金(通常賃金方式)」を選択すべきではないかという議論が進んでいます。

 

この改正ポイントについて、一般的に「有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化」などと呼ばれます。

 

<参考>:参考資料|第193回・労働条件分科会<PDF>(厚生労働省)

 

ポイント(8)週44時間の特例措置

 

週44時間の特例措置とは、通常は「1日8時間、週40時間」となる法定労働時間が、「1日8時間、週44時間」とされている特例措置対象事業場に関する制度です。現行法では、以下に掲げる業種に該当する常時10人未満の労働者を使用する事業場は、特例措置の対象となります。

 

 

【商業】
 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業

【映画・演劇業】
 映画の映写、演劇、その他興業の事業

【保健衛生業】
 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業

【接客娯楽業】
 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

 

<引用>:法定労働時間|特例措置対象事業場(厚生労働省)

 

 

 

週44時間の特例措置については、2025年5月13日に開催された労働政策審議会・労働条件分科会で議論されています。

 

労働者の働き方・休み方とも関係する法定労働時間は、昭和63年に始まった週休2日制に向けた議論をきっかけに、ほとんどの業種・規模で週40時間になっていった経緯がありました。上記の4業種については、平成9年の段階では週46時間で残っていたものが、平成13年の制度改正で44時間まで下がった状況です。

 

近年のビジネス環境では、各企業の働き方改革が進んでいる理由などから、制度上は44時間である業種のなかでも、週40時間の所定労働時間で割増賃金の計算や労務管理を行う企業が多くなっています。審議会・分科会が示す2024年のアンケート調査結果によると、87.2%の企業がこの特例を使っていないようです。

 

こうした背景から、週44時間の特例は廃止の時期に来ているのではないかという議論がなされています。

 

<参考>:2025年5月13日 第197回労働政策審議会労働条件分科会 議事録(労働基準局労働条件政策課)

 

ポイント(9)労働時間の情報開示

 

労働政策審議会・労働条件分科会では、さまざまな労働関連法にもとづく施策を実施しより働きやすい環境をつくるなかで、その過程や成果を示すことにつながる労働時間などの情報開示の重要性についても議論されています。

 

現行法では、以下5つの法令で職場情報に関する法定開示が求められている形です。

 

 

  • 女性活躍推進法
  • 次世代育成支援対策推進法
  • 労働施策総合推進法
  • 育児・介護休業法
  • 若者雇用促進法

 

<出典>:労働時間法制の具体的課題について (テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示)<PDF>|厚生労働省

 

 

審議会・分科会では、企業による外部と内部への情報開示・共有について、以下のことを不断に取り組むように厚生労働省に期待すると述べています。

 

 

  • 企業による自主的な情報開示を質・量ともに充実させるために、その基盤を整えること
  • 義務的な情報開示について検討すること

 

<出典>:労働時間法制の具体的課題について (テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示)<PDF>|厚生労働省

 

 

なお、女性活躍推進法・次世代育成支援対策推進法・育児・介護休業法については、以下の記事で詳しく解説しています。興味がある方は、ぜひ確認してください。

 

【関連記事】女性活躍推進法の概要とは?改正のポイントと施行後の影響を解説

【関連記事】【2025年10月施行】改正された育児介護休業法の内容と企業が押さえるべきポイントを徹底解説!

 

PCを見ながら談笑する社員

労働基準法大改正に向けて企業が準備すべき具体的対策

 

労働政策審議会・労働条件分科会では、ここまで紹介した内容だけでも9つもの項目について今後の改正に向けた議論を進めている最中です。

 

こうした議論を経て取りまとめられた改正案が国会に提出され、成立・公布へと進むのが、当初想定されていた基本スケジュールでした。今回見送りになったことで、スケジュールも不透明になっています。

 

しかし、各制度改正および施策の具体的内容やスケジュールが見えないなかでも、企業の人事労務担当者は可能な限りの準備や対策を講じておく必要があります。
この章では、ここまで紹介した改正予定の内容から見えてくる、企業の人事担当者が実施しておくべき対策のポイントを5つ紹介しましょう。

 

対策(1)就業規則・労働条件通知書・雇用契約書の見直し準備

 

具体的な制度および事項は企業や労働者ごとに変わりますが、いずれ労働基準法が改正されると、就業規則および労働者と取り交わす雇用契約書・労働条件通知書の改定や見直しが以下の点で必要になります。

 

※以下は審議会等で議論されている論点であり、改正内容の確定を意味しません

 

 

  • 14日以上の連続勤務の禁止
  • 法定休日の特定
  • 勤務間インターバル制度の義務化
  • 有給休暇の通常賃金方式の採用
  • 副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの廃止
  • 法定労働時間週44時間の特例の廃止

 

 

2026年1月時点では審議中であるため、具体的な変更内容や変更時期は示されていません。そのため現段階では、「どこに何を記載(修正)すべきか?」という具体的な見直しは行えないケースが多いでしょう。

 

しかし、見直し・追加が必要となる章の特定や、ある程度の大枠を決めておくなどの対策はできるはずです。また、従業員の労働条件が変われば通知書も最新のものを発行する必要がありますから、そこに備えて準備を進める必要もあるでしょう。

 

厚生労働省では、就業規則の作成・見直しのポイントを以下のWebページで詳しく解説しています。制度改正前に一度確認しておいてください。

 

<参考>:中小企業のための就業規則講座|就業規則作成・見直しのポイント<PDF>(厚生労働省)

<参考>:労働条件通知書<PDF>(厚生労働省)

 

対策(2)労使間で話し合いをする準備

 

就業規則や制度改正にともない、労働契約や労働条件が変更になる場合、原則は法令手続きを遵守するのはもちろんのこと、労使間で十分な話し合いをする必要があります。

 

特に、就業規則の改定により労働者にとって不利益な変更が生じる場合、企業側では労働者の合意を得ることなく一方的にルール変更することはできないのが原則です。

 

また、たとえば議論されている論点「14日以上の連続勤務禁止」や「勤務間インターバル制度」を導入して労働環境を改善する場合、以下のような観点から労働者の声に耳を傾けておくことも重要です。

 

 

  • どのぐらいの連続勤務までなら、パフォーマンスを維持できそうか?
  • 連続勤務が続くと、どういう問題が起こりやすくなるか?
  • 新制度を導入するにあたり、「こうなると働きやすい」などの希望はあるか? など

 

 

現場の状況に合ったルール改定を行うと、従業員のモチベーションやパフォーマンスが向上し、結果として組織の生産性や業績も向上しやすくなるはずです。就業規則の改定に向けて準備を進めるなかでは、上記のような内容について「アンケートでの調査」や「労働者との話し合い」をスケジューリングしておくことも必要でしょう。

 

就業規則などの改定にともない労働条件が変わる際における話し合いのポイントは、以下の資料で示されています。ぜひご確認ください。

 

<参考>:労働条件を変更する際には労使間で十分に話し合うことが必要です<PDF>(厚生労働省)

 

対策(3)従業員への説明会や教育面の整備

 

制度変更が具体化した段階では、施行前の説明会や教育が必要です。

 

たとえば、勤務時間外の連絡が常態化している場合は、「つながらない権利」に関するルールを導入する前に、メンバーをマネジメントする管理職への教育をまず行い、組織全体の意識変革を行わなければなりません。

 

労働基準法の大改正に向けては、こうした教育・ガイドラインの作成・意識変革の取り組みが必要になってくるケースもあるでしょう。

 

対策(4)新制度に対応するための人材確保

 

今後の制度改正で論点になり得る以下のテーマは、現場で働く人員の確保にも影響する可能性があります。

 

 

  • 14日以上の連続勤務の禁止
  • つながらない権利
  • 法定労働時間週44時間特例の廃止
  • 勤務間インターバル制度の導入

 

 

たとえば、ある企業が新たにEU基準に近い11時間の休息確保を原則とする勤務間インターバル制度を導入したと仮定します。この場合、退勤した従業員は11時間のインターバルがありますから、営業時間が長い企業であれば、新たな人員を確保する必要が出てくるかもしれません。

 

また、これまで「4週4休」で現場をまわせていた企業が、制度改正にともない「2週2休」にせざるを得なくなったケースでも、場合によっては現場の仕事に支障が出る可能性があるでしょう。

 

具体的な改正内容や改正時期はこれから発表されますが、上記の改正にともないシフト調整などに支障が出る可能性がある場合は、新たな人材採用や働き方の調整などが求められるかもしれません。

 

その場合、人材の獲得~戦力化までにはそれなりの時間がかかりますから、いまのうちに採用準備やシフト調整のシミュレーションなどをしておいたほうがよいでしょう。

 

対策(5)勤怠管理システムの活用およびアップデートの確認

 

近年のビジネス環境では、労働者のキャリアや働き方が多様化したことで、人事労務担当者が管理する業務も複雑化しています。こうしたなかで、制度改正に対して迅速かつ適切な対応を行い通常の勤怠管理に支障をきたさないためには、専用のITツールを導入して業務を効率化することも重要です。

 

また、すでに勤怠管理システムや労務管理システムを導入済みである場合は、労働基準法の改正にともなうシステムの改修やプログラムのアップデート予定について、ベンダーの公式情報などを確認しておきましょう。クラウド型のシステムを使っている場合は、制度施行のタイミングでシステムの自動アップデートが実施されるはずです。

 

労働基準法改正への対応を怠った場合の
リスク

 

労働基準法の改正は、労働者の働き方やビジネス環境が多様化するなかで、現状に合った制度で労働環境を最適化するために行われるものです。そこで企業が適切な対応を行わなかった場合、組織および事業の持続可能性に悪影響をおよぼすリスクがあります。

 

ここでは、いずれ労働基準法の改正内容が確定し、施行されたにもかかわらず対応しない場合のリスクについて、2つを挙げて見ていきましょう。

 

リスク(1)法令違反とペナルティ

 

そもそも現行法の遵守は必須ですから、労働基準法に違反する行為があった場合は罰則(ペナルティ)が科せられます。ただし、ペナルティは最終段階に科せられるものです。原則は、労働基準法違反が本当にあったのかを確認するために、労働基準監督官による行政指導として以下のことが行われる流れになります。

 

 

① 事業場などへの臨検

② 使用者への帳簿・書類などの提出要求

③ 使用者・労働者への尋問

④ 違反が発覚した場合、是正勧告

⑤ 勧告に従わない場合、刑事処分

 

 

仮に、企業が時間外労働の上限を守らなかった場合、原則として上記の①~⑤を経て、6ヵ⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科せられることになります。

 

【関連記事】36協定の特別条項とは?罰則付き上限時間の詳細と締結手続きのポイントを解説

 

リスク(2)社内外の信頼低下

 

法令違反が発覚して是正勧告になると、社内外からの信頼を失うことになってしまいます。また、いくつもの違反があり、その問題がニュースなどで報じられた場合、金融機関・顧客・取引先・地域住民といった多くのステークホルダーからの信用を失うことにもなります。

 

行政指導が入るほどの違反がある場合、それはすでに従業員からの信用を失っている状態かもしれません。また、労働基準法の違反によって従業員に適切な休日や休息時間が与えられないことが常態化すれば、労働者の心身の疲労は回復しづらくなり、体調不良による休職や離職者が増えやすくなる悪循環も起こるでしょう。

 

法令違反からさまざまな意味での悪循環が起こると、新たな人材獲得にも支障をきたしてしまうかもしれません。

 

企業が行う事業活動は、自社の従業員を含むステークホルダーからの信用があってこそ持続可能性が高まるものです。また近年は、自社の「人」や「組織」に着目した人的資本経営の重要性が特に高まっています。

 

こうしたなかで継続的に事業を行い、組織を成長させていくためには、制度改正の内容をしっかり理解したうえで、適切な対応を実施していく必要があるでしょう。また、新たな施策を実施するなかでいわゆる「しわ寄せ」が生じた場合、その施策を改善していく姿勢も求められるのです。

 

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本記事では、2026年1月時点で見えている労働基準法における大改正のポイントと、具体的な制度内容の公開までに人事担当者が行っておくべき一般的な準備内容を紹介してきました。

 

2026年前後の施行が想定されていた労働基準法改正は見送りとなりましたが、いずれは改正が行われる見通しです。対応していくにあたっては多くの注意点があるため、人事部のなかでも負担に感じた方は多いのではないでしょうか。

 

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この記事の監修者:監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
社労士試験合格後、社労士事務所勤務を経て、ソフトバンクグループのシェアードサービス企業で給与計算業務に携わるとともに人事システムの保守・運用を担う。
その後、人事業務のアウトソーシングサービスを提供する企業の立上げに参画。主に業務構築、システム運用に従事。
その他、人事領域以外のアウトソーシング企業等での勤務も経験し2019年に独立。
現在、人事・給与計算システムの導入支援を中心に社労士として顧問企業の労務面のサポートも行う。

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