人事労務アウトソーシングサービスとは?サービスの特徴やメリット、選び方を徹底解説

2025.08.07
PCを見ている社員たち

本記事では、人事労務アウトソーシングの基本概念と依頼可能な業務、メリット・デメリットなどを解説します。人事労務のアウトソーシングの選び方だけでなく、費用相場やサービスの比較も実施。人事労務のアウトソーシング化を成功させたいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

人事労務による担当者の負担を減らすために、業務のアウトソーシング化は効果的です。そのため人事労務のアウトソーシングは、国が推進するDX化やビジネス環境の著しい変化の影響から、多くの企業に注目されています。

 

そこで本記事では、人事労務アウトソーシングの基本概念と依頼可能な業務、メリット・デメリットを解説します。記事の後半では、人事労務のアウトソーシングの選び方や費用相場、代表的な3種類のサービスを比較していきます。

 

人事労務のアウトソーシング化を成功させたいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

人事労務アウトソーシングの基本概念

人事労務アウトソーシングの導入を成功させるためには、そもそも「人事労務アウトソーシングがどういったものなのか?」を理解することが重要です。

 

ここでは、人事労務アウトソーシングの概要と必要性、導入が求められる背景を確認していきましょう。

 

人事労務アウトソーシングとは何か

 

そもそも人事労務とは、いわゆる人事部門が担当する「人事管理」と「労務管理」の総称です。人事管理と労務管理には、以下のようにそれぞれに役割や目的があり、これらを総称して人事労務と呼ぶイメージです。

 

 

【人事管理】

企業が目標達成や成長を遂げるために、従業員が最大限のパフォーマンスを出せる体制や仕組みをつくる活動の総称。

 

【労務管理】

労働基準法の定めに従い、従業員が安全かつ健康的に働ける環境を維持するための取り組み。

 

 

人事労務のアウトソーシングでは、上記のような人事管理と労務管理の一部もしくは全部を切り出し、外部の業者に委託します。この仕組みやサービスについての名称は数多くあり、一般には以下のように呼ぶこともあるでしょう。

 

 

  • 人事アウトソーシング
  • 労務アウトソーシング
  • 人事労務BPO
  • 人事労務の外注化
  • 人事労務の外部委託 など

 

 

人事労務アウトソーシングの必要性が高まる背景

 

人事労務の担当者には、期日までに終わらせなければならない月次・年次の業務に加えて、従業員の急な入退社や異動などによるスポット対応の仕事もあります。それはつまり、人事担当者は、従来から「仕事が非常に複雑で負担が増えやすい傾向があった」ということです。

 

それに加えて、近年のビジネス環境では以下のようにさまざまな変化が生じており、ただでさえ忙しい人事部門の負担がさらに増大しやすくなっています。

 

 

  • 政府が主導する人的資本経営の推進
  • 新卒採用の長期化・早期化・複雑化
  • 若手人材における早期離職や内定辞退の増加
  • 従業員の属性および働き方の多様化 など

 

 

また、いわゆる人材の流動化が進んだ影響で、中小企業の一部には「人が離職しやすく、獲得しづらい状況」も生まれているでしょう。

 

企業の経営目標や成長は、人材が活躍してこそ達成できるものです。しかし近年のように、人材の離職が生じやすく自社に合う優秀な従業員の獲得が難しくなると、人事部門では「離職防止」や「採用活動」に力を入れる必要がでてきます。それはつまり、人事部門が優先すべき業務に変化が生じているということです。

 

このように人事部門の負担が増え、仕事の優先順位が大きく変わるなかで注目されているのが、この記事のテーマである「人事労務アウトソーシング」という業態になります。

人事労務アウトソーシングで依頼できる業務

人事労務アウトソーシングで依頼できる業務は、事業者が用意するプランや契約内容の影響を受けます。ここでは、一般的な人事労務アウトソーシングに委託可能な業務を解説しましょう。

 

業務(1)給与計算

 

給与計算をアウトソーシングする場合、月次業務の「給与の計算と振込」に加えて、年次業務である「賞与の計算と振込」「年末調整」「住民税の年度更新」を委託できることが多いです。

 

給与や賞与の振込を経理などの他部門が担当する場合、「振込の全手続き」の代わりに、経理に渡すための「振込データ作成」を委託することもあるでしょう。具体的な流れについては下記の記事をご確認ください。

 

【関連記事】給与計算アウトソーシングの流れと成功のポイントをご紹介

 

業務(2)社会保険手続き

 

社会保険および労働保険の書類作成や提出の代行は、社会保険労務士の独占業務です。そのため、社会保険労務士が在籍する事業者であれば、社会保険関連の以下のようなアウトソーシングに対応できる可能性があります。

 

 

  • 事業所に関する手続き(名称・所在地変更 など)
  • 従業員やその家族に関する手続き(就職・退職、各種変更 など)
  • 保険料に関する手続き(標準報酬月額・算定基礎届・月額変更届 など)

<参考>:事業主の方 社会保険事務担当の方(日本年金機構)

 

 

社会保険手続きの場合、社会保険労務士が在籍(提携)しているかどうかで、対応範囲が変わります。社会保険関連のアウトソーシングを希望する場合には、「どこまで対応できるか?」を必ず確認しましょう。

 

業務(3)労務管理

 

労務管理とは、労働基準法や労働安全衛生法などの法律の定めに従い、従業員が健康かつ安全に働くための環境整備や管理をすることです。先述の給与計算や社会保険手続きも、労務管理の一種になります。

 

労務管理のなかでアウトソーシングしやすいものには、以下の業務があるでしょう。

 

 

  • 就業規則の作成・改定
  • 雇用契約書の作成・管理
  • 労働協定の作成
  • 勤怠管理
  • 安全衛生管理
  • 福利厚生 など

 

 

業務(4)コンプライアンス管理

 

『コンプライアンス』とは、労働基準法などの法令遵守はもちろんのこと、企業倫理や公序良俗などの社会的規範に従いながら、公平・公正に業務を行うことです。

 

企業の人事労務を請け負うアウトソーシング業者は、関連法律やコンプライアンス上の注意点を熟知したプロ集団になります。

 

こうした業者に人事労務を委託すると、従業員の健康が脅かされる問題や、計算およびデータ管理上のミス・不正などについても早期発見がしやすくなるでしょう。

 

業務(5)人材育成(研修代行)

 

人材を育てるうえで欠かせない研修も、外部の講師や専門業者にアウトソーシング可能です。いわゆる“研修代行”という形でアウトソーシングを行うと、研修のプログラム設計や事前準備~研修後のフォローアップなども、人材育成のプロに任せられるでしょう。

人事労務アウトソーシングのメリット

人事労務アウトソーシングを活用して多くの業務を外部委託すると、多くのメリットが得られます。ここでは4つを挙げて解説しましょう。

 

メリット(1)業務効率化

 

人事労務アウトソーシングを活用する最大の利点は、人事部門全体の業務効率化が進むことです。

 

たとえば、毎年10月頃~翌1月末まで行う年末調整を切り出してアウトソーシングすると、従業員が提出する書類のチェックや各種計算、法定調書の出力と提出などに使っていた人的リソースが大きく浮くことになります。

 

浮いたリソースは、高精度の採用戦略立案や、丁寧な内定者フォロー、人事労務の課題解決といった組織運営の「次」につながる仕事に使うこともできるでしょう。

 

メリット(2)「人」に関するコスト削減

 

たとえば、先ほど紹介した給与計算・年末調整・社会保険手続きといった人事労務の仕事をすべてアウトソーシングすると、その仕事を担当する「人」を雇ったり育てたりする必要がなくなります。

 

それはつまり、人事労務の作業にかかる人件費はもちろんのこと、採用コストや教育コストの削減にもアウトソーシングが役立つということです。

 

アウトソーシングサービスを利用すると、当然のことながら導入および運用コストはかかります。

 

しかし、「雇った人材がすぐに辞めてしまう」とか「新人が担当しているのでベテランよりも工数がかかる」といった人の問題を多く抱えていてコストもかなり増大しているのであれば、アウトソーシング化するメリットは大きくなりやすいでしょう。

 

メリット(3)専門知識の活用

 

人事労務の仕事でコンプライアンスを守るためには、国が定めたさまざまなルール(法律)を理解し、それを遵守し続ける必要があります。

 

また、これらの法律は社会状況に応じて改正されます。そのため、人事労務の業務でコンプライアンスを守り続けるためには、その土台となる新制度の勉強も必要でしょう。

 

ただ、人事労務の仕事をアウトソーシングすると、事業者が持つ豊富な専門知識やノウハウなども活用できることになります。また、さまざまな事務手続きを代行してもらえば、専門知識が乏しい社内担当者が自分で作業するよりもミスなく適切な流れで各種手続きを進められるでしょう。

 

メリット(4)スピーディーな対応の実現

 

人事労務の全部もしくは一部を切り出してアウトソーシングすると、それ以外の仕事のスピードと質の両方が向上しやすくなります。たとえば、年末調整と給与計算を外部委託した場合、「採用活動の応募者対応」や「経営層から依頼された人材戦略案の作成」なども早く着手できるでしょう。

 

また、人事労務アウトソーシングのなかには、「従業員向けの問い合わせ窓口」と「人事担当者向けの問い合わせ窓口」の仕組みを備えているサービスもあります。

 

たとえば、従業員向け問い合わせ窓口を開設する業者に年末調整をアウトソーシングすれば、書類提出までに生じる従業員からの「この書類はどのように書けばいい?」とか「添付書類はどうやって請求すればいい?」といった疑問にも、迅速かつ正確に答えられるようになるでしょう。

人事労務アウトソーシングのデメリット

人事労務アウトソーシングにも、場合によってはデメリットやリスクと感じられるケースがあります。ここでは、代表的な4つのデメリットを見ていきましょう。

 

デメリット(1)導入・運用コストがかかる

 

たくさんの業務をアウトソーシングすると、導入および運用面で多くの費用がかかります。たとえば給与計算と年末調整を切り出すと、これらを担当する人の採用・作業・教育コストは抑えられますが、その代わりに導入と運用のコストはその分、増大する可能性があるでしょう。

 

アウトソーシング選びの具体的なポイントは後述しますが、委託先の選定や比較検討をする際には、「かかる費用の総額」はもちろんのこと「費用対効果」を重視することが重要になってきます。

 

デメリット(2)社内ノウハウの蓄積不足

 

人事労務の一部を切り出してアウトソーシングすると、対象業務はプロに任せることになるため、社内において専門知識やノウハウの蓄積が止まることになります。

 

それはつまり、アウトソーシングをやめて社内で事務手続きを再開しようと思っても、「給与計算できる人材がいない」とか「最新の法律知識を学ぶことから始めなければならない」といった問題に直面する可能性が高いということです。

 

半永久的に外部委託を続けるのであれば、社内ノウハウはあまり必要ないかもしれませんが、「途中でアウトソーシングをやめる」とか「委託先を変える」といった可能性が少しでもある場合、社内ノウハウがゼロになってしまうことは避けたほうがよいかもしれません。

 

デメリット(3)情報漏えいのリスク

 

人事労務アウトソーシングをする場合、委託先の事業者が、従業員本人および家族の個人情報や給料・社会保険料・税金といった社内の機密情報にアクセスすることになります。

 

もしそこで、情報の取り扱いに関する適切な仕組み化や教育が実施されていない場合、自社の大事な情報が外部に漏えいしてしまうリスクもあるでしょう。

 

デメリット(4)コミュニケーションの課題

 

人事労務アウトソーシングは、「人事部門と従業員」「人事部門と委託先業者」のコミュニケーションがうまくいってこそ成功するものです。

 

しかし、以下のようなコミュニケーション上の課題が起こる場合もあります。

 

 

  • 解決したい課題やニーズが委託先に伝わっていない
  • 営業から説明を聞いたが、サービス内容や仕組みを理解しきれてない
  • 難しい専門用語が多く、それを覚えるだけで精一杯
  • 年末調整がアウトソーシング化されたことが、従業員に伝わっていない など

 

 

これらを解消しないまま業務委託をスタートさせてしまうと、社内の不満噴出や費用対効果の低下が起こりやすくなるでしょう。

モニターを使って会議

人事労務アウトソーシングの選び方

人事労務アウトソーシングの成功とは、自社の課題が解決できるサービスを利用して「費用対効果が高い」と感じられる状態になることです。そのためには、適切な選び方を実践する必要があります。ここでは、選び方のポイントを3つほど挙げて見ていきましょう。

 

ポイント(1)自社の業務内容と課題を整理する

 

人事労務アウトソーシングの検討前に最初にすべきなのは、自社が業務委託する「目的」および「ゴール」を決めることです。

 

そのためには、「自社の人事労務領域にどのような業務があり、そのうちのどこに課題があるのか?」「それはアウトソーシング利用で解決するものなのか?」といったことを考える必要があります。

 

たとえば、年末調整の時期になると担当者の残業が著しく増えたり、採用活動の応募者および内定者フォローが疎かになったりする場合、それらを解決するために年末調整をアウトソーシングすることが目的およびゴールになるでしょう。

 

また、それなりに多くの予算を確保できる場合は、人事労務の業務を総合的にアウトソーシングして、人事担当者が戦略立案や組織運営などの「コア業務」に専念できるようにするのも一つの考え方です。

 

いずれにせよ、委託先業者に問い合わせをする際には、アウトソーシングによって「これを解決したい」「こういう状態を目指したい」といったビジョンを伝える必要があります。また、現在使っているシステムや導入予算なども委託先に共有すべき項目でしょう。

 

そのための言語化は、多くの時間をかけて行うことが理想といえます。

 

ポイント(2)委託先の情報収集

 

人事労務アウトソーシングの目的およびゴールが決まったら、委託先の情報を集めていきます。ここで注意したいのは、アウトソーシング事業者にはそれぞれに得意・不得意分野があることです。詳しくは後述しますが、一般的な人事労務アウトソーシングには、以下のように多くの種類があります。

 

 

  • 総合型の人事労務アウトソーシング
  • 社会保険手続きや税務手続きに対応したアウトソーシング
  • 特定業務のみを委託するアウトソーシング
  • 中小企業向け/大企業向けのアウトソーシング

 

 

自社のニーズに合い、費用対効果が高いサービスを選ぶためには、すべての事業者を「人事労務アウトソーシング」という概念で一括りにするのではなく、各社の違いを理解することも重要になってくるでしょう。

 

ポイント(3)問い合わせと比較検討

 

自社の目的とマッチしそうな業者が見つかったら、各社の評判および実績を確認します。自社と同規模・同業種の実績があれば、コミュニケーションも図りやすいでしょう。

 

評判や実績から気になる業者のピックアップができたら、問い合わせフォームを用いて相談をしていきます。以下の項目を複数の業者に送信し、相見積もりをとるイメージです。

 

 

  • 予算
  • 人事労務の課題と目的
  • アウトソーシングの希望範囲(どこからどこまでか)
  • 必要な機能(従業員の問い合わせ対応)
  • 現在のシステム環境
  • 独自規定
  • 懸念事項(人事と労務のシステムは同じか、セキュリティ対策はどうなっているか など)
  • 従業員数

 

 

セキュリティ対策は必ず確認すべき項目である一方で、各社の対応や基準に違いがあるため、一般の人事担当者ではそのチェックが難しい傾向があります。基本的に見ておくポイントは、機密性・完全性・可用性の対策があるかどうかです。

 

そこで、各社が示す情報セキュリティ施策がよくわからない場合には、以下のような事項がどうなっているのかを直接確認してもよいでしょう。

 

 

  • 機密情報には誰がアクセスできるのか?
  • アクセスする時間や場所は決まっているのか?
  • 情報の取り扱いに関する教育は実施されているのか?
  • 万が一漏えいした場合は、どのような対処や罰則があるのか?

 

 

 

人事労務アウトソーシングの費用相場

人事労務をアウトソーシングする場合、「どのくらいのコストがかかるのか?」というのは多くの人が気になるポイントだと思います。

 

一般的なアウトソーシングは、「月額制プラン」もしくは「業務単位制プラン」のいずれかで契約をすることが多いです。各プランの特徴と一般的な費用相場を見ていきましょう。

 

月額制プランの特徴

 

月額制プランとは、「業務×オペレーターの人数」で料金を決めていきます。具体的には、その業務を代行するための「オペレーター数」およびその人たちの「時給」といった複数項目の影響を受ける仕組みになります。

 

会社の規模が大きかったり、委託する業務内容が複雑だったりする場合は、事務手続きをするために多くのオペレーターが必要になります。こういった場合、コストも自ずと増大するでしょう。

 

例として、従業員数50人前後の企業が給与計算と勤怠管理をアウトソーシングする場合、月額制プランでは月12万円~14万円ほどが相場になるようです。

 

業務単位制プランの利点

 

業務単位制は、「1件◯◯円」などの処理件数で請け負うプランです。一部業務を切り出してスポット委託する場合は、業務単位制プランのほうが割安になりやすいといわれています。

 

ただし、業務の難易度が高い場合、1件あたりの請負金額も上がる可能性が高いでしょう。また、これは月額制と業務単価制の両方に言えることですが、初期費用が別途かかるケースも多くあります。

 

一般的な価格帯としては、給与計算だけの委託は1件500円程度、社会保険および雇用保険の手続き代行は1件1,000円ほどで請け負う事業者が多いようです。

主な人事労務アウトソーシングサービスの比較

費用対効果が高いアウトソーシングを行うためには、一般的なサービスの種類と各特徴を理解したうえで、自社が解決したい課題や予算に合うものを見つけることが重要です。

 

ここでは、比較検討時の大きな分岐点となる3種類について、一般的なサービスの特徴と利点・注意点を紹介しましょう。

 

(1)総合型×人事労務アウトソーシング

 

総合型とは、人事部門が担う日常業務の大半をカバーしている種類です。『フルアウトソーシングサービス』と呼ばれたりもします。具体的な範囲および機能はサービスごとに異なりますが、一般的な総合型アウトソーシングでは、以下の業務に対応していることが多いでしょう。

 

 

  • 人事情報管理
  • 給与・賞与計算
  • 年末調整
  • 勤怠管理
  • 社会保険関連
  • 税務関連
  • マイナンバー収集 など

 

 

近年では、人事労務領域で行われた各種手続きのデータを、クラウドシステム上で一元管理するサービスも多くなりました。それはつまり、業務を外部委託することで、コンプライアンスを遵守した人事労務のデータが1つのシステム内に集約されていくことを意味します。

 

事業者が計算・入力したデータは、人事および採用戦略の立案などでも活用可能です。総合型アウトソーシングの活用は、人的資本経営を効率よく進めるうえでも非常に役立つことでしょう。

 

(2)大企業向け×総合型×人事労務アウトソーシング

 

大企業向けの人事労務アウトソーシングとは、資金やインフラなどの経営資源が潤沢であり、数百人~数千人もの従業員が在籍する大手企業を想定しています。

 

大企業の場合、自社で大規模な基幹システムを構築してデジタル化や業務効率化を進めているケースも多くあります。そういったなか、システムや機器の保守期限の終わりが近づくタイミングで「今後も自社でデータ管理するのか?」「外部委託を活用して人事業務を変革したほうがよいのでは?」といったことの検討に入ることが多いでしょう。

 

また、大手企業の場合、ジョブローテーション型の組織では人事担当者が定期的に異動する可能性もありますし、近年では外国人労働者の割合が高い組織も多くなっています。外国人が多い組織でアウトソーシングをするとなれば、日本語以外での従業員支援も必要になるかもしれません。

 

大手企業向けのアウトソーシングでは、こうした「大手ならではの複雑な事情」に寄り添い、業務委託の企画や設計から支援をしていくサービスが一般的になります。

 

(3)専門特化型×人事労務アウトソーシング

 

専門特化型とは、給与計算・年末調整・社会保険手続き・IPO準備・労務デューデリジェンスなど、一部の業務のみを切り出して外部委託するものです。専門特化型のメリットは、最小限のコストで必要な分だけプロにアウトソーシングできる点です。

 

たとえば、今年の新卒採用が難航していて秋採用も実施する可能性がある場合、10月頃から始まる年末調整だけをアウトソーシングすることで人事部門は採用活動に注力できる、といったイメージです。

 

特化型のなかには、週1日から必要な業務量だけスポット委託できるサービスもあります。社内ノウハウを可能な限り蓄積したかったり、総合型を利用するほどの予算がなかったりする場合、期間や対応範囲を限定したサービスでも十分かもしれません。

人事労務アウトソーシングの未来

人事労務の業務効率化やアウトソーシングを検討する場合、その業務領域の“今後”について考えることも重要です。ここでは、人事労務領域におけるテクノロジーの進化と今後のトレンド・展望を見ていきましょう。

 

テクノロジーの進化と影響

 

近年のビジネスシーンで注目されているクラウド・生成AIは、人事労務の領域にも大きな影響をもたらすテクノロジーです。

 

まず、クラウド型システムを使ったサービスは、人事担当者・従業員・委託業者のすべてに以下のメリットをもたらします。

 

 

  • インターネットにつながる環境ならどこでも情報管理できる
  • さまざまな情報を一元管理できる
  • 導入コストを抑えられる
  • 自社でセキュリティ対策をする必要がない
  • データ連携しやすい

 

 

また最近では、生成AIを活用した人事系のサービスも増加傾向にあります。たとえば、採用管理やタレントマネジメント機能で生成AIを使うと、人の目だけで見ていたときと比べて、応募者とのマッチングや適材適所の配置の精度を高めやすくなるでしょう。

 

このほかに、従業員からの問い合わせサポート機能とAIチャットボットを組み合わせたサービスも登場しています。こうした仕組みを備えたアウトソーシングを活用すれば、たとえば「年末調整の入力時に多発していた問い合わせ対応」なども効率化しやすくなるでしょう。

 

今後のトレンドと展望

 

人事部門の負担が増えるなかで、生成AIやクラウド技術を使った人事労務システムの活用やアウトソーシングは、今後さらに普及していくことが予想されます。

 

また、日本政府では、デジタル技術を活用した事業および価値観の変革を促すDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にも力を入れており、近年では年末調整手続きの電子化に向けた取り組みも国税庁主導で行われている状況です。

 

<参考>:産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について(経済産業省)

<参考>:年末調整手続の電子化に向けた取組について(国税庁)

 

仮に、現状では人事部門に大きな課題がなく適切な人事労務管理を行えている場合、人事労務アウトソーシングや人事労務システムの必要性を感じないかも知れません。

 

しかし、年末調整手続きの電子化対象が今後さらに拡大したりする未来を考えると、時間的余裕があるうちに、人事労務の業務効率化やデジタル化の検討を始めたほうがよいでしょう。

人事労務アウトソーシングに関するよくある質問

最後に、人事労務アウトソーシングに関するよくある質問と回答を紹介しましょう。

 

Q.アウトソーシングの契約種別はどの事業者でも同じになりますか?

 

法律的な話になりますが、アウトソーシングには「請負」「委任」「準委任」という3つの契約形態があります。これらの違いとしては、以下のとおりです。

 

契約の種類 請負契約 委任契約 準委任契約
概要 仕事の完成を目的としており、成果物の納品に対価が支払われるもの。 法律行為または法律業務の事務処理の遂行を目的に対価が支払われるもの。 法律行為となる事務処理以外の業務遂行を目的に対価が支払われるもの
契約の中身 アウトソーシングシステムの設計・データ移行 など 社会保険の申請手続き・税務業務 など 給与計算・社員研修・社員データの調査 など

 

なお、社会保険手続きは「社会保険労務士」、税務書類の作成や納税は「税理士」の独占業務です。これらの業務をアウトソーシングする場合、社会保険労務士もしくは税理士が在籍する事業者を選ぶ必要があります。

 

各社に相談するときには、独占業務の意味を理解したうえで「どこまで対応してもらえるか?」を確認したほうがよいでしょう。

 

<参考>:社会保険労務士にしかできない業務(全国社会保険労務士連合会)

 

Q.契約~導入までの流れは?

 

委託先の決定(契約)からアウトソーシング開始までの流れは、「どこからどこまでの業務をどのような仕組みで管理するのか?」で大きく変わります。

 

たとえば、年末調整を「紙」によるアナログ運用をしていた企業が、年末調整だけを切り出してそのままアウトソーシングする場合、システム導入やデータ移行は不要ですから、比較的スムーズに委託できる可能性が高いでしょう。

 

これに対して、すでに基幹システムを構築している大企業がアウトソーシングを行う場合、システムの新規導入やデータ移行などの検討が必要となるため、そこまでのコミュニケーションおよび企画・設計だけで多くの時間が必要になってきます。

 

また、年末調整をデジタル化およびアウトソーシング化する場合、従業員に新しいシステムを使ってもらうことになります。その場合、資料配布や操作指導などのサポートも必要になるはずです。

 

事業者との契約~アウトソーシング開始までの期間や流れは、このように現状の運用および業務範囲の影響を大きく受けることになります。それなりに大きな規模の委託を検討している場合は、事業者とのコミュニケーションおよび設計、データ移行などの必要性を理解したうえで、早めに要件定義や相談を始める必要があるでしょう。

人事労務のアウトソーシングならラクラスへ

本記事では、人事労務アウトソーシングの基本概念と依頼可能な業務、メリット・デメリットなどを解説してきました。人事労務のアウトソーシングの選び方だけでなく、費用相場やサービスの比較もしてきましたが、人事部のなかでもアウトソーシング事業者の選択は負担に感じている方も多いのではないでしょうか。

 

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