給与計算アウトソーシングの流れと成功のポイントを詳しく解説

本記事では、給与計算アウトソーシングの概要や導入までの流れ、メリット・デメリットをご紹介します。給与計算アウトソーシングの効果を高めるために意識したい成功ポイントや今後の展望についても解説していきますので、ぜひご覧ください。
給与計算アウトソーシングの導入を検討する場合、「そもそもどういった流れで導入するものなんだろう?」という疑問が生じることもあると思います。
本当の意味で自社にマッチする給与計算アウトソーシングを選ぶためには、導入までの一般的な流れを把握したうえで、適切なステップを踏みながら準備や契約を進めていくことが重要です。
そこで本記事では、給与計算アウトソーシングの概要や導入までの流れ、メリット・デメリットをご紹介します。後半では、給与計算アウトソーシングの効果を高めるために意識したい成功ポイントや、給与計算アウトソーシングにおける今後の展望についても解説していきます。
これから給与計算アウトソーシングを導入するうえで、「サービス利用の流れ」や「サービスの選び方」を調べている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
給与計算アウトソーシングとは
給与計算アウトソーシングの“アウトソーシング”とは、人事給与部門が担う業務を外部委託することや、そのためのサービスを指す言葉です。「給与計算BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」や「給与計算代行」と呼ばれたりもします。
給与計算は、毎月発生するうえに専門知識も必要であるため、多くの人事部門にとって負担になる業務です。給与計算アウトソーシングを利用する場合、下記のような業務の一部を切り出して、専門業者や税理士・社会保険労務士事務所に委託するイメージになります。
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給与計算アウトソーシングで外部委託できる業務について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
給与計算アウトソーシング導入までの流れ
給与計算アウトソーシングは、自社に合うものを選んでこそ高い費用対効果が期待できるものです。費用対効果の高いサービスを選ぶためには、適切な流れで導入準備を進めていく必要があります。
ここでは、給与計算アウトソーシングの導入および毎月の運用開始までに必要となる5つのステップについて紹介しましょう。
ステップ1:現状分析を通じて自社の課題を洗い出す
給与計算アウトソーシングには、以下のように非常に幅広い種類があります。
・給与計算~労務管理全般まで対応できるもの
・一部業務に特化したもの
・大企業向けのもの/中小企業向けのもの
・企業の課題や連携サービスにあわせてカスタマイズできるもの
こうしたなかから費用対効果が高いものを選ぶためには、現状分析を通じて自社の課題を洗い出し、「給与計算アウトソーシングに何を求めるのか?」という利用目的や目標を明確にすることが大切です。
現状分析のポイントや重要性については、記事の後半で詳しく解説します。
ステップ2:給与計算アウトソーシングサービスを選定する
現在の課題や利用目的が明確になったら、自社に合う給与計算アウトソーシングを選んでいきます。このステップで重要となるのは、運営会社や各サービスの特徴を理解したうえで、総合的な視点から比較検討をしていくことです。
なお、サービス選びの注意点や成功ポイントについても、記事の後半で詳しく解説していきます。
ステップ3:給与計算アウトソーシングサービスと契約をする
自社に合うサービスが見つかったら、正式な契約を行います。見積書やサービス資料を見てわからない点がある場合は、契約前に確認しておくようにしましょう。
ステップ4:給与計算に必要なデータ・書類を提出する
サービス事業者に給与計算の代行をしてもらうためには、そこで使用するデータや書類をすべて渡す必要があります。具体的な内容は事業者や対応範囲によって異なりますが、一般的には以下のものを用意する必要があるでしょう。
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給与計算アウトソーシングの利用を早く始めるためにも、日頃から上記のデータや書類を整理しておくことが重要になります。
ステップ5:初期設定を実施する
アウトソーシング事業者では、ステップ4で受け取った情報をもとに、給与計算をするためのデータマッチングや専用システムの初期設定などを行います。この設定が終わってはじめて、給与計算アウトソーシングの運用が始まることになります。
なお、代行業者への相談~初期設定の完了~運用開始までには、数ヵ月かかることもあります。こうしたなかで少しでも早く外部委託するためには、自社の現状分析やサービスの比較検討などを迅速に進めておく必要があるでしょう。
給与計算アウトソーシングの利用で期待できる効果とメリット
給与計算アウトソーシングには、さまざまなメリットがあります。ここでは、代表的な5つのメリットを紹介しましょう。
メリット(1)人事業務を効率化できる
人事部門が担うべき業務には、以下のように多くの種類があります。
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このなかで給与計算は、高い専門性が必要であるものの、毎月行う作業がある程度決まっている定型的な業務です。こうした定型業務を外部に切り出してアウトソーシングすると、業務効率化が実現できて人事担当者の負担が軽減しやすくなります。
人事業務を効率化させる方法については以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
人事業務を効率化するには?効果的なツールや効率化できる業務の種類、事例をご紹介
メリット(2)人件費をおさえられる
給与計算アウトソーシングを利用すると、給与計算の担当者にかかっていた以下のコストがおさえられます。
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たとえば、経験の浅い新人が給与計算を担当する場合、どうしてもミスが多かったり要領が悪かったりして、作業完了までに多くの時間がかかりがちです。作業が定時内に終わらなければ、残業時間が増えてしまうかもしれません。
また、近年のように“売り手市場”の時代に給与計算の即戦力人材を雇い入れるとなれば、それなりの採用コストや高賃金の提示なども必要になってくるでしょう。人材を獲得できなければ、そのコストはさらに増大するかもしれません。
給与計算アウトソーシングを導入すれば、代行業者に一定の料金を支払うことで、継続的にかかる採用・教育コストや残業代を抑えられる可能性があります。
メリット(3)専門知識が不要となる
給与計算を担当するためには、身につけた以下の専門知識を制度改正のたびにアップデートしなければなりません。
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しかし、給与計算を外部委託すれば、上記の知識に関する情報収集や勉強を社内で行う必要がなくなります。
メリット(4)ミスが生じにくくなる
アウトソーシング業者は、給与計算を専門とするプロ集団です。委託業者では、一般の担当者には難しい「制度改正の内容」や「ヒューマンエラーが生じやすいポイント」も熟知しています。こうした業者に外部委託すれば、正確な給与・税額を支払える可能性が高まります。
なお、給与計算や年末調整などは、ミスが許されない手続きです。給与計算の外部委託は、計算ミスで会社の信用を失墜させないための対策にもなるかもしれません。
メリット(5)コア業務に専念しやすくなる
人事部門の仕事には、コア業務とノンコア業務があります。
コア業務とは、会社の利益創出に直結する業務です。たとえば、「採用活動で優秀なDX人材を獲得する」や、「従業員のエンゲージメントやモチベーション向上につながる施策を立案する」などは、会社の生産性や利益をあげるうえで非常に重要なコア業務となるでしょう。
これに対してノンコア業務である給与計算や年末調整などは、それ自体が会社に利益をもたらすものではありません。そのため、ノンコア業務を切り出してアウトソーシングすれば、人事担当者はリソースをコア業務に集中させられるようになります。
たとえば「優秀なDX人材を獲得する」という大事なミッションがある場合、ターゲット層の明確化や戦略立案、面接での魅力づけおよび見極めなどに多くの時間を割けるようになるわけです。そうすることで、コア業務での高い成果から会社全体の利益創出などが実現しやすくなっていくでしょう。
給与計算アウトソーシングのデメリット
給与計算アウトソーシングには多くの効果が期待できる一方で、サービスや業者選びを間違ってしまったときに失敗やデメリットだと感じられることもあります。
ここでは、給与計算アウトソーシングの導入で生じやすい3つのデメリットを紹介しましょう。
デメリット(1)トータルコストが増大することがある
メリットのところで紹介したとおり、給与計算アウトソーシングを利用すると「人」の採用・教育・賃金に関するコストをかなりおさえられることが多くなります。
しかし、自社の現状分析や委託先選びをおろそかにすると、以下のような状況に陥ることもあります。
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このような状況により、トータルコストが増大してしまうこともありますので注意が必要です。
デメリット(2)社内に専門知識やノウハウが蓄積されない
給与計算の関連業務をすべて外部委託した場合、人事担当者の専門知識はアップデートされにくくなります。そうなると、従業員から給与計算や年末調整に関する問い合わせを受けたとしても、社内での回答が難しくなることもあるでしょう。
また、社内に給与計算ができる人材がいなければ、新たな担当者を採用しない限り、アウトソーシングの利用を止めることも難しくなってしまいます。
デメリット(3)大事な情報が漏洩する可能性がある
委託先の情報セキュリティに問題があった場合、自社のデータが情報漏洩の被害に遭う可能性もあります。
漏洩したもののなかに個人情報が含まれていれば、従業員本人や家族に大きな不安を与えることになりかねません。また、会社の信用低下にもつながってしまうでしょう。

給与計算アウトソーシング選びのチェックポイント
給与計算アウトソーシングの利用で先述のような問題を発生させないためには、業者選びの際に適切なポイントを見ていくことも大切です。
ここでは、給与計算アウトソーシングの上手な選び方につながる5つのチェックポイントを紹介しましょう。
ポイント(1)対応実績と専門性
給与計算アウトソーシングは、高い専門性に加えて、自社に近い業種・業態・企業規模の会社への代行実績が多いサービスを選ぶことが重要です。
自社と似た企業への対応実績が多いと、お互いのイメージも共有しやすくなるはずです。また、給与計算や勤怠管理に関する「その業界ならではの特殊事情」なども説明しやすいでしょう。
対応実績や専門性は、給与計算アウトソーシングのサイトやパンフレットなどで確認できます。記載がない場合は、「○○業界の対応実績はありますか?」と尋ねてみるとよいでしょう。
ポイント(2)対応業務の範囲
限られた予算の範囲内で費用対効果の高いサービスを利用するためには、自社が求める対応範囲にマッチするものを選ぶことも大切です。そのためには、外部に委託したい業務を洗い出しておく必要があります。
たとえば、現状分析で「毎月の給与計算と年末調整の2つを外部に委託したい」となった場合、専門業者への見積もり依頼をする際に、その旨を伝えるとよいでしょう。
「どこからどこまで」を明確にすることは、給与計算アウトソーシング利用時のトータルコストをおさえるための重要なポイントになります。
ポイント(3)独自規定などへの柔軟な対応
最近では、優秀な人材の獲得や従業員エンゲージメントを向上させる目的で、独自の給与・勤怠制度を検討する会社も多くなりました。
こうした仕組みをすでに導入済みであったり、将来的に取り入れてみたいと考えたりしている場合、運用方法や業務設計のカスタマイズ・オーダーメイドに対応できるかどうかも確認しておいたほうがよいでしょう。
現時点で独自規定の設計やビジョンが明確ではない場合、過去のカスタマイズやオーダーメイドの実績を見せてもらうことも判断材料の一つになるでしょう。
ポイント(4)Web申請の有無
人事担当者の負担を減らし業務を効率化するためには、Web申請で以下のような手続きができることが理想です。
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Web申請の仕組みがあると、従業員はオンライン上で情報入力や変更を行うため、従来のように人事担当者を通す必要がなくなります。人事担当者が人材採用などのコア業務により出張に出ることが多かったりする場合、Web申請の仕組みがあるメリットはかなり大きなものとなるでしょう。
ポイント(5)情報セキュリティ対策
情報セキュリティ対策を通して企業から預かったデータをどのように扱い、情報漏洩などから守ってくれるかどうかも大変重要なポイントです。
各社の情報セキュリティ対策をチェックする際には、ISMSやPマーク(プライバシーマーク)といった認証の有無を目安にしてもよいでしょう。
<参考>:ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)とは|情報マネジメントシステム認定センター
<参考>:プライバシーマーク制度|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
ポイント(6)コスト
給与計算アウトソーシングの料金は、見積書で示された単純な数字ではなく「自社にとって高い費用対効果が得られそうか?」という視点で見ていきます。
また、自社の人的リソースにそれなりの余裕がある場合、「便利な給与計算ソフトを導入してIT化する」と「専門業者に給与計算の全業務を委託する」の2つで金額面の比較をしてもよいかもしれません。
いずれにせよ、給与計算アウトソーシング選びでは、総合的な視点で費用対効果が高いものを選ぶことが重要です。「安かろう悪かろう」や「とにかく安いほうが良い」といった固定概念で選んでしまう状況は避けたほうがよいでしょう。
給与計算アウトソーシングを成功させるポイント
給与計算アウトソーシングの費用対効果を高め、「成功だ」と感じられる状態にするためには、3つのポイントを重視する必要があります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
ポイント(1)自社の現状を細かく理解する
費用対効果が高い給与計算アウトソーシングとは、自社が現状抱えている課題を予算の範囲内で解決・解消できるものです。
こうした“ベストマッチ”ともいえるサービスを選ぶためには、人事部門の現状について詳しく理解する必要があります。具体的な例としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
<人事部門の現状例>
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たとえば、給与計算ができる人材の獲得が難しい場合、給与計算に加えて年末調整や住民税の年度更新までトータルで代行可能なサービスが理想となります。これに対して、たとえば、計算ミスが多かったり月次業務の負担だけが大きかったりする場合には、年末調整などの年次業務は社内で行い、月次の給与計算だけを切り出してアウトソーシングしてもよいでしょう。
自社にベストマッチする給与計算アウトソーシングは、上記のように現状の人事部門が困っていることや改善したいことを洗い出すことで、絞り込みやすくなるはずです。
ポイント(2)各サービスの特徴や違いを理解する
給与計算アウトソーシングは、サービスごとに得意分野や苦手分野があります。こうしたなかから自社に合うサービスを選ぶためには、事業者側のことを詳しく知ることも大切です。
なかでも対象企業の従業員数や規模感は、サービス内容に影響する大きな要素です。たとえば、社会保険労務士事務所などが運営する中小企業向けの場合、給与計算の代行に加えて、労務相談ができたり周辺業務のアドバイスを受けられたりすることがあります。また中小企業向けの場合、急な困り事にスポット対応できることも多いでしょう。
これに対して大企業向けの場合、1つの企業に複数の担当者がつく体制になっていたり、従業員からの問い合わせまで代行してくれたりします。また最近では、雇用形態の多様性に対応できるサービスも増えてきました。
自社とベストマッチする給与計算アウトソーシングを選ぶためには、各社のサービスにどのような機能があり、どこまでサポート可能なのかを詳しく知ることが重要です。
ポイント(3)導入効果の評価と見直しをする
給与計算アウトソーシングは、1回導入して終わりではありません。
これだけ多くのサービスのなかから自社に合うものを見つけるためには、導入効果の評価や振り返りを行い、「このサービス利用で高い費用対効果は得られたか?」や「改善すべき点があればそれはどこか?」などをチェックすることが大切です。
また、給与計算アウトソーシングの導入でそれなりの効果が得られていても、人事部門のスタッフからすると「この部分が少し不便だ」や「この部分で負担が増えている」などの意見があるかもしれません。
人事部門の業務全体を効率化し、人事スタッフがコア業務に専念しやすい環境をつくるためには、各メンバーの意見にも耳を傾ける姿勢も求められます。また、給与計算アウトソーシングの費用対効果を高めるためには、自社の業務フローを見直すことも必要になるでしょう。
給与計算アウトソーシングはこれからどうなる?
給与計算アウトソーシングは、生成AI技術の導入によりこれまで以上に発展していくことが予想される分野です。生成AIがうまく組み込まれた給与計算アウトソーシングでは、以下のような機能性の向上が期待できると考えられています。
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一方で、これからの人事部門には、少子高齢化の加速や人材が流動化する影響などから、早期に取り組むべきコア業務が山積することになります。また、人材の流動化や働き方の多様化などは、給与計算の業務を複雑化する大きな要因にもなるでしょう。
こうしたなかで、給与計算アウトソーシングは計算業務のさまざまな部分で担当者の大幅に負担を減らす特徴から、人事部門がコア業務に専念するうえで不可欠な選択肢になっていくことが予想されます。
給与計算アウトソーシングならラクラスへ
本記事では、給与計算でアウトソーシング可能な業務の種類やメリット・デメリットをご紹介し、そのうえで業務委託の検討を始める目安や委託先選びのコツ、一般的な費用相場などを解説してまいりました。
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