なぜ今、給与計算システムの保守切れが問題なのか? 影響範囲と見直しポイントを徹底解説
給与システムの保守切れは“チャンス”になる。給与計算業務を変える方法とは?(前編)
「給与計算システムの保守切れが近い」と感じている企業必見。保守切れによるリスクや影響範囲を整理し、システム移行や業務見直しの第一歩となる重要ポイントをわかりやすく解説します。
給与計算業務は、企業の根幹を支える重要な業務のひとつです。特に従業員数が多い大企業では、1回の給与計算ミスが数千〜数万人分の誤支給に直結し、企業の信頼を大きく揺るがす可能性があります。
そんな給与計算業務を支えるのが給与計算システムですが、導入から10年、20年と長く利用している企業ほど直面しやすいのが給与計算システムやそれらを動かすサーバOSの「保守切れ(サポート終了)」という問題です。直近では、人事給与システムを稼働させているWindow Serverや、多くの大企業が人事給与システムとして利用しているSAP ERP6.0などのアプリケーションのサポート終了(SAP 2027年問題)が迫っていることで「今のシステム、長年使っているけど、気づけばサポートが終わる…」と不安を感じている人事担当やIT担当の方も多いのではないでしょうか。
保守切れになると、セキュリティリスクが高まるだけでなく、法改正への対応ができず、日々の給与計算や年末調整にまで影響が及びます。また、障害時にベンダーからの支援が受けられず、給与の支払いが遅れるといった事態も起こりかねません。
しかし、この「保守切れ」は必ずしもネガティブな出来事ではありません。むしろ、長年積み重なってきた業務運用や体制を見直す絶好の機会とも言えます。給与計算システムは長期間にわたり継続利用されることが多く、その間に業務フローが複雑化したり、担当者の交代でノウハウが失われたり、システム自体がレガシー化することも少なくありません。
特に大企業では、運用保守を支えてきたベテラン担当者が退職する、長い付き合いのSIer側からもシステムに精通した担当者がいなくなる、といった“静かな危機”がじわじわと進行していることもあります。保守切れは、こうしたリスクを放置せず、今こそ業務とシステムの両面をリフレッシュするきっかけとして活用するタイミングです。
もし今、業務運用に不便さや属人化を感じているなら、保守切れのタイミングで見直しに着手することで、今後の働き方やシステムの柔軟性、運用の安定性を大きく高めることができます。
本編(前編)では、まず「給与計算システムの保守切れで何が起きるのか」を整理し、次のアクションにつながる視点をお届けします。
給与計算システムの保守切れで起こる
リスクとは
給与計算システムの保守が切れると、もっとも大きな影響が出るのが「セキュリティ」「法改正対応」「障害対応」の3点です。そのほかに大企業に特有のリスクについても見ていきましょう。
リスク1:セキュリティリスク
まず、セキュリティリスクです。
保守が終了したシステムには、脆弱性を修正するアップデートが提供されなくなります。給与データには氏名、住所、銀行口座いった極めて機密性の高い情報が含まれています。仮に情報漏洩が起これば、企業の信用失墜や損害賠償、社会的信頼の低下といった深刻な事態を招きます。
リスク2:法改正の未対応リスク
次に、法改正未対応のリスクです。
給与計算は税制や社会保険制度と密接に結びついています。たとえば、社会保険料率の改定や税制変更のような制度改正は毎年のように発生します。昨今では、定額減税の対応(給与計算や年末調整へ影響)、年末調整の電子証明書への対応、給与の電子払いへの対応などが発生したことは記憶にも新しいのではないでしょうか。
保守切れのシステムでは、こうした改正に自動対応できず、手作業で修正するしかありません。結果、担当者の負担が急増し、計算ミスのリスクも高まります。
リスク3:障害発生時のリスク
さらに、障害発生時のリスクも見逃せません。
保守契約が終了すれば、システム障害時にベンダーのサポートを受けることができません。給与計算のタイミングでトラブルが起きれば、数千人規模の給与支給が遅延し、従業員の生活やモチベーション、企業の信頼性に直結します。
大企業に特有のリスク
特に大企業では、給与計算システムが単独で完結しているケースは少なく、基幹システムやグローバルシステムなど複数のシステムと複雑に連携していることが一般的です。そのため、保守切れによる影響がより広範囲に波及しやすい特徴があります。
- 周辺システムがバージョンアップする一方で、自社システムが対応できず、連携に障害が生じる
- 古いAPI仕様のままで、自動連携が途絶してしまう
- 外資系企業では、日本のローカル情報をグローバルシステムに提供する場合があるが、仕様修正ができず対応不能になる
・ 例)グローバルが指定する新しい項目を追加管理できなくなる
・例)データ自動連携のAPI更新に追従できない
こうした障害は単なる技術的な問題にとどまらず、事業運営全体に波及するリスクとなり得ます。
従業員数が1万人規模の企業で1回の給与計算に誤りがあれば、「1万人分の誤支給」として表面化しますし、保守切れにより法改正対応が遅れ、所得税や社会保険料の計算が誤ってしまえば、訂正・再計算・再支給に莫大なコストと工数が発生します。
また、内部統制や監査法人によるシステム監査にも影響が及ぶことも上場企業にとっては致命的なリスクとなり、経営層への報告・対策も不可避となるでしょう。
こうしたリスクは、発生してからでは対応に膨大なコストがかかります。
一方で、システムリプレイスのタイミングで適切に対策を講じれば、これらのリスクは未然に防ぐことが可能です。
単なるシステムの入れ替えではなく、業務運用全体を見直す大きなチャンスと捉えることが、長期的な安定運用への鍵となります。
給与計算システムの保守切れを機に
見直すべきポイント
給与計算システムの保守切れは、単なるシステム入れ替えではなく、人事業務全体の運用体制を見直す貴重なタイミングです。
とくに大企業では、一度仕組みが固まると10年以上見直しの機会が訪れないことも珍しくありません。この章では、システムと業務運用の双方から見直すべきポイントを整理します。
① 現行業務の棚卸しと可視化
(例外処理・手作業の洗い出し)
最初に取り組むべきは、現行業務の棚卸しです。
どの業務がシステム化され、どの部分が手作業なのか、また例外処理はどこに集中しているのかを可視化することで、改善すべきポイントが明確になります。
棚卸しでよく発見される例:
- 休職者・休業者管理だけExcelで別管理
- 賞与計算は「その担当者にしか分からない」状態
- 給与控除やイレギュラー対応がメールベースで属人化
- 周辺部署とのデータ授受が手作業
この棚卸しが甘いと、旧システムのクセや属人的な運用を新システムに持ち込んでしまうため、最重要ステップです。
② 操作性・利用環境の確認
(関係部署・グループ会社を含めた視点)
給与計算システムは、人事だけでなく経理・情報システム・子会社人事など複数部門で利用されます。
そのため、以下の観点で「利用しやすさ」を再点検します。
- ユーザー数や権限管理は適切か
- 多拠点・グループ会社間で利用に差が出ていないか
- VPNやネットワーク条件で業務に支障が出ていないか
よくある課題例:
- 「アカウント制限で必要な人が入れない」
- 「テレワーク環境で動作が重い」
こうした課題は、クラウド化や権限管理のルール整理により改善できます。
③ 周辺システムとの連携性
(連携障害・バージョン不整合のリスク)
給与計算は勤怠・会計・人事データなど多くのシステムと連携しているため、連携仕様そのものを見直す必要があります。
見直しで明らかになる典型例:
- 勤怠システムのアップデートに給与側が追いつかない
- 古いAPI仕様でグローバル統合システムにデータ連携できなくなる
- CSV手動連携が恒常化し、毎月多大な工数が発生
連携基盤は「給与計算の要」でもあるため、将来的な制度改正・システム更新に耐えられる設計に見直すことが重要です。
④ コスト構造の整理
(システム費用+運用工数まで含めて可視化)
見直しのタイミングでは、システム費用だけでなく、運用にかかっている“隠れコスト”も整理します。
整理すべきコスト例:
- システムライセンス・保守費用
- 開発費用・追加改修費用
- 毎月の勤怠突合・計算確認の工数
- 年末調整・住民税更新など繁忙期の追加工数
コストを可視化しておくことで、クラウド化やアウトソーシング検討時の比較が正確に行えます。
⑤ 運用体制・役割分担の再検討
(属人化の排除と標準化)
給与計算業務は法改正対応・監査対応などで年々負担が増す領域です。
保守切れの機会に、以下の視点で運用体制そのものを再検討します。
- どこが属人化しているか
- どこまで標準化できるか
- どこから外部委託(BPO)できるか
- 監査対応を誰がどのように担保するか
とくに大企業では、「特定の担当がいないと回らない」「年末調整だけでチームが止まる」といった状況が常態化しており、このタイミングでの見直しが効果的です。
⑥ コンプライアンス・セキュリティ対策
(監査対応と内部統制の視点)
内部統制・監査対応を見据えて、システムと運用の両面でセキュリティを強化します。
- 権限管理ルール
- 操作ログ・証跡管理
- データ保全・退避ルール
- 外部委託時の統制整備(委託先管理)
監査法人からの指摘を防ぎつつ、「担当者任せの運用」から「仕組みで統制する運用」へ移行することが重要です。
給与計算システムの保守切れは、システム・運用・役割分担のすべてを見直すことができる数少ないタイミングです。
このタイミングで業務全体をリフレッシュすることで、
- 属人化の解消
- 監査対応の強化
- コスト最適化
- 標準化・自動化
- BPOやBPaaS導入のしやすさ
など、多くのメリットが生まれます。
最近では、システム更新と同時にBPO導入を検討する企業も増えており、
後編では、その具体的な選択肢とメリット・デメリットを解説します。
前編まとめ:
保守切れは「見直すべきサイン」である
給与計算システムの保守切れは、単なるシステムの期限切れではありません。セキュリティリスクや法改正未対応、障害時の復旧遅延といった目に見えるリスクに加え、業務の属人化やレガシー化、周辺システムとの連携不全といった運用面の課題を一気に表面化させる出来事でもあります。
本記事では、こうしたリスクに加え、保守切れを機に見直すべきポイントとして、業務の棚卸し、運用体制、システム連携、コスト構造、コンプライアンス対応などを整理してきました。これらを見て、「思い当たる点が多い」と感じた方も少なくないのではないでしょうか。
重要なのは、保守切れを“その場しのぎで乗り切る問題”として扱わないことです。むしろこれは、システムと業務の両面を見直し、将来に耐えうる給与計算体制を再設計するためのサインと捉えるべきタイミングだと言えます。
では、具体的にどのような選択肢があり、どのように進めればよいのでしょうか。
後編では、クラウド・BPO・BPaaSといった移行モデルの考え方や、保守切れ対応を成功させるための進め方ステップを詳しく解説します。
給与計算業務の見直しを検討するなら
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本記事(前編)では、給与計算システムの保守切れによって生じるリスクと、そのタイミングで業務運用を含めて見直すべきポイントについて整理してきました。
「自社の運用はこのままで良いのだろうか」
「システムだけでなく、業務の持ち方そのものを見直す必要がありそうだ」
そう感じられた方も多いのではないでしょうか。
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