定量目標と定性目標の違いや使い分けるためのポイントを徹底解説
本記事では、定量目標と定性目標について、それぞれの定義・メリット・デメリット・設定方法などを解説。くわえて、各目標の使い分けポイントや目標設定の重要性についても紹介していきます。効果的な目標設定・管理の仕組みを構築するために定量目標と定性目標の違いを理解したい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
近年の人事分野では、ビジネス環境が複雑化しており「目標管理」や個人・組織の目標と連動した「人事評価」の重要性が高まるようになりました。
そうしたなか、人事担当者や管理職が効果的な目標達成・管理の仕組みを考えるためには、定量目標と定性目標の各特徴を理解したうえで、それぞれをうまく設定していくことが重要になります。
そこで本記事では、定量目標と定性目標について、それぞれの定義・メリット・デメリット・設定方法などを解説します。後半では、各目標の使い分けポイントや目標設定の重要性についても紹介します。
効果的な目標設定・管理の仕組みを構築するためにも、定量目標と定性目標の違いを理解したい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
定量目標とは
ここではまず、定量目標の定義と特徴、メリット・デメリット、基本的な設定方法を確認していきます。
定量目標の定義と特徴
定量目標とは、数値であらわせる目標のことです。具体的には、以下のような例が定量目標にあたるでしょう。
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定量目標の特徴は、目に見える数値の達成度で評価をする点です。
たとえば、「クリスマスケーキを300個売る」については、「300個を売れたか?売れなかったか?」も大切ですが、「目標をどの程度、達成できたのか?」という視点も重要となります。
定量目標のメリット
定量目標には、大きく3つのメリットがあります。
メリット(1)公平で透明性の高い評価を行える
たとえば、営業部門で「売上5,000万円」という定量目標を設定した場合、この数字を達成すれば良い評価が得られることになります。
営業メンバー間で相対的な評価をする場合も、定量目標に対する結果に着目すれば、それぞれが納得できる公平な評価を行えるでしょう。
メリット(2)達成までの計画を立てやすい
定量目標の場合、各部門やメンバーが目指すゴールが明確です。
そこでたとえば「クリスマスケーキを300個売る」という定量目標を設定した場合、ゴール達成までに行うべき施策として以下のような具体的施策・計画を立案できるでしょう。
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定量目標の場合、ケーキを300個売るまでの過程(プロセス)が見えるため、上記のような施策(計画)の効果測定や見直しも行いやすいです。
メリット(3)モチベーション管理に活かしやすい
たとえば、「クリスマスケーキをたくさん売りましょう」とか「売上をたくさんあげましょう」といった漠然とした話では、それぞれが何をどのくらい頑張ればよいかわかりません。頑張る目安がわからなければ、モチベーションやパフォーマンスは高まりにくいでしょう。
そこで「クリスマスケーキを300個」や「売上を5,000万円」といった定量目標を設定すると、各自がやるべき施策を設定して効果測定をしながら取り組むことができ、やる気や生産性の向上につながりやすくなります。
また、何らかの理由で進捗が悪い場合も、上司が前向きなフィードバックやサポートを行うことで、モチベーションのさらなる向上につながりやすくなるはずです。
定量目標のデメリット
定量目標にも注意すべきデメリットがあります。
3つを挙げて見ていきましょう。
デメリット(1)結果至上主義になる可能性がある
一般企業が社会的意義を高めていくためには、商品の販売やサービス提供などを通して社会全体にプラスの影響を与えることが重要です。
しかし、そこで定量評価重視から結果至上主義に陥ると、「ケーキ300個を売りさえすれば、やり方は何でもいい」とか「とにかく売り切ることが第一」といった偏った考えからサービス品質が低下し、場合によっては大事なステークホルダーにネガティブな印象を与える可能性も出てくるでしょう。
近年のビジネス環境では、企業が自社の利益だけを追求し続ける時代は終わり、自社の持続可能性を高めるために、CSR(社会的責任)を重視した経営を行う必要が生じています。このような背景から、企業が定量評価ばかりを重視しすぎる結果至上主義に陥ることは、自社における社会的価値や意義を大きく低下させるリスクになるかもしれません。
<参考>:CSR(企業の社会的責任)(厚生労働省)
デメリット(2)モチベーションが下がる可能性もある
メリットのところで紹介した「モチベーションの向上」は、各部門や個人が適切な計画実行を通して目標達成ができるとか、失敗から学びを得たときに期待できる現象です。
一方で、不適切な目標設定・マネジメントの問題から以下のような状況が生まれた場合、従業員のモチベーションは大きく下がるかもしれません。
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また、やる気が出なくなればパフォーマンスや生産性も低下しやすくなるでしょう。
定量目標の設定方法
定量目標は、設定さえすれば必ず効果が得られるものではありません。先ほど例に挙げたように、これまで年間2,000万円しか売り上げられなかった若手に「今年は1億円」といった目標を設定しても、それは非現実的な夢や理想になってしまうでしょう。
従業員のモチベーションや生産性向上につながる効果的な定量目標とは、「具体的で達成可能性が高く、効果測定を行えるもの」です。また、組織の一員として会社が求める成果を出し続けるためには、「上位目標と連動していること」も重要になります。
こうした定量目標を考えるうえで役立つのが、以下の頭文字で構成された『SMARTの法則』というフレームワークです。
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【Specific】具体的である 【Measurable】計測できる 【Achievable】達成できる 【Related】上位目標と関連する 【Time-bound】期限が定められている
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たとえば、経営陣から営業部門に対して「年間の売上目標2億円」という定量目標が設定されたと仮定します。
その部門に所属する営業担当Aさんについては、これまでの実績と経営陣から示された上位目標から、「2025年12月末までに8,000万円を売り上げる」といった定量目標が落とし込まれるイメージです。また、その部下であるBさんには、Aさんよりも少し低い「12月末までに5,000万円」などが設定されるわけです。
これらの“5,000万円”や“8,000万円”が、本人たちの工夫で達成できる現実的な数字であれば、モチベーション向上につながる可能性が高いでしょう。また、「2025年12月末まで」という期限があるからこそ、進捗の確認やうまく行かない場合の計画の見直し、適切な評価なども可能になるのです。
メリットのところで紹介した公平性・透明性が高く、ゴールまでの計画を適切に立案できる定量目標を考える場合には、必ず『SMARTの法則』を意識してみましょう。
定性目標とは
続いて、定性目標の定義と特徴、メリット・デメリット、設定方法、評価のポイントを確認しましょう。
定性目標の定義と特徴
定性目標の「定性」とは、数値化できない質的な部分に着目することです。具体的な定性目標は業種や組織ごとに異なりますが、一般的には以下のようなものが定性目標に該当します。
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定性目標は、「あり方」を反映したものであることが多いです。具体的には「私はこうありたい」や「こういう思考や振る舞いをする社員であってほしい」といったあり方の要素を盛り込むイメージになります。
定性目標のメリット
目標設定・管理に定性目標を取り入れると、多くのメリットが得られやすくなります。3つを挙げて解説しましょう。
メリット(1)多角的な評価が可能となる
たとえば、営業部門の各メンバーはメインの仕事である営業活動以外にも「新人のOJT担当」や「展示会の主担当」といったさまざまな役割を持っているケースが多くあります。そうなると、設定した営業目標に対して全員が同じエネルギーやリソースを使えるとは限りません。
そのため、以下の理由で思うように営業目標を達成できないこともあるでしょう。
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目標を達成できなかったことを上司から叱責された場合には「自分は組織のために頑張っただけなのに……」といった想いから違和感が生まれ、モチベーションが低下するかもしれません。
そこで「チーム全体の成長につながる振る舞いを心がける」や「新人や若手を積極的に支援する」といった定性目標を設定すると、上記に挙げたような理由で定量目標の達成が難しくても、“あり方”の部分で高く評価することが可能となります。
各従業員の役割や置かれた状況などを鑑み、多角的かつ総合的な評価を行うためには、目に見える数字だけでなく、日々の振る舞いや献身性などの定性的な要素も含めて見ていく必要があるでしょう。
メリット(2)理想的な従業員を増やしやすくなる
会社が事業をするなかで社会的意義や責任を果たしていくためには、適切な行動や方法で成果を出す従業員を増やす必要があります。そうしたなかで定性目標は、従業員を自社が求める理想像に近づけるうえでとても役立つものとなります。
たとえば、営業部門の定性目標に「お客様のニーズに寄り添う」や「仲間同士で協力し合う」といった要素を盛り込むと、結果至上主義にありがちな「押し売り」や「顧客の奪い合い」も起こりにくくなるでしょう。
定量目標では「ケーキ300個を必ず売り切る」といったゴールを示すことも非常に重要ではありますが、そこに「お客様のニーズを尊重する」や「若手の販売サポートを行う」などの定性目標を加えることで、自社が理想とする質の良いサービス提供やチームづくりなども実現しやすくなるでしょう。
メリット(3)中長期的な成功につながりやすくなる
目標設定に定性的な内容を盛り込むと、従業員本人や組織の中長期的な成長に役立つ取り組みも高く評価しやすくなります。その理由は、定性目標の場合はゴールに到達するまでの「過程」を評価できるからです。
たとえば、大きな人事労務システムの買い替えを検討する新規顧客とつながったと仮定します。この場合、まずは信頼関係の構築から始める必要があるでしょう。
買い替え時期まで3年となれば、顧客との関係構築~成約までそれなりの長期戦になるかもしれません。こうしたなかで粘り強く顧客の元に通い信頼関係を築く姿勢は、一見とても地味でありながらも大きな成果を出すために欠かせないものになります。
そこで「過程」や「姿勢」に着目した定性目標を取り入れると、成果がなかなか出ない時期の従業員を適切に評価し支え続けることができるでしょう。
定性目標のデメリット
定性目標を取り入れる際には、いくつかのデメリットもあります。
2つを挙げて解説しましょう。
デメリット(1)客観的かつ正確な評価が難しい
定性目標には、定量評価と比べて評価者の主観が入りやすく、客観的で公平な評価が難しい側面もあります。
たとえば「新規顧客Aとの信頼関係を構築する」という目標を掲げた場合、営業担当が実際に行っている施策の内容や進捗などは、本人が提出する営業日報や口頭での報告からしか確認できないかもしれません。
この場合の評価者は日報と会話から以下のことを汲み取り、評価に反映せざるを得ないでしょう。
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ただし、そこで報告内容に虚偽や誇張がある場合、現状に見合う客観的な評価はどうしても難しくなってしまいます。
デメリット(2)達成基準の明確化が難しい
以下のような定性目標は「何をもって達成したといえるのか?」という基準の明確化や見極めが難しいものです。
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たとえば、新規顧客や部下とのラポール形成(信頼関係の構築)は、それが達成できたかどうかのチェックが難しい項目です。
本人が「自分は信頼関係を築けている」と思っていても、相手はそう感じていない可能性もあるでしょう。
また、信頼関係を築くまでの期間は人それぞれであり、そこに期限を設けることも得策とは言い難いです。
さらに、「ほかのメンバーが困っていたら、積極的にサポートする」というのも、あまりに支援しすぎると過干渉で相手の自立や課題解決力の向上機会を妨げることになってしまうかもしれません。
目標管理の仕組みに定性目標を取り入れ、それらを適切に運用していくためには、「何がどういう状態で高く評価されるのか?」や「達成が難しい場合には、どうすべきか?」などを細かく言語化したうえで、被評価者と認識を合わせていく必要があるでしょう。
定性目標の設定ポイント
定性目標はここまで紹介したとおり、会社が求める「従業員の理想の姿」と連動すべきものです。定性目標の効果を最大化するためには、2つのポイントを意識しながら目標設定をする必要があります。
ポイント(1)組織目標および職位・部門の目標を設定する
定性目標も定量目標と同様に、部門や個人の上位にある組織全体の目標から落とし込んでいきます。自社に経営理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)がある場合、その行動規範や行動指針などに書かれた内容を反映させる形が自然でしょう。
たとえばMVVに「顧客満足の最大化」という文言がある場合、各部門には以下のような内容が落とし込まれてくるはずです。
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【アプリ開発部門】
【カスタマーサポート部門】
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MVVがない場合は、「自社の従業員にはどうあってほしいか?」や「どういう従業員を理想とするか?」といった部分から組織全体の目標を考えます。ここで注意したいのは、質やあり方を重視することです。従業員本人および組織が目指す中長期的な成長・成功の状態から考えてもよいでしょう。
(2)目標の期限を設定する
多くの定性目標には、ゴールがないことが多いです。たとえば「部下と良好な関係を構築する」といった目標は、継続的に取り組むべきものです。したがって、「この時期までにできれば良い、できなければ悪い」といった単純な話でもありません。
ただし、従業員が高いモチベーションで施策を実施していくためには、目安となる期限や評価時期を設定するのが理想です。たとえば「3月末までに新規顧客3人との信頼関係を築く」という定性目標を設定した場合、4月以降に評価や振り返りを行うことで、「うまく進まない理由」の明確化や改善策の提案、仕事の調整なども行いやすくなるでしょう。
定性目標の評価方法と注意点
定性目標の場合、「新規顧客とは必ずラポール形成をする」などの“あり方”が中心となるため、具体的な定量目標と比べると、本人と上司による評価にズレが生じやすくなります。また、新規顧客との関係構築などは年単位で行うこともありますから、人事評価のタイミングで明確な成果がでていないケースもあるでしょう。
こうしたなかで定性目標の評価精度や透明性を高めるためには、「必達目標」と「努力目標」に区別したうえで、達成基準をレベルであらわすのも一つの方法です。たとえば、以下のようなイメージになるでしょう。
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【努力目標】 「新規顧客との信頼関係が高まっている」と感じるエピソードが10件以上ある
【必達目標】 すべての営業活動で積極的傾聴を実施する
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【努力目標】 |
【必達目標】 |
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| 10件以上のエピソードがある | 5点 | 全営業活動で実施 | 5点 |
| 7件以上のエピソードがある | 4点 | 営業活動の7割以上で実施 | 4点 |
| 5件以上のエピソードがある | 3点 | 営業活動の5割以上で実施 | 3点 |
| 3件以上のエピソードがある | 2点 | 営業活動の3割以上で実施 | 2点 |
| エピソードは0~2件 | 1点 | 積極的傾聴を行えたのは3割未満 | 1点 |
上記のように「努力目標」と「必達目標」に分けて達成レベルを設定すると、人事評価における認識のズレの解消や達成度の把握もしやすくなるでしょう。
定量目標と定性目標の違い
ここまで紹介した定量目標と定性目標の違いをまとめると、以下の表のようになります。
| 定量目標 | 定性目標 | |
| 概要 | 数値や数量であらわせるもの | 目指すべきあり方や状態 (数値化できないもの) |
| 範囲 | 狭い (多くは仕事の範囲内) |
広い (チームや本人の生き方・考え方・あり方・人間関係の築き方まで及ぶこともある) |
| 期間 | 短期的 | 多くは中長期的 |
| 計測のしやすさ | しやすい | しづらい |
| 共感のしやすさ | 非現実的な数値であったり、チームや本人の自分ごと化ができなかったりすると共感には至らない | しやすい |
| 明確さ | 具体的 | 抽象的 |
| 経済性 | 高い | 短期的には高いとは言い難い |
| メリット | ・公平で透明性の高い評価を行える ・達成までの計画を立てやすい ・モチベーション管理に 活かしやすい |
・多角的な評価が可能となる ・理想的な従業員を 増やしやすくなる ・中長期的な成功に つながりやすくなる |
| デメリット | ・結果至上主義になる可能性がある ・モチベーションが下がる 可能性もある |
・客観的な評価が難しい ・達成基準の明確化が難しい |
具体例で見る定量目標と定性目標の違い
ある営業担当者が、以下の目標を設定したと仮定しましょう。
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【定量目標】 【定性目標】
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まず、定量目標の「2025年12月末までに売上7,000万円」は『SMART』にもとづく具体的な内容であることから、評価者と本人(被評価者)が同じ認識でゴールを目指せるものです。
また、上記を達成するためにはテレアポや顧客先訪問などのコストが必要となりますが、売上7,000万円の達成でチームの売上に大きな貢献をすれば「経済性が高い目標および実施計画だった」といえるかもしれません。
一方で定性目標に登場する「ヒューマンスキルの向上」や「ラポール形成」は、売上7,000万円と比べるとかなり漠然としています。
これらは『どのように経済効率を高められるか』が不明確です。
そもそも、人間力やラポールの向上は一朝一夕で簡単に達成できるものではないため、数年単位の長いスパンで地道な積み重ねをしていく以外に選択肢はないでしょう。
このように、定量目標と定性目標は、それぞれに大きく異なる特徴があります。そこでもし短期間で多くの業績をあげたい場合、定性目標は費用対効果が低く映るかもしれません。しかし、将来的に以下のような状態を目指すのであれば、定量目標とのバランスを見ながら一緒に取り入れていくべきものとなるでしょう。
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職種で異なる定量目標と
定性目標の使い分け方
定量目標と定性目標はそれぞれの特徴を理解しながらバランスよく取り入れることで、仕事の質の向上といったさまざまな効果につながるものです。ただし、具体的な組み合わせのポイントや目標への考え方は、業種ごとに異なる部分があります。
ここでは、一般企業で目標設定されることが多い4つの職種について、目指したいゴールや状況別の使い分けポイントについて具体例をあげながら解説しましょう。
(1)【営業】
定量目標と定性目標の使い分けポイント
営業職や販売職は、「売上」や「販売個数」といった明確なゴールが求められるため、定量目標の設定がしやすい業種です。たとえば、「年間の販売個数300個」や「今期の売上5,000万円」といったものを先述の『SMARTの法則』を使って設定することは多いでしょう。
これに対して定性目標は、以下のような目的で取り入れると効果的です。
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このような目的の定性目標によってチーム力が活性化すると、「部門売上アップをみんなで目指す」や「逆境をみんなで乗り越える」といった相乗効果も生まれやすくなるでしょう。
(2)【SE(システムエンジニア)】
定量目標と定性目標の使い分けポイント
システムやアプリ開発の現場で特に重視されることは、「製品の品質向上」と「納期厳守」の2つです。これらに関する定量目標を設定するうえでは、以下のような項目の計測・集計をする仕組みが必要となります。
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SE(システムエンジニア)のようなシステム開発者の場合、上記のような内容を計測できてはじめて「今期のエラー発生率を前年比80%に下げる」といった定量目標の設定ができることになります。
なお、開発プロジェクトの費用対効果を高めるためには、原価率や労働生産性、時間稼働率なども見ていく必要があるでしょう。
これに対して定性目標は、先述の営業職と同じようにスキル向上および個人・組織のあり方に関する内容が中心です。具体的には、以下のような定性目標になるでしょう。
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(3)【人事労務】
定量目標と定性目標の使い分けポイント
人事労務は、中長期的視点での目標設定が特に重視される部門です。
たとえば、「2025年度は新卒エンジニアを10人採用する」という目標を達成しても、何らかの理由で新人の大半が会社を辞めた場合、その採用活動は「短期的に見ると成功だが、中長期的に見ると失敗だった」という評価になるでしょう。
こうした問題を防ぐためには、何らかの施策を実施した直後の数字だけで一喜一憂するのではなく、以下のように半年後・1年後・3年後・5年後……といった中長期的な効果も見ていく必要があります。
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また、人事労務には、たとえば「ハラスメント被害者のケア」や「優秀な応募者の魅力づけ」といった明確な工数や期限を設定できない仕事もたくさんあります。こうした仕事に取り組む際には、「相手の気持ちに寄り添う誠実な対応をする」といった定性目標を設定するのもよいでしょう。
「相手の気持ちに寄り添う」や「誠実さ」などはそれを行う担当者本人には測れない要素となりますが、このポイントを意識しながら仕事に取り組むことで、ケアやサポートの質が最大化しやすくなるはずです。
(4)【管理職】
定量目標と定性目標の使い分けポイント
多くの管理職は、チームメンバーに目指すべきゴールを示し、そこに向かって引っ張っていく役割です。たとえば、営業部門の管理職であれば部門の目標として「年間売上2億円」などを示し、それを各メンバーに落とし込んでフォローなどを行いながら達成を目指すことになります。
ただし、多くのチームは「営業成績さえあげればいい」というわけではありません。たとえば、競合の台頭により自社への需要が下がっている場合、そのなかでも成果を出してゴールに到達するためには、各メンバーが逆境においても主体的に行動し、互いに支え合う動きが必要です。
そのような強い組織をつくり、そこから好循環を生みだすためには、管理職自身が以下のように明確な目標やビジョンを持って達成し続ける姿勢が必要でしょう。
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【定量目標】
【定性目標】
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効果的な目標管理の成功ポイント
ここまで紹介した定量目標・定性目標は、企業の目標管理制度や人事評価の仕組みのなかで設定・活用されるものです。では、目標の設定は、そもそもなんのために必要となるのでしょうか。また、これらの仕組みによって高い効果を出すためには、どのような工夫が求められるでしょうか。
ここでは、目標設定の基本的な考え方を整理していきます。
目標設定はなぜ必要?
目標設定は、達成したいゴールに向けて具体的な施策やタスクを決めるうえで不可欠なものです。
たとえば、「年間売上1億2,000万円を目指す」という具体的目標を設定すると、1億2,000万円÷年間12ヵ月で「毎月およそ1,000万円の売上」が必要になることがわかります。営業担当者はこの数字を把握するからこそ、「そのために今月は何をすべきか?」という具体的な施策や計画を立案できるわけです。
また、その営業担当の所属組織が“顧客との信頼関係”を大事にしている場合、「ラポール形成と傾聴を重視した営業活動を行う」という定性目標を設定することで、自社のベクトルに合った仕事を行えるようになります。
定量目標・定性目標を通じて明確な「ゴール」と」「ベクトル」の両方を設定するからこそ、所属組織のニーズに合った成果を出し続けることが可能になるのです。
人事評価における目標管理の役割
目標管理は、人事評価に公平性や透明性の高さをもたらすものです。たとえば、「毎月1,000万円の売上を達成する」という具体的な目標を設定するからこそ、上司と部下は同じ基準で評価できます。
仮にそこで売上が500万円で目標の半分しか達成できなかった場合も、同じゴールを共有しているからこそ以下のような適切なフィードバックを行えることになります。
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また、人事評価は報酬や等級の決定に影響するものです。従業員側に「どうしてこの評価になるの?」「納得いかない!」などの不満が生じると、組織への不信感や離職動機につながってしまいます。
しかしそこで適切な目標をベースにお互いが納得できる評価を行うと、部下も自分の現状を受け入れたうえでポジティブに次の挑戦へと向かいやすくなるでしょう。
定期的な振り返りの重要性
目標管理の効果を高めるためには、定期的な振り返りと必要に応じた計画の見直しが重要です。たとえば、「年間1億2,000万円売り上げる」という目標を設定したと仮定します。
この場合、1年先のゴールに向けてただがむしゃらに施策を実施し続けるのではなく、3ヵ月や1ヵ月、1週間といった節目に現状の確認を行うことが大切です。そこであまり成果がでていないのであれば、施策の見直しが必要となります。
「年間1億2,000万円売り上げる」の場合、それを年間12ヵ月で割ると「毎月1,000万円」になりますから、たとえば3ヵ月が経過した時点で2,000万円しか売り上げられていないというのであれば、現在のやり方に問題があるかもしれません。
営業や小売業などの場合、季節や顧客の賞与支給などの外的要因の影響を受ける傾向もありますが、それでも定期的に自分の業績を振り返り、当初の予測を大きく下回る場合は改善策を考えることも必要でしょう。
効果測定・振り返り・改善を定期的に繰り返すことで、ゴール到達への確実性が高まりやすくなるはずです。
人事労務のアウトソーシングならラクラスへ
本記事では、定量目標と定性目標について、それぞれの定義・メリット・デメリット・設定方法などを解説してきました。効果的な目標設定・管理の仕組みを構築するには、多くの注意点があるため、人事部のなかでも負担に感じている方は多いのではないでしょうか。
もし人事労務における業務効率化をお考えであれば、ラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができコア業務に集中できるようになります。
ラクラスの特徴として、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ対応を得意としています。他社では難色を示してしまうようなカスタマイズであっても、柔軟に対応することができます。それにより、大幅な業務効率の改善を見込むことができます。
また、セキュアな環境で運用されるのはもちろんのこと、常に情報共有をして運用状況を可視化することも心掛けています。そのため、属人化は解消されやすく「人事の課題が解決した」という声も数多くいただいております。
特に大企業を中心として760社86万人以上の受託実績がありますが、もし御社でも人事の課題を抱えており解決方法をお探しでしたら、ぜひわたしたちラクラスへご相談ください。
