給与計算アウトソーシングとは? 費用相場・導入の流れ・選び方を詳しく解説
本記事では、給与計算アウトソーシングの概要や種類、導入までの流れ、料金相場、メリット・デメリットを解説します。また、よくある失敗例や委託先選びのチェックポイント、給与計算アウトソーシングが向いている企業についても紹介します。これから導入を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
給与計算アウトソーシングの導入を検討する場合、「そもそもどういった流れで導入するものなのだろうか?」といった疑問が生じることもあると思います。
本当の意味で自社にマッチする給与計算アウトソーシングを選ぶためには、導入までの一般的な流れを把握したうえで、適切なステップを踏みながら準備や契約を進めていくことが重要です。
そこで本記事では、給与計算アウトソーシングの概要や種類、導入までの流れ、料金相場、メリット・デメリットを解説します。後半では、よくある失敗例や委託先選びのチェックポイント、給与計算アウトソーシングが向いている企業についても紹介します。
これから給与計算アウトソーシングを導入するうえで、「サービス利用の流れ」や「サービスの選び方」を調べている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
給与計算アウトソーシングとは
給与計算アウトソーシングとは、企業の給与計算やその周辺業務の一部または全部を外部の専門事業者に委託すること、またはそのサービスを指します。「給与計算BPO」や「給与計算代行」と呼ばれることもあるでしょう。なお“BPO”については、単純な計算代行にとどまらず「業務プロセスの設計」や「標準化」まで含む場合があります。
給与計算は、毎月発生するうえに専門知識も必要であるため、多くの人事部門にとって負担になる業務です。給与計算アウトソーシングを利用する場合には、下記のような業務の一部を切り出して、専門業者や税理士・社会保険労務士事務所に委託するイメージになります。
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給与計算アウトソーシングで外部委託できる業務について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
【関連記事】給与計算を業務委託するメリット・デメリット|給与計算アウトソーシングの費用相場や選び方も解説
給与計算アウトソーシングの種類と委託先の特徴
前述のとおり、給与計算アウトソーシングの委託先にはBPO・アウトソーシング専門会社や社会保険労務士事務所、税理士事務所など、いくつかの種類があります。また近年では、クラウド型の給与計算システムと実務の代行サービスを組み合わせたサービスも登場しています。
それぞれ対応できる業務範囲や得意分野、対象とする企業規模などが異なるため、単純に料金だけで比較するのではなく、自社がどこまでの業務を委託したいのかを明確にしたうえで選ぶことが重要でしょう。
ここでは、それぞれの特徴について詳しく見ていきます。
(1)BPO・アウトソーシング専門会社
BPO・アウトソーシング専門会社は、給与計算をはじめとする人事労務業務を企業に代わって継続的に運用することを得意としています。
給与・賞与計算だけでなく、勤怠データの確認、年末調整、住民税関連業務、従業員からの問い合わせ対応など、給与計算に関連する幅広い業務を委託できるサービスもあります。
特に、「従業員数が多い企業」や「複数の事業所を持つ企業」、「雇用形態・給与体系が複雑な企業」では、大量のデータを安定的に処理できる運用体制や、自社の人事システムとの連携に対応できるかが重要になります。
単に給与を計算するだけではなく、給与計算業務全体の効率化や標準化まで進めたい企業に向いている委託先といえるでしょう。
(2)社会保険労務士事務所
社会保険労務士事務所でも、給与計算を委託できる場合があります。
社会保険労務士は、労働・社会保険に関する専門家です。給与計算に加えて、入退社時の社会保険・労働保険の手続き、算定基礎届、労働保険の年度更新などをまとめて依頼できることが大きな特徴でしょう。全国社会保険労務士会連合会でも、月次・賞与の給与計算や社会保険の算定・申請代行などを“社労士が支援できる業務”として案内しています。
そのため、「給与計算だけでなく社会保険手続きも外部に任せたい」「労務管理について専門家に相談したい」といった企業には適しています。
一方で、事務所ごとに対応できる従業員数やシステム連携、業務範囲などは異なります。特に従業員数が多い企業では、大規模な給与計算を処理できる体制が整っているかを確認しておく必要があるでしょう。
(3)税理士事務所等
税理士事務所や会計事務所のなかにも、顧問先企業などを対象に給与計算の代行サービスを提供しているところがあります。
給与計算には所得税の源泉徴収や年末調整など、税務に関係する業務も含まれます。税理士事務所や会計事務所であれば、日常の会計・税務業務とあわせて給与計算を依頼できるため、複数の委託先を利用せず、バックオフィス業務をまとめて任せたい企業にとっては利用しやすい選択肢です。
ただし、すべての税理士事務所が給与計算を提供しているわけではなく、対応できる業務範囲も事務所によって異なります。また、社会保険・労働保険の手続きまで委託したい場合には、社会保険労務士との連携体制なども確認しておくとよいでしょう。
(4)給与計算システム+代行型
近年では、クラウド型の給与計算システムと、給与計算の実務代行を組み合わせたサービスも増えています。
「組み合わせ」というのは、企業側がシステム上で従業員情報や勤怠データなどを管理し、そのデータをもとに外部の専門スタッフが給与計算を行う仕組みです。給与計算だけでなく、従業員情報の収集や各種申請、Web給与明細などの機能を一体化しているサービスもあります。
システムと業務代行を組み合わせることで、人事データを一元管理しながら給与計算担当者の作業を減らせることがメリットといえます。また、すべての業務を外部に任せるのではなく、一部の工程だけをアウトソーシングする運用にも向いているでしょう。
一方で、サービスによって利用できるシステムや業務フローが決まっている場合がありますので、現在利用している勤怠管理システムや人事システムとの連携が可能かどうか、自社独自の給与ルールに対応できるかどうか、などを確認することが重要です。
大企業向け/中小企業向けの違い
どの委託先にしても、給与計算アウトソーシングを選ぶ際には「サービスが想定している企業規模」についても確認しておきましょう。現在の給与計算アウトソーシングサービスでも、大企業向けでは“複雑な給与計算への対応力”、中小企業向けでは“給与計算周辺の業務”や“スポット業務への対応力”などが選定ポイントとして挙げられています。
大企業においては、従業員数が多いだけでなく、複数の雇用形態や給与体系、拠点ごとに異なる勤務形態などに対応しなければならないケースがあります。そのため、大量処理への対応力に加えて、複雑な給与制度への対応、既存システムとの連携、セキュリティ体制、繁忙期にも安定して運用できる体制などが重要になります。
一方、中小企業では、給与計算担当者の不足や属人化を解消することが主な目的となるケースも少なくありません。給与計算だけでなく、年末調整や社会保険関連業務なども含めて柔軟に委託できるサービスであれば、限られた人員で行っていたバックオフィス業務の負担を軽減できるでしょう。
ですから、「大企業向け」「中小企業向け」という分類だけで判断するのではなく、自社の従業員数や給与制度、委託したい業務範囲、システム環境などを整理したうえで、自社に必要な運用体制を提供してもらえる委託先を選ぶことが大切です。
なお、社会保険手続きや税務に関する業務など、資格によって対応できる範囲が異なる業務もあります。給与計算の周辺業務までまとめて委託したいという場合には、社会保険労務士や税理士との連携体制についても確認しておきましょう。
給与計算アウトソーシング導入までの流れ
ここまで解説してきたとおり、給与計算アウトソーシングは自社に合うものを選んでこそ高い費用対効果が期待できるものです。ただ、費用対効果の高いサービスを選ぶためには、自社に合う委託先に加え「適切な流れ」で導入準備を進めていく必要があります。
ここでは、給与計算アウトソーシングの導入および毎月の運用開始までに必要となる5つのステップについて紹介しましょう。
ステップ1:
現状分析を通じて自社の課題を洗い出す
給与計算アウトソーシングは、サービスによって対応範囲や対象とする企業規模が異なります。そのため、まずは現状の課題を洗い出し、「何をアウトソーシングによって解決したいのか」を明確にすることが大切です。
ステップ2:
給与計算アウトソーシングサービスを選定する
現在の課題や利用目的が明確になったら、自社に合う給与計算アウトソーシングを選んでいきます。このステップで重要となるのは、前述したように運営会社や各サービスの特徴を理解したうえで、総合的な視点から比較検討をしていくことです。
なお、委託先を選ぶ際の具体的なチェックポイントについては、記事の後半でも詳しく解説します。
ステップ3:
給与計算アウトソーシングサービスと契約をする
自社に合うサービスが見つかったら、正式な契約を行います。見積書やサービス資料を見てわからない点がある場合は、契約前に確認しておくようにしましょう。
ステップ4:
給与計算に必要なデータ・書類を提出する
サービス事業者に給与計算を代行してもらうためには、業務に必要なデータや書類を提出する必要があります。具体的な内容は事業者や対応範囲によって異なりますが、一般的には以下のものを用意する必要があるでしょう。
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給与計算アウトソーシングの利用を早く始めるためにも、日頃から上記のデータや書類を整理しておくことが重要になります。
ステップ5:初期設定を実施する
アウトソーシング事業者では、ステップ4で受け取った情報をもとに、給与計算をするためのデータマッチングや専用システムの初期設定などを行います。この設定が終わってはじめて、給与計算アウトソーシングの運用が始まることになります。
導入にはどのくらいの期間がかかる?
給与計算アウトソーシングは、契約後すぐにすべての業務を切り替えられるとは限りません。委託する業務範囲や企業規模、給与制度の複雑さなどによって異なりますが、一般的には本稼働までに3か月前後、業務範囲が広い場合や大規模な企業では半年程度の期間を見込むケースもあります。
導入までに時間が必要なのは、自社の給与規程や勤怠ルール、手当・控除などの条件を委託先に正確に引き継ぐ必要があるためです。
さらに、従業員情報や過去の給与データの移行、システム設定、業務フローの設計、テスト計算なども行います。本稼働前には、従来の方法と新しい方法で給与計算を並行して実施し、計算結果に相違がないかを確認する期間を設けることもあるでしょう。
特に、「従業員数が多い」「雇用形態や給与体系が複数ある」「独自の手当や控除が多い」「既存の勤怠・人事システムとの連携が必要」といった企業では、導入準備に時間がかかりやすくなる傾向があります。
そのため、「○月からアウトソーシングを開始したい」と具体的に考えている場合には、希望する稼働時期から逆算して早めに準備を始めることが大切です。委託先を選定する際にも、必要な導入期間や準備事項、テスト運用の方法などをあらかじめ確認しておきましょう。
給与計算アウトソーシングの料金体系と
費用相場
給与計算アウトソーシングを検討する際に、気になるポイントの一つが費用です。
料金は、従業員数や委託する業務範囲、給与制度の複雑さ、利用するシステムなどによって大きく異なります。そのため一概にはいえませんが、一般的には「月額の基本料金+従業員数に応じた従量課金」を基本とし、初期費用や年末調整などのオプション料金が加算される料金体系が多く見られます。
特に従業員数が数百名から1,000名以上になる大企業では、業務範囲やシステム連携、独自の給与制度などによって要件が大きく異なるため、個別見積もりとなるケースも多いでしょう。
具体的な費用のポイントについて、5つを挙げながら解説していきます。
(1)基本料金+従業員数による従量課金
給与計算アウトソーシングでは、毎月一定額の基本料金に、給与計算を行う従業員数に応じた料金を加算する方式が一般的です。
例えば、小規模な給与計算代行では、月額1万~3万円程度の基本料金に、従業員1人あたり数百~1,000円程度を加算する料金体系も見られます。
ただし、これはあくまで比較的シンプルな給与計算を委託する場合の目安です。勤怠データの確認や従業員からの問い合わせ対応、社会保険関連業務などまで委託する場合には、料金が高くなることもあるでしょう。
また、「従業員数が多くなると1人あたりの単価が下がる」といった料金体系を採用しているサービスもあります。実際に、従業員数に応じて1人あたりの処理単価を段階的に設定し、一定規模以上では「個別見積もり」としているアウトソーシング会社もあるようです。
そのため、料金を比較する際には「1人あたりいくらか」だけでなく、その料金にどこまでの業務が含まれているのかを確認することが重要です。
(2)初期費用
給与計算アウトソーシングでは、月額料金とは別に初期費用が発生することがあります。
初期費用には、従業員情報や給与データの登録、給与規程や各種手当・控除の確認、システム設定、データ移行、業務フローの設計、テスト計算など、アウトソーシングを開始するための準備作業にかかる費用が含まれます。
比較的小規模な給与計算代行では数万円程度から設定されるケースもありますが、大企業向けのBPOでは要件定義やシステム構築、データ移行、並行稼働などが必要となるため、初期費用が数十万円から数百万円以上になるケースもあります。実際に、大規模な人事給与BPOでは、導入時の要求分析やマスタ設定、データ移行、業務フロー構築などを「初期費用」として設定している例も見受けられます。
初期費用だけを見ると高く感じる場合であっても、「自社でシステム移行や業務設計を行うための工数」まで含めて比較することが大切です。
(3)年末調整などのオプション費用
毎月の給与計算とは別に、年末調整や賞与計算、住民税の年度更新などは“オプション料金”として設定されていることがあります。
例として、年末調整では従業員1人あたり1,000~3,000円程度、賞与計算では1人あたり数百円~1,000円程度、または通常の給与計算1回分と同程度の料金を設定しているサービスがあります。
ほかにも、次のような業務を追加すると費用が発生する場合があります。
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サービスによって「基本料金に含まれる業務」と「オプションとなる業務」は異なります。月額料金だけで判断せず、自社が必要とする業務をすべて含めた年間費用で比較することが重要です。
(4)料金が変わる要素
給与計算アウトソーシングの料金は、単純に従業員数だけで決まるわけではありません。
例えば、次のような条件によって料金が変わる可能性があります。
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特に大企業では、複数の雇用形態や給与体系、拠点ごとの勤務形態などが存在することも多いため、標準的な業務フローだけでは対応できない場合があります。
そのため、同じ従業員数の企業であっても、給与制度や業務内容によって見積金額には差が生じることを理解しましょう。
(5)見積もりを見るときの注意点
ここまでに何度か説明していますが、給与計算アウトソーシングの見積もりを比較するときは金額だけで判断しないことが大切です。
例えば、A社は月額50万円、B社は月額40万円だったとしても、A社には年末調整や従業員対応まで含まれている一方、B社ではそれらがすべて別オプションになっている可能性があります。その場合、年間の総額ではA社のほうが安くなることも考えられるわけです。
見積もりを確認する際には、少なくとも以下の点を確認しておくようにしましょう。
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また、単純な委託費だけでなく、アウトソーシングによって社内の作業時間やシステム運用、人員配置などをどの程度削減できるのかも考える必要があります。
給与計算アウトソーシングの費用を比較するときには、「最も料金が安いサービス」を探すのではなく、委託後に自社に残る業務も含めた「トータルコスト」と「得られる効果」を踏まえて判断することが重要です。
給与計算アウトソーシングの利用で期待できる効果とメリット
給与計算アウトソーシングには、さまざまなメリットがあります。ここでは、代表的な4つのメリットを紹介しましょう。
メリット(1)人事業務を効率化し、コア業務に
専念できる
人事部門が担うべき業務には、以下のように多くの種類があります。
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このなかで給与計算は、高い専門性が必要であるものの、毎月行う作業がある程度決まっている定型的な業務です。“ノンコア業務”とも呼ばれるこうした定型業務を外部に切り出してアウトソーシングすると、業務効率化が実現できて人事担当者の負担が軽減しやすくなります。
つまり、ノンコア業務を切り出してアウトソーシングすれば人事担当者はリソースをコア業務に集中させられるようになるわけです。
人事業務を効率化させる方法については以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
【関連記事】人事業務を効率化するには?効果的なツールや効率化できる業務の種類、事例をご紹介
メリット(2)人件費や採用・教育コストを
抑えられる可能性がある
給与計算アウトソーシングを利用すると、給与計算の担当者にかかっていた以下のコストを抑えられる可能性があります。
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たとえば、給与計算の実務経験が浅い担当者の場合、確認や修正に時間がかかり、作業時間が長くなることがあります。作業が定時内に終わらなければ、残業時間が増えてしまうかもしれません。
また、近年のように“売り手市場”の時代に給与計算の即戦力人材を雇い入れるとなれば、それなりの採用コストや高賃金の提示なども必要になってくるでしょう。人材を獲得できなければ、そのコストはさらに増大するかもしれません。
そんななかで給与計算アウトソーシングを導入すれば、代行業者に一定の料金を支払うことで、継続的にかかる採用・教育コストや残業代を抑えられる可能性があるわけです。
メリット(3)専門知識の習得・更新にかかる
負担を軽減できる
給与計算を担当するためには、以下のような専門知識を身につけたうえで制度改正のたびにアップデートしていかなければなりません。
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しかし、給与計算を専門事業者に委託することで、制度改正の情報収集や専門知識のアップデートをすべて社内だけで担う必要がなくなり、担当者の負担を軽減できることになります。
メリット(4)給与計算ミスの抑制につながる
給与計算の専門知識や実務経験を持つ事業者に委託することで、社内だけで処理する場合に比べて計算ミスを抑えられる可能性が高まります。
給与計算を専門とする事業者であれば、制度改正への対応や、ヒューマンエラーが生じやすいポイントについても専門的な知見を持っています。
こうした業者に外部委託すれば、正確な給与・税額を支払えるようになるでしょう。
なお、給与計算や年末調整などは、ミスが許されない手続きです。給与計算の外部委託は、計算ミスで会社の信用を失墜させないための対策にもなるかもしれません。
給与計算アウトソーシングのデメリット
給与計算アウトソーシングには多くのメリットが期待できる一方、コストやノウハウ、情報管理などの面で注意すべき点もあります。ここでは、代表的な3つのデメリットを紹介します。
デメリット(1)
トータルコストが増大することがある
給与計算アウトソーシングでは先ほどご紹介したような委託に関する様々な費用が発生するため、必ずしも自社運用よりコストが下がるとは限りません。委託する業務範囲や社内に残る業務も含め、トータルコストで判断する必要があります。
デメリット(2)
社内に専門知識やノウハウが蓄積されない
給与計算の関連業務をすべて外部委託した場合、人事担当者の専門知識はアップデートされにくくなります。そうなると、従業員から給与計算や年末調整に関する問い合わせを受けたとしても、社内での回答が難しくなることもあるでしょう。
また、社内に給与計算ができる人材がいなければ、新たな担当者を採用しない限り、アウトソーシングの利用を止めることも難しくなってしまいます。
デメリット(3)情報漏洩のリスクがある
もし委託先の情報セキュリティに問題があった場合には、自社のデータが情報漏洩の被害に遭う可能性もあります。
漏洩したもののなかに個人情報が含まれていれば、従業員本人や家族に大きな不安を与えることになりかねません。また、会社の信用低下にもつながってしまうでしょう。
給与計算アウトソーシングでよくある失敗例
給与計算アウトソーシングは、業務負担の軽減や属人化の解消などに役立つ一方、委託先の選び方や導入前の準備が不十分だと、期待した効果を得られないことがあります。
導入後に「思っていたほど業務が減らなかった」「想定以上に費用がかかった」といった事態を避けるためにも、よくある失敗例をあらかじめ把握しておくことが大切です。
ここでは、6つの例を取り上げて解説していきます。
失敗例(1)想定より社内業務が減らなかった
給与計算をアウトソーシングしたものの、期待していたほど社内の業務負担が減らないケースがあります。
例えば、勤怠データの確認や修正、従業員情報の更新、委託先へのデータ送付、計算結果のチェックなどが自社側に残ると、給与計算そのものを委託しても担当者の作業量が大きく減らないことがあります。また、委託先とのやり取りが頻繁に発生し、かえって確認作業が増えてしまう、というケースも実際に耳にします。
こうした失敗を防ぐためには、「給与計算を委託する」という大まかな考え方だけでなく、現在の業務工程を細かく洗い出し、どの作業を委託し、どの作業を自社に残すのかを明確にしておくことが重要になるでしょう。
失敗例(2)委託範囲が曖昧だった
給与計算に関連する業務は、毎月の給与計算だけではありません。
勤怠データの確認、従業員情報の変更、賞与計算、年末調整、住民税関連業務、社会保険関連業務、従業員からの問い合わせ対応など、さまざまな業務があります。
導入前に委託範囲を明確にしていないと、「当然対応してもらえると思っていた業務が対象外だった」といった認識の違いが生じることがあります。また、業務の境界が曖昧なままでは、トラブルが発生した際に「どちらが対応するのか」が分からなくなる可能性もあるでしょう。
契約前には、業務ごとの役割分担や責任範囲を整理し、誰が何を担当するのかを明文化しておくことが大切です。
失敗例(3)
自社独自の給与ルールに対応できなかった
企業によっては、独自の手当や控除、複数の給与体系、特殊な勤務形態などを採用している場合があります。こうした給与ルールへの対応力を十分に確認せずに委託先を決めてしまうと、標準的なサービスでは対応できず、自社側で追加作業が必要になることがあります。
特に、大企業やグループ企業では、事業所や雇用形態によって異なる給与制度を運用しているケースもあるため注意が必要です。
委託先を選ぶ際には、自社の給与規程や例外処理を事前に共有し、どこまで対応可能なのかを確認しておきましょう。必要に応じて、導入前に実際のデータを用いたテスト計算を行うことも有効です。
失敗例(4)追加料金が発生してコストが膨らんだ
導入前に提示された月額料金だけを見てサービスを選んだ結果、想定以上の費用が発生してしまった、というケースもあります。こうしたケースを避けるためには、月額料金だけではなく、年間を通じて発生する業務を洗い出したうえで総額を確認することが重要です。
見積もりを比較する際には、「基本料金に何が含まれているのか」「どのような場合に追加料金が発生するのか」まで確認しておきましょう。
失敗例(5)
データ連携・システム連携に手間がかかった
給与計算アウトソーシングでは、人事システムや勤怠管理システムなどから必要なデータを委託先へ連携する必要があります。しかし、既存システムと委託先のシステムとの連携方法が合わない場合、CSVファイルの加工やデータの手入力などが必要になり、想定以上の作業が発生することがあります。
また、複数のシステムを利用している企業では、システムごとにデータ形式が異なり、連携のための設定や調整に時間がかかるケースもあります。導入前には、現在利用している人事・勤怠・給与関連システムを整理し、API連携やファイル連携など、どのような方法でデータを受け渡すのかを確認しておくことが重要です。
失敗例(6)
問い合わせ対応のスピードが合わなかった
給与計算では、従業員から給与額や控除、各種申請などについて問い合わせが発生することがあります。委託先に問い合わせ対応まで任せる場合、回答までの時間や対応方法が自社の求める水準と合わず、不満につながることも多いものです。
また、給与支給日の直前など緊急性の高い場面で、すぐに担当者と連絡が取れないと業務に支障が出る可能性もあるでしょう。
委託先を選ぶ際には、問い合わせ方法や対応時間、回答までの目安、緊急時の連絡体制などを確認しておくことが重要です。
ここまで失敗例を見てきましたが、給与計算アウトソーシングを成功させるためには、サービス内容や料金だけでなく、導入後の運用まで具体的にイメージして委託先を選ぶ必要があります。こうした失敗例を踏まえたうえで、自社の目的や課題に合ったサービスを選ぶようにしましょう。
給与計算アウトソーシング選びの
チェックポイント
具体的に委託先を選ぶ際に確認したいポイントは何なのでしょうか。
ここでは、6つのポイントと導入後に欠かせない1つのポイントを続けて紹介します。
ポイント(1)対応実績と専門性
給与計算アウトソーシングを選ぶ際には、自社と近い業種・業態・企業規模の会社への対応実績を確認しましょう。同じような企業への支援実績が豊富であれば、その業界特有の給与制度や勤怠ルールなどにも対応してもらいやすくなるはずです。
もしWebサイトや資料だけでは判断できない場合は、自社と似た企業への対応実績があるか直接確認してみるとよいでしょう。
ポイント(2)対応業務の範囲
サービスによって、給与計算だけを代行するものから、年末調整や住民税関連業務、従業員対応などまで幅広く任せられるものまで対応範囲は異なります。あらかじめ自社が委託したい業務を洗い出し、必要な業務がサービスの対象に含まれているかを確認しましょう。
委託範囲を明確にしておくことは、導入後の認識のずれや不要な追加コストを防ぐことにもつながります。
ポイント(3)独自規定などへの柔軟な対応
独自の手当や給与体系、複数の勤務形態などを採用している企業では、自社特有のルールに対応できるかも重要な確認ポイントです。
標準的なサービスだけでは対応できないケースもありますので、業務フローやシステム設定のカスタマイズが可能かどうか、過去に同様の対応実績があるかどうか、などを確認しておきましょう。
ポイント(4)Web申請の有無
人事担当者の業務負担を減らすためには、従業員自身がWeb上で各種手続きを行える仕組みがあるかも確認しておきたいポイントです。
例えば、次のような手続きが挙げられます。
- 各種控除の申請
- 振込口座の変更
- 給与明細の確認 など
従業員が直接情報を入力・変更できれば、人事担当者による転記や確認作業を減らすことができますので、業務効率化につなげられるでしょう。
ポイント(5)情報セキュリティ対策
給与計算では、給与額や口座情報、マイナンバーなど重要な個人情報を扱います。
そのため、委託先の情報セキュリティ体制は必ず確認しておきましょう。
確認する際には、データの管理方法やアクセス制御、バックアップ体制などに加えて、ISMSやPマーク(プライバシーマーク)といった第三者認証の有無も一つの判断材料になってきます。
<参考>ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)とは|情報マネジメントシステム認定センター
<参考>プライバシーマーク制度|一般財団法人日本情報経済社会推進協会
ポイント(6)費用対効果を含めたコスト
料金を比較する際には、単純な月額料金の安さだけではなく、委託できる業務範囲や社内に残る作業まで含めて費用対効果を考えることが重要です。
初期費用やオプション料金も含めた年間の総額を確認し、自社の業務負担をどの程度削減できるのかという視点から比較しましょう。
ポイント(7)導入後は効果を評価・見直す
給与計算アウトソーシングは、導入して終わりではありません。
運用開始後も定期的に効果を確認し、必要に応じて業務の進め方を見直すことが大切です。
例えば、「人事担当者の作業時間はどの程度減ったか」「ミスや問い合わせは減ったか」「想定していた費用対効果を得られているか」といった点を確認します。また、実際に業務を担当する人事部門のメンバーから、「以前より負担が増えた作業はないか」「使いにくい部分はないか」といった意見を集めることも有効です。
アウトソーシングの効果を継続的に高めるためには、委託先に任せる業務だけでなく、自社側に残っている業務フローについても定期的に見直していきましょう。
給与計算アウトソーシングが向いている
企業・向いていない企業
ここまで見てきて分かるように、給与計算アウトソーシングはすべての企業に適しているわけではありません。企業規模や給与制度、社内の人員体制、抱えている課題などによって、導入による効果は異なります。
そのため、「給与計算を外部に任せられるか」だけではなく、「自社の課題をアウトソーシングによって解決できるか」という視点で判断することが重要でしょう。
向いている企業と向いていない企業について、改めてまとめてみます。
給与計算アウトソーシングが向いている企業
次のような課題を抱えている企業は、給与計算アウトソーシングによる効果を得やすいと考えられます。
| 向いている企業 | 主な課題 |
| 給与計算担当者の負担が大きい | 定型業務に時間を取られ、採用や人材育成などに十分な時間を割けない |
| 給与計算が属人化している | 担当者の退職・休職によって業務が滞るリスクがある |
| 従業員数が増加している | 給与計算の処理量が増え、人員の増強が必要になる |
| 雇用形態や給与制度が複雑 | 複数の給与体系や手当、締め日などへの対応負担が大きい |
| 複数の拠点やグループ会社がある | 拠点ごとに異なる業務フローを標準化しにくい |
| 法改正への対応に負担を感じている | 制度変更の確認や給与計算への反映に継続的な専門知識が必要になる |
例えば、特定の担当者に給与計算業務が集中している企業では、その担当者が退職・休職した際に業務を継続できなくなる可能性があります。アウトソーシングによって業務フローを整理・標準化すれば、属人化の解消につなげることができます。
また、従業員数の増加や雇用形態の多様化によって給与計算が複雑になっている企業では、専門的なノウハウや十分な処理体制を持つ委託先を活用することで、社内の業務負担やミスのリスクを軽減できます。
さらには、給与計算に多くの時間を取られて人事担当者が採用や人材育成などの業務に十分な時間を使えていない場合にも、アウトソーシングは有効な選択肢となるでしょう。
給与計算アウトソーシングが向いていない企業
一方で、必ずしも給与計算をアウトソーシングする必要がない企業もあります。例えば、従業員数が少なく給与体系もシンプルで、現在の人員だけで無理なく給与計算を行えている場合には、アウトソーシングによる業務効率化やコスト削減の効果が限定的になることがあります。
また、次のような企業では、まず給与計算システムの導入や業務フローの見直しによって課題を解決できないか検討するのも一つの方法です。
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ただし、「従業員数が少ない企業はアウトソーシングに向いていない」と一概に判断することはできません。担当者が一人しかおらず業務が属人化している場合や、経営者自身が給与計算に多くの時間を使っている場合などは、小規模な企業でも導入効果が期待できます。
重要なのは、企業規模だけで判断するのではなく「現在どの業務にどれくらいの時間がかかっているか」「どのような課題を解決したいのか」「アウトソーシングによってどこまで業務を減らせるのか」を整理したうえで、自社に導入するメリットがあるかどうかを判断することでしょう。
給与計算アウトソーシングならラクラスへ
本記事では、給与計算でアウトソーシング可能な業務の種類やメリット・デメリットをご紹介し、そのうえで業務委託の検討を始める目安や委託先選びのコツ、一般的な費用相場などを解説してまいりました。
もし、給与計算のアウトソーシングを実現して人事業務を高品質化したいとお考えであれば、ラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができコア業務に集中できるようになります。
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また、セキュアな環境で運用されるのはもちろんのこと、常に情報共有をして運用状況を可視化することも心掛けています。そのため、属人化は解消されやすく「人事の課題が解決した」という声も数多くいただいております。
特に大企業を中心として760社86万人以上の受託実績がありますが、もし御社でも人事の課題を抱えており解決方法をお探しでしたら、ぜひわたしたちラクラスへご相談ください。
