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年次有給休暇管理簿とは? 管理方法や罰則について解説

2025.11.13
エクセル表を開いているPCの画面と目覚まし時計、文房具

本記事では、有給休暇管理の目的や重要性、有給付与・取得に関する基本ルールを確認したうえで、管理業務を効率化するための方法を解説していきます。また、有給休暇の管理にも活用できる勤怠管理システムの概要や選び方も紹介します。有給休暇の管理業務を効率化したい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

 

年次有給休暇は、休暇付与のタイミングや日数が従業員ごとに異なることから、人事労務のなかでも特に複雑な業務です。また、2019年4月から年次有給休暇管理簿の作成・保存が義務付けられたことで、人事担当者の負担がさらに増えることになりました。

 

こうしたなかで有給休暇の適切な管理を行うためには、この制度をしっかり理解したうえで業務の効率化を実施していく必要があります。

 

そこで本記事では、有給休暇管理の目的や重要性、有給付与・取得に関する基本ルールを確認したうえで、管理業務を効率化するための方法を解説していきます。後半では、有給休暇の管理にも活用できる勤怠管理システムの概要や選び方も紹介していきます。

 

有給休暇の管理業務を効率化したい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

 

有給休暇管理における2つの目的と重要性

 

有給休暇の管理を適切に実施するためには、「なぜ管理が必要なのか?」という目的を理解することが重要です。また、背景を理解することは管理業務を担う担当者のモチベーション向上にもつながるものです。

 

ここではまず、「法定背景」と「CSR的な側面」の2点から有給休暇管理が重要とされる理由について確認していきます。

 

有給休暇管理が求められる法的背景

 

企業として有給休暇の適切な管理が必要となる大きな理由としては、この制度における会社の「義務」と、労働者側の「権利」の両方を守る必要があるからです。

 

 

【企業側の義務】
一定要件を満たした労働者に対して、年次有給休暇を与えること

【労働者側の権利】
一定要件を満たした場合に、年次有給休暇を取得できること

 

 

労働基準法の第39条では以下のように定めています。

 

 

業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。

 

<引用>:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています<PDF>(厚生労働省)

 

 

有給休暇の場合、「従業員の雇入れ日」や「1年間の所定労働日数」ごとに、付与するタイミングや付与日数が異なります。また、詳細は後述しますが、企業側では要件に該当する労働者について「年次有給休暇の時季指定義務」も果たさなければなりません。

 

なお、2019年4月から、年次有給休暇管理簿の作成および保存も企業側の義務となりました。

 

こうした数々の義務を果たさない場合、法令違反によるペナルティが科せられることになります。ですから企業側においては、自社の義務および従業員の権利を守り続けるためにも法令に則った適切な管理を行うことが求められるでしょう。

 

<参考>:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています<PDF>(厚生労働省)

 

有給休暇の適切な管理と労働CSR

 

近年注目されている“労働CSR”の実現も、有給休暇の適切な管理と関連性が高いトピックです。

 

CSRとは「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」を意味する概念になります。その一部である労働CSRとは、人事・労務の領域で会社が社会的責任を果たしていくことです。

 

<参考>:CSR(企業の社会的責任)(厚生労働省)

 

たとえば、年次有給休暇の取得推進を通じて「従業員の健康を守ること」や「各自のワークライフバランスを尊重すること」は、労働CSRの推進につながるでしょう。また、労働CSRの推進は、心身の不調による従業員の離職や過労死などが起こりにくい組織風土であることの社会的アピールにもなり得るものです。

 

また労働CSRの推進による「健康な従業員の増加」や「病気や価値観の相違による離職者の減少」は、自社の生産性や仕事の質を向上させ、安定経営を実現するうえでも大きなメリットがあるでしょう。

 

近年のビジネス環境は、企業に対して自社の利益を追求するだけでなく、CSRのような社会的責任や社会に貢献する姿勢が強く求められる時代になっています。また新卒などの就活生も、企業のCSR活動などに関心を持つ傾向が高い状況です。

 

こうしたなかで自社に合う人材を獲得し、活躍・定着へとつなげていくためには「法律で定められた年次有給休暇の取得」を中心とした労働CSRに力を入れて、その取り組みの成果や好循環をステークホルダーに発信していく姿勢が求められます。

 

<参考>:働く人を大切にするヒント<PDF>(厚生労働省)

 

有給休暇の付与と取得に関する基本ルール

 

有給休暇の適切な管理をするためには、この制度の基本的な仕組みやルールの理解が必要です。ここでは有給休暇における付与と取得の部分から、法律で定められたルールを5つほど確認していきましょう。

 

(1)有給休暇の発生要件(付与要件)

 

有給休暇は、「雇入れ日から6ヵ月の継続勤務」をした労働者が、「全労働日の8割以上に出勤したタイミング」で発生するものです。

 

ここでいう“継続勤務”は、勤務実態に即して実質的に判断されます。たとえば、定年退職になった従業員が嘱託で再雇用された場合も、継続勤務として扱うケースが多くあります。

 

なお、発生した有給休暇は「与えた日から2年」で時効となります。

 

(2)有給休暇の付与日数

 

有給休暇の付与日数は、「通常の労働者」と「所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者」では以下のように異なります。

 

【①通常の労働者の付与日数】

通常労働者の有給付与日数

 

【②所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者】

所定労働日数4日以下の労働者への有給付与日数

<引用>:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています(厚生労働省)

 

(3)有給休暇の取得時季

 

有給休暇を取得する日は、従業員本人の指定で決まります。

 

会社側としては、本人から指定された日に与えるのが原則です。ただし、その日に有給休暇を取得されると事業が正常運営できなくなる場合には、会社側に休暇日を変える権利が認められています。この権利のことを、『時季変更権』と呼びます。

 

時季変更権の行使が認められるのは、たとえば多くの従業員が同じ日に休暇指定をしていて「お店が回らなくなる」とか「オペレーションできる人が誰もいない」といったケースです。一方で、単なる業務多忙を理由とした時季変更は認められません。

 

(4)年5日の時季指定義務

 

前述したとおり、有給休暇の原則は労働者が請求する時季に与えるものです。ただし、年10日以上の付与が行われている労働者については、年5日について会社側で時季を指定して取得させる必要があります。

 

この場合、労働者側に取得時季の意見をヒアリングしたうえで、相手の意見を尊重して時季を決定する流れです。5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定は不要となります。

 

(5)有給休暇の計画的付与と時間単位年休

 

労使協定を締結した場合、有給休暇の付与日数のうち5日を超える部分について、計画的に休暇取得日を割り振ることが可能です。

 

また、労使協定を結んだ場合、原則は1日単位の休暇を1時間単位で与えられます。ただし、この場合の上限は1年で5日分までとなります。

 

年次有給休暇管理簿の概要と基本ルール

 

年次有給休暇管理簿は、2019年4月より作成・保存が義務付けられたものです。従業員に有給休暇を付与する場合、この管理簿の作成・保存も適切に行う必要があります。ここでは、年次有給休暇管理簿の概要と基本的なルールを確認しましょう。

 

年次有給休暇管理簿の作成対象

 

年次有給休暇の管理簿は、年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者について作成すべきもので、作成対象には管理監督者も含まれます。

 

管理監督者とは、労働基準法の規制の枠を超えて活動をせざるをえない責任・権限などを有した経営層などのことです。管理監督者の該当範囲は、企業ごとに異なります。詳細については、厚生労働省が公開している以下の資料をチェックしてください。

 

<参考>:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために<PDF>(厚生労働省)

 

年次有給休暇管理簿の必須記載事項

年次有給休暇管理簿の必須記載事項は、以下の3つです。

 

 

  • 年次有給休暇の取得日
  • 年次有給休暇の付与日
  • 年次有給休暇の日数

 

 

決められた様式がないため、これらの3項目を盛り込む形で従業員ごとに作成します。なお、厚生労働省・山口労働局では、以下のページにて年次有給休暇管理簿の作成例をExcelで示しています。参考にしてみてください。

 

<参考>:年次有給休暇管理簿について(厚生労働省 山口労働局)

<参考>:ととのえましょう 法定帳簿|労働基準法で規定された代表的な4帳簿<PDF>(出雲労働基準監督署)

 

年次有給休暇管理簿の保存期間と管理方法

 

年次有給休暇管理簿は、労働者に最後に年次有給休暇を与えた日から3年間の保存が必要です。ただし、必要なときにいつでも出力できる仕組みになっていれば、Excelや人事労務システム上で管理することも可能となります。

 

<参考>:年次有給休暇管理簿について(厚生労働省 山口労働局)

 

なお、年次有給休暇管理簿は、「法定四帳簿(法定三帳簿+年次有給休暇管理簿)」の一種でもあります。法定帳簿について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もチェックしてください。

 

【関連記事】法定三帳簿とは?必須記載項目や作成方法、保存期間などを詳しく解説

 

有給休暇管理の罰則とリスク

 

有給休暇の適切な付与および管理が行われていないことが発覚した場合、会社側にペナルティが科せられる可能性があります。
ここでは、有給休暇に関連する3つの罰則と、適切な管理を行わないことによるリスクを見ていきましょう。

 

有給休暇に関する3つの罰則

有給休暇には、「有給休暇取得の妨害に関する罰則」と「管理簿作成・保存の怠慢による罰則」に関する3つのペナルティがあります。

 

まず、企業が合理的な理由がないなかで有給休暇の付与を拒絶・妨害した場合、労働基準法39条の違反で「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。また時季指定を行う場合、就業規則への記載も必要です。就業規則にそのことが書かれていない場合、労働基準法第89条の違反で「30万円以下の罰金」になります。

 

<参考>:労働基準法第39条(e-GOV法令検索)

<参考>:労働基準法第89条(e-GOV法令検索)

 

次に管理簿作成・保存を適切に行わなかった場合は、労働基準法第120条にもとづき「30万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

 

<参考>:労働基準法第120条(e-GOV法令検索)

 

ただしこれらの刑事罰は、上記の問題発覚後すぐに科せられるわけではありません。一般的には、問題の発覚後にまず労働基準監督官による臨検調査や是正勧告の行政指導を実施します。そこで行政指導に従わなかった場合、労働基準法違反にもとづく刑事罰になるという流れが多いでしょう。

 

違反が疑われる場合に行われる臨検の概要や流れが知りたい方は、以下のページをぜひチェックしてください。

 

【関連記事】法定三帳簿とは?必須記載項目や作成方法、保存期間などを詳しく解説

 

適切な有給休暇管理を行わないことによるリスク

 

「雇入れの日から6ヵ月の継続勤務」+「全労働日の8割以上出勤」という適切なタイミングで有給休暇を発生させ、本人の求めに応じた付与をしない場合、人的資本経営の支障ともいえるいくつかのリスクが起こりやすくなります。

 

リスク(1)従業員の不信感や不満が生じやすくなる

有給休暇の取得は、労働者の権利です。そこで従業員からの指定日に休暇の付与を行えない場合、「なぜ権利を行使できないの?」といった疑問や違和感、不信感などが生じやすくなります。

 

また、たとえば慢性的な人手不足が生じているなかで無理に年次有給休暇の時季指定義務を行使すれば、休暇中に処理できない仕事が溜まってしまい、場合によっては休息の目的が果たされず逆効果になる可能性もあります。

 

有給休暇の取得や時季指定にともなう従業員の不信感や負担を軽減するためには、年次有給休暇の適切な管理はもちろんのこと、希望したときに無理なく休める環境をつくることも重要です。

 

リスク(2)個人および組織の生産性が低下する

有給取得の適切なタイミングでの付与ができない状態が続くと、従業員の不信感や不満からモチベーションが低下します。

 

また、そもそも年次有給休暇は、労働者が心身の疲労を回復し、明日への活力と創造力を養い、ゆとりある日々を実現するための仕組みです。そこで本人が望むタイミングでの休暇取得ができない場合、心身に溜まった疲労の回復や、健康維持に不可欠な定期通院などが難しくなるかもしれません。

 

こうした理由から適切なケアを行えず、疲労や体調不良が深刻化した場合、日々の仕事に対してパフォーマンスを最大化することが難しくなる可能性もあるでしょう。
そして、各従業員のモチベーションおよびパフォーマンスが低下すれば、組織全体の生産性や仕事のスピード、質が低下しやすくなります。

 

リスク(3)休職者や離職者の増加

本人の希望や、会社側で時季指定義務を行使したいタイミングで休めない環境の場合、「急に会社を休む人」や「急に会社を辞めざるを得ない人」が増加しやすくなります。それはつまり、人的リソースの計画的な活用ができないことを意味するでしょう。

 

なお、厚生労働省では、2013年に実施された「従業員の労働時間と休業に関する調査」のなかで、「社員に週60時間以上の長時間労働が続いた場合、一般的に、当人ないし貴社にどのような影響が生じると思うか」という質問をしています。その回答は、以下のとおりです。

 

長時間労働の悪影響の棒グラフ

 

<引用>:Ⅰ.長時間労働の抑制と年次有給休暇取得の必要性(厚生労働省)

 

上記の質問は長時間労働によって想定されるリスクに関するものですが、「従業員に適切な休息を与えられない」や「心身のケアが難しくなる」という点では、希望どおりの休暇取得ができない状況に類似する側面はあるでしょう。

 

有給取得の適切な管理および必要なときに休める環境整備するうえでは、上記のような回答結果を防ぐ目的で施策を設計していくことも重要です。

 

オフィスで頭を抱える女性社員

有給休暇管理の効率化手法

 

有給休暇は、数ある労務管理のなかでも特に複雑な制度です。この仕組みを適切に運用するためには、いくつかの工夫をする必要があります。ここでは、多くの企業で導入されている2つの効率化手法を紹介しましょう。

 

手法(1)
基準日の統一(年次有給休暇の斉一的な取り扱い)

 

まず、有給発生の管理をシンプルにするうえで一つの選択肢になるのが、休暇の付与日を繰り上げるイメージで統一する方法です。

 

たとえば、以下のように従業員の採用を頻繁に行っている場合、法律どおりの運用を行うと、発生および時効の管理が以下のようにとても複雑です。

 

 

【Aさん(2025年4月1日入社)】

  • 2025年10月1日に「10日分を付与」
  • 2026年10月1日に「11日分を付与」
  • 2027年10月1日に「10日分が時効」+「12日分を付与」

 

【Bさん(2025年10月1日入社)】

  • 2026年4月1日に「10日分を付与」
  • 2027年4月1日に「11日分を付与」
  • 028年4月1日に「10日分が時効」+「12日分を付与」

 

 

そこでたとえば、全社員の有給休暇付与日を「4月1日」に統一するとどうでしょうか。

 

この運用の場合、10月1日~翌3月31日までに入社した従業員については、4月1日に1回目の有給休暇を「繰り上げ」で付与してしまいます。そうすることで、法定要件を満たしながら有給発生の手続きを単純化できるわけです。

 

ただし、上記の運用でたとえば3月下旬入社の従業員に対して、有給休暇を4月1日に付与した場合、入社から1ヵ月経過しないタイミングで10日の休暇が取れることになってしまいます。

 

このあたりの不公平感を解消するためには、有給休暇の起算日を「4月1日」と「10月1日」の年2回にするなどの工夫が必要かもしれません。

 

東京労働局の以下の資料(5ページ)には、具体的な事例が掲載されています。ぜひチェックしてみてください。

 

<参考>:しっかりマスター 労働基準法 有給休暇編(厚生労働省 東京労働局)

 

手法(2)勤怠管理システムの導入

 

近年のビジネス環境では、転職が一般化しており人事労務の業務量が増大しやすくなっています。こうしたなかで有給休暇の発生や取得回数などを適切に管理していくためには、勤怠管理システムの導入を検討するのも一つの方法です。

 

勤怠管理システムとは、従業員は出退勤をスマートフォンやパソコンなどから打刻・入力し、そのデータを簡単に集計・管理できるシステムの総称です。具体的な機能はサービスごと異なりますが、有給休暇の管理機能がついたシステムを導入すれば、休暇の付与も自動で行えることが多いでしょう。

 

また、多くの勤怠管理システムには、各種アラート機能もついています。
たとえば、ある部署で業務が忙しく、年5日の時季指定義務をなかなか行使できなかったり、使えないまま時効になる有給休暇が多かったりする場合、その旨がアラートや集計表で確認できる仕組みがあればよいでしょう。

 

そのような情報をもとに上長や本人へ迅速にヒアリングを行えば、法令違反の防止にもつながります。

 

有給休暇管理ソフト(勤怠管理システム)の選び方

 

勤怠管理システムには、さまざまな種類があります。有給休暇の管理を効率化するために新たなシステム導入を行う場合、各種類の特徴を理解したうえで自社のニーズに合うものを選ぶことが重要です。

 

ここでは、費用対効果の高い有給休暇管理ソフトを導入するために行うべき作業と、このカテゴリのソフト選びで注意すべきポイントを紹介します。

 

自社の課題および導入要件を明確化する

 

自社にマッチするソフトウェアを導入するためには、まず「新しいサービスを使って解決したい課題」と「自社の環境や予算」の整理が必要です。

 

こうした作業を最初に行うべき理由は、有給休暇の管理に使えるソフトウェアには「有給管理に特化したもの」から「人事労務全域をカバーしているもの」まで幅広い種類があるからです。

 

たとえば、「有給休暇の管理が複雑すぎるから、そこだけをソフトウェア上で行いたい」という場合、有給管理に特化したサービスを選ぶことで導入コストをかなり抑えられます。

 

これに対して、有給管理のソフトウェアを導入するタイミングで人事労務の業務全般をIT化したいと考えた場合、システムの規模やデータ移行にかかる手間、時間、コストは非常に大きなものになってしまうはずです。

 

さまざまなサービスのなかから、自社が抱える等身大の課題に合ったものを選ぶためには、早い段階で「ソフトウェア導入で何を解決したいのか?」とか「そのために必要な機能はどういうものか?」といったことを洗い出し、ベンダー側に伝える準備をする必要があります。

 

有給管理ソフト選びの際に確認すべきポイント

 

勤怠管理システムの機能やサービス範囲は、ベンダーごとに異なります。そのなかで、自社にとって費用対効果や満足度が高い仕組みを選ぶためには、いくつかのポイントを見ていく必要があるでしょう。
5つを挙げて解説します。

 

ポイント(1)サービスの提供形態

勤怠管理システム(有給休暇管理ソフト)の提供形態は、主にクラウド型とオンプレミス型の2種類です。

 

クラウド型の場合、インターネット環境とスマートフォンやPCなどのデバイスがあれば自宅や出張先などからデータ入力が可能となります。手軽に始めやすく法改正時のアップデートも容易であることから、近年における勤怠管理システムの主流になりつつある種類です。

 

オンプレミス型は、自社サーバーにソフトウェアをインストールして管理するものです。この仕組みのサービスを導入する場合、自社でのセキュリティ管理を行える環境や専門人材が必要でしょう。

 

ポイント(2)打刻方法

出勤・退勤などの打刻にも、以下のようにさまざまな種類があります。

 

 

  • Web打刻
  • モバイルGPS打刻
  • ICカード打刻
  • 生体認証打刻
  • 入退室管理システム連動打刻

 

 

比較的簡単に導入できるのは、Web打刻やモバイルGPS打刻です。

 

モバイルGPS打刻の場合、出退勤の打刻をしたタイミングで「現場や客先に到着しているか?」などの確認も行えます。管理する側としては不正防止のメリットがありますが、従業員にとっては心理的負担が生じやすい仕組みです。場合によっては配慮が必要になるケースもあるでしょう。

 

これに対して顧客の重要データを取り扱うIoT企業やデータセンターなどでは、ICカードを使った入退室管理システム連動打刻が導入されていることが多いです。こうしたシステムは、オフィスの防犯・防災などとも連動したトータルセキュリティサービスになります。

 

これだけ大規模な仕組みを導入するためには、建物や設備の状況や自社のセキュリティ対策との兼ね合いも見ていく必要があるでしょう。

 

ポイント(3)他システムとの連携

勤怠管理システムから打刻された出退勤データは、毎月の給与計算でも活用できるものです。

 

たとえば現在、何らかの給与計算システムを使っている場合、新たに導入する勤怠管理システムから取り出したデータを給与計算システム側で活用できるようにすれば業務効率化がさらに進みます。また、同じベンダーのサービスを使えば、従業員が入力したデータを給与計算時にそのまま活用(連携)できるかもしれません。

 

人事部門における中長期的な業務効率化を考えた場合、「勤怠管理システムのデータを他業務で活用するのか?」とか「活用する場合、データ連携や移行はどうするのか?」といった広い視点も必要でしょう。

 

なお、給与計算システムについての詳しい情報については下記の記事でまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

 

【関連記事】給与計算システムとは? 導入メリットや選び方、費用対効果を高めるポイントを解説

 

ポイント(4)操作性

勤怠管理システムは、日々の出退勤打刻や有給休暇の申請などですべての従業員が使うものです。そのため、このカテゴリのサービスを導入する場合、全従業員が悩むことなく打刻できる操作性の高さも重要となります。

 

また、システムの不具合や入力トラブルなどへの対処を迅速に行うためには、サポート体制が充実しているベンダーを選ぶことも大事なポイントになるでしょう。

 

ポイント(5)セキュリティ対策

クラウド型のサービスを使う場合、従業員が入力した勤怠データはベンダー側のサーバーやデータセンターに保存されることになります。それはつまり、自社のデータを外部に預けるということです。

 

そのような状況で大事なデータを守るためには、以下のようなセキュリティ対策を適切に行うサービスを選ぶ必要があるでしょう。

 

 

  • 通信の暗号化
  • 不審なアクセスを遮断
  • 障害時のデータ復旧が容易
  • 脆弱性の調査・診断 など

 

 

今後の有給休暇管理の展望

 

最後に、有給休暇管理における今後の展望を考えてみましょう。今後の展望を考えるうえで大事な鍵になるのが、以下の4つのトピックです。

 

 

  • 転職の一般化
  • 働き方の多様化
  • 戦略人事の重要化
  • HRテックの進化

 

 

まず、近年のビジネス環境では、日本企業を古くから支えてきた終身雇用と年功序列の仕組みが崩壊し、各労働者が自らのキャリア実現に向けて転職を繰り返すことが当たり前の時代になっています。そのため、人事労務担当者が担う新人の受け入れや退職などの手続きにかかる負担が大きくなっているわけです。

 

また、さまざまな雇用形態や働き方、属性の従業員が増えることは、人事労務業務の複雑さが高まることにも繋がっているでしょう。

 

その一方で、最近の人事領域では「戦略人事の重要性」に高い関心が集まるようになっています。戦略人事とは、企業の経営戦略と人事戦略を連携させ、適切な人材マネジメントを通じて企業の持続的成長や競争力強化につなげる取り組みです。

 

戦略人事をわかりやすく言い換えると、「攻めの人事」と表現できるかもしれません。

たとえば、新卒一括採用が一般的だった時代は、新卒の採用活動に毎年決まった時期に実施するルーティーン業務に近い側面がありました。一方で最近の新卒市場には、早い年次からのインターンシップや秋採用なども行われるようになり、状況に応じた施策の実施や見直しが求められています。

 

そうしたなかで人事部門が「攻めの仕事」に多くのリソースとエネルギーを使うためには、便利な勤怠管理システムなどを使って有給休暇管理などの業務を効率化する必要があります。

 

そこで注目されているのが、「HRテック」です。

クラウドやビッグデータ、AI(人工知能)などのテクノロジーが急速に進化したことで、人事課題を解決に導くHRテックの市場にもさまざまなサービスが登場しています。

 

こうした仕組みをうまく活用し、有給休暇の管理業務などを効率化することは、自社の持続的成長や競合優位性を高めるうえでのファーストステップになるでしょう。

 

人事労務のアウトソーシングならラクラスへ

 

本記事では、有給休暇管理の目的や重要性、有給付与・取得に関する基本ルールを確認したうえで、管理業務を効率化するための方法を解説してきます。有給休暇の管理業務は複雑なため、人事部のなかでも負担に感じている方は多いのではないでしょうか。

 

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