障害者雇用率の計算方法とは? 法定雇用率の遵守につながる採用施策も解説

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障害者マークと手のひら

本記事では、障害者雇用率の算出に関係する制度の概要や計算方法、障害者のカウント基準などを詳しく解説します。また、法定雇用率を遵守しない場合のリスク、障害者雇用の促進に使える制度や仕組みについても紹介します。障害者雇用率について理解したい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
監修者:社会保険労務士 伊藤大祐

 

近年のビジネス環境では、各企業が自社の障害者雇用率を上げることの重要性が特に高まっています。また、そのような環境で適切な障害者雇用の施策を実施していくためには、人事労務担当者が自社の障害者雇用率を定期的に分析する姿勢を持つことが大切です。

 

そこで本記事では、障害者雇用率の算出に関係する制度の概要や計算方法、障害者のカウント基準などを詳しく解説します。記事の後半では、実践編として障害者雇用率の計算シミュレーションや、法定雇用率を遵守しない場合のリスク、障害者雇用の促進に使える制度や仕組みについても紹介していきます。

 

自社の障害者雇用率を高めるために計算方法や施策などをしっかりと理解したい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

 

障害者雇用率制度とはなにか

 

障害者雇用率制度とは、障害者の雇用の促進等に関する法律で定められたものです。具体的には、事業主に対して、「常時雇用する労働者に障害者雇用率を乗じて得た数以上の障害者」を雇用する義務が課されています。

 

この制度により事業主は、自社の障害者雇用状況(毎年6月1日時点)を算定し、ハローワークに対して報告しなければなりません。これから本記事で紹介する計算方法などは、自社の現状把握および報告を行ううえで不可欠なものとなります。

 

<参考>:7.資料編 (1)障害者雇用率制度(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)

 

障害者の法定雇用率とは

 

自社における障害者の割合が適切かどうかを判断するうえでの基準となるのが、法定雇用率です。

 

障害者雇用促進法43条第1項では、従業員が一定数以上の規模の事業主に対して、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「“法定雇用率”以上にすること」を義務付けています。

 

<参考>:事業主の方へ(厚生労働省)

 

【事業主の種類別】障害者の法定雇用率

 

2026年3月時点における民間企業の法定雇用率は、「従業員数40人以上で2.5%」です。また、障害者の法定雇用率は国・地方公共団体等、都道府県等の教育委員会でも定められています。各数字をまとめると以下のとおりになります。

 

  民間企業 国・地方公共団体等 都道府県等の
教育委員会
障害者の
法定雇用率
2.5% 2.8% 2.7%
従業員数 40人以上 職員数は問わない

 

<出典>:障害者雇用率制度について<PDF>(厚生労働省)

 

法定雇用率は、1976年の制度創設以降、段階的に引き上げられてきました。直近では2024年4月に2.3%から2.5%に引き上げられています。また、2026年7月1日からは以下のようになることが決定しています。

 

  民間企業 国・地方公共団体等 都道府県等の
教育委員会
障害者の
法定雇用率
2.7% 3.0% 2.9%
従業員数 37.5人 職員数は問わない

 

<出典>:障害者雇用率制度について(厚生労働省)

 

民間企業が複数事業所を持つ場合の考え方

 

民間企業の障害者雇用率は、企業全体で見ていきます。

 

そのため、たとえば各事業所の従業員数が以下のとおりの場合、企業全体で考えたときに法律が義務付ける最低ライン(40人)を超えていますから、1人以上の障害者を雇用しなければならないことになります。

 

 

【A事業所】20人

【B事業所】23人

【C事業所】5人

 

 

ただ、上記のケースでは「A・B・C事業所のどこかで1人以上の障害者を雇用すれば、法定雇用率が充足している」と判断されます。

 

民間企業がグループ会社を持つ場合の考え方

 

親会社に対していくつかの関係子会社を持つグループ企業(グループ会社)の場合は、以下の要件に該当すると「企業グループ算定特例」の対象となります。

 

親会社・子会社 認定要件
親会社 ①親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること。
(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)
② 親会社が障害者雇用推進者を選任していること。
関係子会社 ①各子会社の規模に応じて、それぞれ常用労働者数に1.2%を乗じた数(小数点以下は切り捨て)以上の障害者を雇用していること。ただし、中小企業については、
次に掲げる数以上の障害者を雇用していること。
ア:常用労働者数167人未満 要件なし
イ:常用労働者数167人以上250人未満 障害者1人
ウ:常用労働者数250人以上300人以下 障害者2人
②障害者の雇用管理を適正に行うことができると認められること(具体的には、障害者のための施設の改善、
選任の指導員の配置等)又は他の子会社が雇用する障害者の行う業務に関し、人的関係若しくは営業上の関係が緊密であること。
③その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること。

 

<出典>:「企業グループ算定特例」(関係子会社特例)の概要<PDF>(厚生労働省)

 

企業グループ算定特例を使うと、親会社・子会社のすべてを含むグループ全体で障害者雇用率を算定できます。

 

また、グループ企業のなかに障害者が就労しやすい事業環境を持つ子会社がある場合には、この制度を活用することでグループ全体での障害者雇用の促進や業務効率化を進めやすくなるでしょう。

 

障害者雇用率の計算方法とは

 

自社における障害者雇用率の算定には、さまざまなルールや注意点があります。この章では、障害者雇用率の算出に必要な前提ルールと計算式を確認したうえで、2つの事例でのシミュレーションをしてみましょう。

 

対象となる障害者の種類・程度

 

障害者を雇い入れ、自社の障害者雇用率を上げるうえで重要となるのが、障害者雇用率制度において「どういった人が障害者に該当するのか?」という点です。現行制度では、以下の要件に該当する身体障害者・知的障害者・精神障害者がカウント対象となります。

 

障害者の種類 程度や判断基準
身体障害者 身体障害者福祉法による「身体障害者手帳」を所持している方。手帳には、1~7級という形で障害の程度による等級が記載されている。
知的障害者 都道府県知事等が発行する「療育手帳」を所持している方。発行自治体によっては「愛の手帳」や「みどりの手帳」といった名称の場合がある。
手帳には障害の程度ごとにA「最重度」「重度」、B「中度」、C「軽度」の記載がある。等級も「1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)」など、自治体ごとに表記が異なるケースもある。
おおむね3~4つの等級区分に分かれている。
精神障害者 精神保健福祉法による「精神障害者保健福祉手帳」を所持している方。障害の程度によって等級が1~3級で記載されている。

 

対象障害者のカウントルール

 

次に知る必要があるのが、「どういった障害者を雇用すると、何人としてカウント(算定)できるのか?」ということです。障害者雇用率制度では、障害の種類・障害の重さ・週の所定労働時間を基準に算定できる数字を定めています。

 

具体的な数字については、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が示す以下の情報のとおりです。

 

  週の所定労働時間
30時間以上
(常時雇用)
20時間以上
30時間未満
(短時間労働)
10時間以上
20時間未満
(特定短時間労働)
身体障害者 重度以外 1人を1人
として算定
1人を0.5人
として算定
–
重度 1人を2人
として算定
1人を1人
として算定
1人を0.5人
として算定
知的障害者 重度以外 1人を1人
として算定
1人を0.5人
として算定
–
重度 1人を2人
として算定
1人を1人
として算定
1人を0.5人
として算定
精神障害者   1人を1人
として算定
1人を1人
として算定(※)
1人を0.5人
として算定

 

<出典>:7.資料編 (1)障害者雇用率制度(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)

 

上記について簡単に説明すると、原則は「常時雇用労働者は1人分」「短時間労働者は0.5人分」としてカウントします。

 

ただし、障害の程度が重度であったり短時間労働の要件に該当したりした場合は、カウントの考え方が変わります。また、このカウントルールには、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満となる「特定短時間労働者」というカテゴリもあります。

 

具体的には、たとえば普通の身体障害者をフルタイムで常時雇用した場合、「1人を1人分」として算定します。その身体障害者が重度の場合、「1人を2人分」としてカウントします。つまり、実際は1人の重度身体障害者を雇っているにも関わらず、数値上では2人の障害者を雇い入れていることになります。

 

ただし、その障害者が20時間以上30時間未満や、10時間以上20時間未満といった短時間労働となった場合、普通の身体障害者であれば「1人が0.5人分」や、重度の身体障害者なら「1人が1人分(短時間労働の場合)」となります。

 

なお、精神障害者の“20時間以上30時間未満の場合”のところに「※」を入れていますが、ここは雇い入れ日からの期間等に関わらず「1人を1人分とみなすこと」が当面の措置として定められている形です。

 

 

障害者雇用率の考え方と算定方法

 

まず整理しておきたいのは、「法定雇用率」と「企業の実雇用率」は考え方が異なるという点です。

 

法定雇用率(2.5%など)は、国が労働市場全体の障害者数や失業状況などを踏まえて設定している基準です。一方、各企業が自社の雇用状況を把握する際には、実際に雇用している障害者数と常用労働者数をもとに「実雇用率」や「雇用義務数」を算定します。

 

企業実務では、「自社は何人雇用する必要があるのか」を把握することが重要になります。そのため、以下では“雇用義務数”の算定方法を確認していきましょう。

 

<参考>:障害者雇用率制度について<PDF>(厚生労働省)

 

自社で雇用すべき障害者数を求める計算式

 

自社が実際に雇用すべき障害者数(法定雇用障害者数)は、次の式で算出します。

 

法定雇用障害者数(雇用義務数)
=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×法定雇用率

 

※2026年3月時点の民間企業の法定雇用率:2.5%

 

ここでいう常用労働者・短時間労働者は、以下の区分です。

 

 

【常用労働者】週の所定労働時間が30時間以上

【短時間労働者】週の所定労働時間が20時間以上30時間未満

 

 

したがって、たとえば「週2日×1日3時間」など、週20時間未満のパート・アルバイトは算定基礎となる労働者数に含めません。
なお、計算結果に小数点以下の端数が生じた場合は、端数を切り捨てた数が雇用義務数となります。

 

障害者雇用数の計算シミュレーション

 

それでは、「A社:従業員数110人」と「B社:従業員数300人」の民間企業について、各企業が雇用すべき障害者数を計算してみましょう。

 

  • A社:従業員数110人の企業で雇用すべき障害者数

A社が雇用すべき障害者数は、以下の数字とさきほど紹介した法定雇用障害者数の計算式を使って算出します。

 

 

  • 従業員数:110人(常勤50名・短時間60名)
  • 法定雇用率:2.5%

 

<計算式>

自社の法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)
 =(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率

 

まず、算定基礎となる労働者数を求めます。

50人+(60人×0.5)=80人

 

次に、法定雇用率を掛けます。(2026年3月現在は2.5%)

80×0.025=2.0

 

 

ということで、冒頭の計算式に当てはめると、以下の結果になります。

 

 

(50+60×0.5)×0.025=2.0

 

 

端数は発生していないため、A社は2人以上の障害者を雇用する必要があると考えます。

 

  • B社:従業員数800人の企業で雇用すべき障害者数

続いて、以下のB社が雇用すべき障害者数をシミュレーションしましょう。

 

 

  • 従業員数:800人(常勤630名・短時間170名)
  • 法定雇用率:2.5%

 

まず、算定基礎となる労働者数を求めます。

630人+(170人×0.5)=715人

 

次に、法定雇用率を掛けます。(2026年3月現在は2.5%)

715×0.025=17.875

 

 

小数点以下を切り捨てるため、

B社は17人以上の障害者を雇用する必要がある


と算定できます。

 

補足:重度障害者などのカウント方法

 

ここで算出した「雇用義務数」に対して、実際に雇用している障害者数と比較して、法定雇用率を満たしているかを確認します。なお、障害者雇用率制度では、次のようなルールがあります。

 

  • 重度障害者は1人を2人として算定
  • 短時間労働者は0.5人として算定

 

そのため、実際の雇用人数と算定上の人数が一致しない場合がある点にも注意が必要です。

 

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法定雇用率を超えて障害者を雇用する
メリット

 

企業が多くの障害者を雇い入れることには、さまざまな負担が生じる側面があります。
しかし、それらを解消して法定雇用率を超えた障害者雇用を行うと、多くのメリットが期待できます。ここでは3つを挙げて解説しましょう。

 

メリット(1)障害者雇用調整金の対象になる

 

常時雇用する労働者数が100人を超える企業の場合、障害者の法定雇用率を超えた雇用を行えているかどうかで、以下の「納付金5万円を支払う側」と「調整金2万9千円が支給される側」のどちらに該当するかが変わります。

 

 

【障害者雇用納付金】
障害者法定雇用率を未達成の場合は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人当たり月額5万円を納付する

 

【障害者雇用調整金】
障害者法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合は、障害者法定雇用率を超えて雇用している障害者数に応じて1人当たり月額2万9千円を事業主の申請にもとづき支給する。

 

 

常時100人以上の労働者を雇用する場合、これらの要件に該当する場合は納付金負担の回避に加え、調整金の対象となる可能性があります。

 

障害者雇用納付金と障害者雇用調整金の詳細は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構のサイトで詳しく解説されています。ぜひ確認しておいてください。

 

<参考>:障害者雇用納付金制度の概要(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)

 

メリット(2)報奨金制度の対象になる

 

国では、常時雇用する労働者数が100人以下の事業主に対しても、一定要件以上の障害者雇用を行った場合に支給する報奨金制度を設けています。

 

具体的な要件は、各月の常時雇用している障害者の数の年度間合計数が一定数を超えた状態の場合です。以下のいずれかに該当すれば、一定数を超えた障害者数に応じて1人あたり月額2万1千円が事業主の申請にもとづき支給されます。

 

 

  • 各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数
  • 72人

 

 

この制度では、上記2要件の「多い数字」で見ていきます。報奨金制度の詳細は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構のサイトで詳しく解説されています。ぜひ確認してください。

 

<参考>:障害者雇用納付金制度の概要(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)

 

メリット(3)競合に対する優位性の向上

 

企業が多くの障害者を雇用する姿勢は、「ダイバーシティ経営の推進」や「ESGやCSRといった社会的責任・貢献」の部分で競合に対して優位性を高めるアピール材料にもなり得ます。

 

また、近年のビジネス環境では、優秀な新卒人材が企業の社会貢献的な取り組みに関心を持つ傾向が高い状況です。法定雇用率をクリアして多くの障害者雇用に貢献している姿勢を見せることは、社会貢献意識が高い新卒人材への強力なアピールになるでしょう。

 

<参考>:ダイバーシティ経営の推進(経済産業省)

<参考>:CSR(企業の社会的責任)(厚生労働省)

 

車いすに乗った男性者員が机の上でPCを操作している

法定障害者雇用数に達しない場合の行政指導リスク

 

従業員数40人以上の企業では、国が求める義務を果たすために、法定雇用率2.5%以上を目指して障害者雇用を行わなければなりません。仮に特定要件に該当する企業が法定雇用率をクリアできない場合、先述したとおり以下のようなデメリットが生じてしまいます。

 

 

  • 障害者雇用納付金の納付が発生する
  • 障害者雇用調整金や報奨金を受給できない

 

 

では、上記のようなお金の問題がクリアさえできれば、法定雇用率を遵守する必要はないのでしょうか。この章では、企業が法定雇用率に達しない場合の「行政指導リスク」について、2つを挙げて見ていきましょう。

 

リスク(1)障害者雇用納付金を納付すれば「義務」がなくなるわけではない

 

前提知識としておさえておきたいのが、1人当たり月額5万円の障害者雇用納付金を納付していれば法定雇用率を遵守する義務を免れるというわけではない、ということです。

 

企業が何らかの理由から法定雇用率をクリアできない状況となり、障害者雇用納付金を支払うことになった場合も、「納付金を支払ったから障害者雇用はこれでOK」ではなく「支払いをしなくても良い障害者雇用の仕組みづくり」を継続的に行わなければなりません。

 

リスク(2)障害者の法定雇用率が下回った場合の行政指導

 

障害者雇用促進法では、障害者の雇用割合が法定雇用率を下回っている企業に対して、公共職業安定所長が「障害者の雇入れに関する計画」の作成を命ぜられることを定めています。この仕組みは、「障害者雇入れ計画作成命令制度」と呼ばれるものです。

 

この命令の発出基準は、以下のいずれかとなります。

 

a. 実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ不足数が5人以上の場合
b. 実雇用率に関係なく、不足数10人以上の場合
c. 雇用義務数が3人から4人の企業(労働者数150人~249人規模企業)
    であって雇用障害者数0人

 

<出典>:障害者の雇用に向けて<PDF>(ハローワーク飯田橋 雇用指導部門)

 

上記の基準に該当した場合、原則として以下の流れで行政指導が進んでいきます。

 

  実施事項 概要
1 雇入れ計画
作成命令発出
命令発出後の1月1日から2年間の期間について、障害者の雇入れ計画を作成します。実際の雇入れも、作成した計画にもとづき進めます。
2 雇入れ計画書提出
(2年間)
3 雇入れ計画の実施
(1月1日始期)
4 適正実施勧告 障害者の雇入れ計画の作成を怠っている等の場合、公共職業安定所長による適正な実施の勧告が行われる場合があります。
5 雇入れ計画の
期間満了
計画にもとづく障害者雇用が進まず、以下に該当した場合、労働局や厚生労働省による9ヵ月間の特別指導になります。

  • 実雇用率が最終年の前年6月1日現在の全国平均実雇用率未満である
  • 不足数が10人以上である
6 特別指導
(9ヵ月)
7 企業名公表 特別指導を行っても改善が進まない場合、障害者雇用推進法第47条にもとづき企業名の公表となります。公表後も、障害者雇入れ計画が終了するまで指導は続きます。それでも障害者雇用が進まない場合、再公表することもあります。

 

<出典>:障害者の雇用に向けて<PDF>(ハローワーク飯田橋 雇用指導部門)

 

法定雇用率を超えた障害者雇用に向けて実践すべきこと

 

法定雇用率を超えた障害者雇用をするためには、社内環境整備はもちろんのこと自社の採用力を高める必要があります。もし、費用や採用力の問題から障害者雇用がうまくいかない現状がある場合は、国や民間企業などが用意する仕組みを活用するのもよいでしょう。

 

ここでは、障害者雇用の促進に向けて活用したい4つの仕組みを紹介していきます。

 

(1)障害者雇用の助成金を活用する

 

国では、障害者雇用に力を入れる事業主のために、助成金や税制優遇などの支援制度を用意しています。例として、ハローワーク飯田橋のサイトで公開されている助成金(2026年3月時点)は、以下のとおりです。

 

助成金名 概要 金額
特定求職者雇用
開発助成金
障害者などの就職が特に困難な者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して賃金の一部を助成 【身体・知的障害者(重度以外)】
1人当たり50万円(中小企業120万円※)短時間労働者は30万円(中小企業は80万円※)
【身体・知的障害者(重度又は45歳以上)、精神障害者】1人当たり100万円(中小企業は240万円)短時間労働者は30万円(中小企業は80万円※)
※制度の変更があったため、中小企業については平成27年4月30日までの雇入れの場合は助成額が異なります。
障害者
トライアル
雇用奨励金
就職が困難な障害者をハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成 1人あたり月額最大
4万円(最長3か月間)
障害者短時間
トライアル
雇用奨励金
直ちに週20時間以上勤務することが難しい精神障害者および発達障害者の求職者について、3カ月から12カ月の期間をかけながら20時間以上の就業を目指して試行雇用を行う場合に助成 1人あたり月額最大
2万円(最長12か月間)
障害者初回
雇用奨励金
(ファースト・
ステップ奨励金)
障害者雇用の経験のない中小企業において雇用率制度の対象となるような障害者を初めて雇用し、当該雇入れによって法定雇用率を達成する場合に助成 対象となる措置のすべてを満たした場合、120万円
中小企業障害者
多数雇用施設
設置等助成金
中小企業である事業主が、地域の障害者雇用促進のための計画を作成し、当該計画に基づき障害者を10人以上等多数雇用するとともに障害者の雇入れに必要な事業所の施設・設備等の設置・整備をした場合に、当該施設・設備等の設置に要する費用に対して助成 支給対象者数と施設整備に要した費用に応じて、総額2,000万円~3,000万円(3年間)
発達障害者・
難治性疾患患者
雇用開発助成金
発達障害者または難治性疾患患者をハローワーク等の紹介により常用労働者として雇いれる事業主に対して助成 1人あたり50万円(中小企業は135万円)短時間労働者は30万円(中小企業は90万円)
精神障害者等
雇用安定奨励金
精神障害者を雇い入れるとともに、カウンセリング体制の整備等の精神障害者が働きやすい職場づくりを行った事業主に対して助成 支給対象経費の1/2(上限100万円)(ただし一部メニューは支給額の上限を設定)
重度知的・
精神障害者
職場支援奨励金
重度知的障害者または精神障害者を雇い入れるとともに、その業務に必要な援助や指導を行う職場支援員を配置する事業主に対して助成 1人あたり月額3万円(中小企業は月額4万円)短時間労働者は、月額1万5千円(中小企業は月額2万円)

 

<出典>:障害者の雇用に向けて<PDF>(ハローワーク飯田橋 雇用指導部門)

 

上記のような助成金をうまく活用すれば、「障害者を雇い入れるためには設備の購入が必要」だとか「障害者のために支援指導を行う人材が必要」といった問題も解消しやすくなるかもしれません。

 

(2)ハローワークのサービスを活用する

 

全国のハローワークでは、障害者雇用の促進につながるさまざまなサービスを提供しています。

 

たとえば、これまで障害者雇用をしたことがなく、そもそも「障害者といっしょに働くこと」へのイメージが掴めない場合、ハローワークを通じて積極的な障害者雇用を行う企業や特別支援学校などの見学をしてみるのも一つの方法です。

 

また、障害者を正社員として雇い入れるうえで「仕事をちゃんと行えるのだろうか?」とか「心身に負担がかからないだろうか?」といった不安がある場合は、ハローワークを通じて“トライアル雇用”をするのもおすすめです。

 

トライアル雇用とは、原則3ヵ月の有期雇用契約をする仕組みです。一定要件を満たした場合、トライアル雇用期間中について月額4万円が最大3ヵ月支給されます。

 

ハローワーク飯田橋が公開している以下の資料には、障害者雇用に役立つさまざまなサービスが掲載されています。障害者の雇用促進につながるハローワークの活用について検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

 

<参考>:障害者の雇用に向けて<PDF>(ハローワーク飯田橋 雇用指導部門)

 

(3)障害者専門の人材エージェントを活用する

 

たとえば、障害を抱えながらも「高いプログラミング能力がある」や「外国人と交流できるだけの英語能力がある」といった優秀な人材を採用したい場合は、障害者に特化した人材エージェントに相談するのも一つの方法です。

 

多くの人材紹介エージェントは成果報酬型であるため、人材の採用が決まるまでは費用が発生しないことが一般的です。ハローワークで自社に合う障害者が見つからなかったり、高いスキルを持つ障害者を希望したりする場合は、人材エージェントに問い合わせをして希望条件などを伝えてみるとよいでしょう。

 

(4)特別支援学校などと連携する

 

これから多くの障害者を雇用していくうえでは、障害者が通う学校や、障害者の活躍や社会参加をサポートする団体・事業所とつながりを築いていくのもおすすめです。

 

たとえば、特別支援学校から学生の紹介を受けた場合、本人と先生に業務やオフィスの雰囲気を体験してもらうことで、お互いの認識を合わせたり事前準備を進めやすくなったりするでしょう。

 

また、こうした学校・団体とのつながりは、障害者側の就職ニーズを知るうえでも役立つことが多いはずです。地域にどのような学校・団体があるのかわからない場合は、ハローワークに相談してみてもよいでしょう。

 

障害者雇用率に関するよくある質問

 

障害者雇用率制度は、「対象障害者の多様性」や「計算式」、「企業が実施すべき取り組み」といったさまざまな面で複雑な仕組みです。特に新任の人事労務担当者の場合、制度の複雑さから混乱が生じやすい傾向があります。

 

そこでこの章では、なかでも特に問い合わせが多い3つのポイントについて、よくある質問とその答えを紹介しましょう。

 

Q.法定雇用率と実雇用率の違いとは?

 

「法定雇用率」は、企業・国・地方公共団体などが達成すべき障害者雇用率です。これに対して企業・国・地方公共団体などが実際に雇用している障害者の割合を「実雇用率」と呼びます。

 

2026年3月時点の民間企業における法定雇用率は2.5%ですから、民間企業では実雇用率が2.5%以上になることを目指して障害者雇用を行う必要があるでしょう。

 

Q.除外率制度を最近知りました。この仕組みは将来的になくなると聞きましたが本当ですか?

 

除外率制度とは、一律の雇用率を適用することがなじまない性質の業種について、雇用する労働者数を算出する際に、除外率に相当する労働者数を控除できる仕組みです。わかりやすくいえば、「障害者の雇用義務を軽減できる制度」となります。

 

ただし除外率制度は、ノーマライゼーションの観点により、段階的に廃止されることが決まっています。
2026年3月時点では以下の除外率が公開されていますが、今後さらなる引き下げや縮小があると捉えたほうがよいでしょう。

 

見直し後の除外率設定業種及び除外率

 

<引用>:除外率制度について(厚生労働省)

 

Q.在職する従業員が障害者かどうかを確認する際において、なにか注意点はありますか?

 

まず、勤務先企業に障害を持つ旨を示すことは、障害者の義務ではありません。そのため、特に精神障害を持つ人などの場合、仕事をするうえで大きな支障がなかったり、差別や偏見を恐れたりする事情から、勤務先企業に障害者である旨を隠すケースもあります。

 

そういったなかで企業が障害者の法定雇用率を上げていくためには、本人のプライバシーに配慮する形で障害の把握手続きを進めることが必要です。そこで参考になるのが、厚生労働省が公開する「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認のガイドライン」になります。

 

このガイドラインでは、対象者の把握・確認方法について、以下のような注意点や適切な手続きの流れなどを示しています。

 

 

  • 採用段階で障害がある旨の把握・確認をする場合、
    まず情報の利用目的などの事項を明示する
  • 本人の同意を得たうえで、目的のために必要な事項だけを取得する
  • 採用後の把握・確認をする際には、雇用する労働者全員に対して
    画一的な手段で申告を呼びかける など

 

 

未申告の既存社員から障害がある旨を教えてもらうためには、差別・偏見への恐れが生じにくい環境や信頼関係の構築も求められるでしょう。障害者の把握・確認における大切な考え方が知りたい人は、ぜひ以下のガイドラインもあわせて確認してください。

 

<参考>:プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要<PDF>(厚生労働省)

 

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本記事では、障害者雇用率の算出に関係する制度の概要や計算方法、障害者のカウント基準などを詳しく解説してきました。障害者雇用率については多くの注意点があるため、人事部のなかでも負担に感じている方は多いのではないでしょうか。

 

もし人事業務における業務効率化をお考えであれば、ラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができコア業務に集中できるようになります。

 

ラクラスの特徴として、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ対応を得意としています。他社では難色を示してしまうようなカスタマイズであっても、柔軟に対応することができます。それにより、大幅な業務効率の改善を見込むことができます。

 

また、セキュアな環境で運用されるのはもちろんのこと、常に情報共有をして運用状況を可視化することも心掛けています。そのため、属人化は解消されやすく「人事の課題が解決した」という声も数多くいただいております。

 

特に大企業を中心として760社86万人以上の受託実績がありますが、もし御社でも人事の課題を抱えており解決方法をお探しでしたら、ぜひわたしたちラクラスへご相談ください。

 

ラクラス人事BPOサービス

 

 


 

この記事の監修者:監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
社労士試験合格後、社労士事務所勤務を経て、ソフトバンクグループのシェアードサービス企業で給与計算業務に携わるとともに人事システムの保守・運用を担う。その後、人事業務のアウトソーシングサービスを提供する企業の立上げに参画。主に業務構築、システム運用に従事。
その他、人事領域以外のアウトソーシング企業等での勤務も経験し2019年に独立。
現在、人事・給与計算システムの導入支援を中心に社労士として顧問企業の労務面のサポートも行う。

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