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法定調書とは? 作成・提出のポイントと提出期限、年末調整との関係を詳しく解説

2025.12.10
書類の山と電卓、紙幣

本記事では、法定調書の概要と種類、作成時のポイントを詳しく解説します。また、法定調書の作成および提出に関するよくある質問や最新情報も紹介していきます。法定調書に関する知識を総合的に身につけたい方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
監修者:飛悠税理士法人

 

法定調書は、人事・給与実務で毎年必ず扱う“提出義務のある税務書類”です。特に近年、電子申請の義務化範囲が段階的に拡大しているため、様式・期限・提出方法の最新ルールは正確に把握しておく必要があります。

 

そこで本記事では、法定調書の概要と種類、作成時のポイントを詳しく解説します。後半では、法定調書の作成および提出に関するよくある質問や最新情報も紹介していきます。

 

人事給与の業務に携わるうえで、法定調書に関する知識を総合的に身につけたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

 

法定調書とは?その定義と重要性

 

人事担当者が法定調書の発行・提出などの手続きを適切に行うためには、まず「そもそも法定調書とは何を指しているのか?」という定義を押さえることが重要です。また、法定調書に関する法的なルールを守って適切な運用を行うためには、この書類の重要性を知ることも必要でしょう。

 

ここでは法定調書の基礎知識として定義と種類、重要性などを解説します。

 

法定調書の定義

 

法定調書とは、以下の4つの法律の規定にもとづき税務署への提出が義務付けられている書類の総称です。

 

 

  • 所得税法
  • 相続税法
  • 租税特別措置法
  • 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律

 

<出典>:No.7400 法定調書の提出義務者(国税庁)

 

 

ですから、たとえば人事部門の上司が新任担当者に「法定調書の作成をお願いね」と言った場合、その“法定調書”という言葉が指す意味を理解したうえで、適切な書類の発行・提出手続きを進めなければなりません。

 

法定調書の種類

 

法定調書には、全部で63もの種類があります。また、各書類は以下の4つのカテゴリのいずれかに分類されている形です。

 

 

(1)所得税法に規定するもの

(2)相続税法に規定するもの

(3)租税特別措置法に規定するもの

(4)国外送金等調書法に規定するもの

 

<出典>:No.7401 法定調書の種類(国税庁)

 

 

なかでも最も多くの書類が分類されているのが、「(1)所得税法に関するもの」です。(1)には、以下のようにさまざまな種類の書類名称が並びます。

 

 

  1.  給与所得の源泉徴収票
  2.  退職所得の源泉徴収票
  3.  報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  4.  不動産の使用料等の支払調書
  5.  不動産等の譲受けの対価の支払調書
  6.  不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
  7.  利子等の支払調書
  8.  国外公社債等の利子等の支払調書
  9.  配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書
  10.  国外投資信託等又は国外株式の配当等の支払調書
  11.  投資信託又は特定受益証券発行信託収益の分配の支払調書
  12.  オープン型証券投資信託収益の分配の支払調書
  13.  配当等とみなす金額に関する支払調書  などの43書類

 

<出典>:No.7401 法定調書の種類(国税庁)

 

法定調書の提出義務者

 

人事部門の担当者は63種類全ての法定調書を取り扱うわけではありません。

 

国税庁では、各書類について発行・提出・管理を行う「提出義務者」を定めています。法定調書の提出義務者は、それぞれの法定調書に記載する支出の支払いをする法人または個人です。つまり、提出が必要な法定調書は、その会社がどのような支払いを行っているのかにより決まるため、会社ごとに異なります。

そのため、まずは自分たちの会社が毎年どのような法定調書を作成・提出しているのかを確認することが重要となります。

 

また、人事部門が発行すべき法定調書は、業務範囲の影響を受ける部分もあります。その部署で給与・賞与・報酬の支払い業務を担当している場合、以下の3つの法定調書を作成・提出することが多いでしょう。

 

No. 法定調書の名称 提出義務者
1 給与所得の源泉徴収票 給料、賃金、俸給、賞与、歳費その他
これらの性質を有する給与の支払をする方
2 退職所得の源泉徴収票 法人の役員に対して、退職手当や一時恩給その他
これらの性質を有する給与の支払をする方
3 報酬、料金、契約金及び
賞金の支払調書
外交員報酬、税理士報酬など所得税法第204条第1項各号ならびに所得税法第174条第10号および租税特別措置法第41条の20に規定されている報酬、
契約金、料金および賞金の支払をする方

<出典>:No.7400 法定調書の提出義務者(国税庁)

 

なお、上記3つの法定調書については、国税庁のページに詳しい資料が掲載されています。はじめて作成・提出の手続きをする際には、国税庁の資料に必ず目を通してください。

 

<参考>:令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引(国税庁)

 

法定調書を作成・提出する目的と重要性

 

法定調書を作成・提出する最大の目的は、企業および個人に何らかの支払いが発生したときに、税務署側でお金の流れを把握するためです。

 

税務署では法定調書を通じて「誰がどういう種別でいくらの支払いを受け、そこに対して各種控除や税額はどのくらいだったのか?」などの情報を入手します。法定調書があるからこそ、その支払いに対して適切な課税が行われているかの確認が可能となるわけです。

 

また、法定調書の中の「給与所得の源泉徴収票」は正しい年末調整を行うためにも必要です。

たとえば、ある従業員が年の中途でほかの会社を退職して自社に入ってきた場合、転職前の会社で発行された源泉徴収票を提出してもらうことで、その年全体の年末調整を行えることになります。

 

このように、法定調書は税務署および支払いを受けた本人はもちろんのこと、その本人の転職先企業や年末調整業務に関わる税理士などの目に触れる可能性があります。ですから、法定調書の作成・提出はミスが許されない重要な手続きなのです。

 

【人事給与関連】法定調書の作成ガイド

 

法定調書の作成・提出は、給与・賞与計算や年末調整、従業員の退職時などに発生するとても重要な手続きです。適切な書類をミスなく作成するためには、各書類の提出要件や記載項目、注意事項などを把握しておく必要があります。

 

ここでは、主に人事給与の担当者に関係する以下の3つの法定調書について、基本的なポイントを見ていきましょう。

 

 

(1)給与所得の源泉徴収票

(2)退職所得の源泉徴収票

(3)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

 

 

(1)給与所得の源泉徴収票

 

給与所得の源泉徴収票とは、1年間に会社から支給された給与賞与などの総額や、給与等から控除された源泉所得税の金額などが記載された書類です。厳密な発行時期は企業ごとに異なりますが、一般的には年末調整の後に、12月分の給与明細と一緒に配布されることが多いでしょう。

 

なお、年末調整業務の詳細については下記の記事にて解説していますので、あわせてご確認ください。

 

【関連記事】年末調整業務の進め方ガイド|担当者がやるべき手続きの流れや必要書類の種類などを解説

 

・給与所得の源泉徴収票における「提出義務者」

給与所得の源泉徴収票を作成し、税務署に提出する必要があるのは、その年に給料・賞与・俸給・賃金・歳費・その他これらの性質を有する給与(以下「給与等」と記載)の支払いをする方です。

 

ただ、作成した給与所得の源泉徴収票のすべてを税務署に提出するわけではなく、定められた「提出範囲」の要件を満たすものだけを税務署に提出することとされています。

 

受給者の区分および「提出範囲」は、「年末調整をしたもの」と「年末調整をしなかったもの」で以下のように異なります。

 

受給者の区分 提出範囲
年末調整をしたもの (1) 法人(人格のない社団等を含みます。)の役員(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、相談役、顧問等である方)及び現に役員をしていなくても令和7年中に役員であった方 令和7年中の給与等の支払金額が150 万円を超えるもの

(2) 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、海事代理士、建築士等(所得税法第 204 条第 1 項第 2 号に規定する方)

※ これらの方に給与等として支払っている場合の提出範囲であり、これらの方に報酬等として支払う場合には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出対象となります。

 

令和7年中の給与等の支払金額が250 万円を超えるもの
(3) 上記(1)及び(2)以外の方 令和7年中の給与等の支払金額が500 万円を超えるもの
年末調整をしなかったもの (4) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した方 イ 令和7年中に退職した方、災害により被害を受けたため、令和7年中の給与所得に対する源泉所得税及び復興特別所得税の徴収の猶予又は還付を受けた方

令和7年中の給与等の支払金額が250 万円を超えるもの

ただし、法人の役員の場合には50 万円を超えるもの

ロ 主たる給与等の金額が 2,000万円を超えるため、年末調整をしなかった方

全部

5) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しなかった方(月額表又は日額表の乙欄若しくは丙欄適用者等) 令和7年中の給与等の支払金額が50 万円を超えるもの

<引用>:第2 給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)<PDF>(国税庁)

 

・給与所得の源泉徴収票における「記載項目」

給与所得の源泉徴収票には、29個もの記載項目があります。各項目の記載ポイントについては、上記で引用している国税庁の資料を確認してください。※記載ポイントは年度ごとに変わります。年末調整の際には最新の情報をチェックしてください。

 


支払を受ける者

種別

支払金額

給与所得控除後の金額
(調整控除後)

所得控除の額の合計額

源泉徴収税額

(源泉)控除対象 配偶者の有無等

配偶者(特別)控除の額

控除対象扶養親族等の数( 配偶者を除く)

16歳未満扶養親族の数

障害者の数(本人を除く)

非居住者である親族の数

特定親族特別控除の額

社会保険料等の金額

生命保険料の控除額/地震保険料の控除額

住宅借入金等特別控除の額

生命保険料の金額の内訳/国民年金保険料等の金額/旧長期損害保険料の金額

住宅借入金等特別控除の額の
内訳

基礎控除の額

所得金額調整控除額

(源泉・特別)控除対象配偶者 控除対象扶養親族等

配偶者の
合計所得

16歳未満の扶養親族

備考

未成年者から勤労学生までの
各欄

中途就・退職

元号

支払者

(摘要)

 

R7給与所得の源泉徴収票

<出典>:第2 給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)<PDF>(国税庁)

 

 

・「給与所得の源泉徴収票」と「給与支払報告書」の作成枚数

「給与所得の源泉徴収票」と混同されやすいものに、「給与支払報告書」がありますが、これらの内容は同じです。ただし、発行枚数と提出先が以下のように異なります。

 

【税務署への提出を要する受給者分】

給与所得の源泉徴収票 給与支払報告書
税務署提出用 1枚 市区町村提出用 1枚
受給者交付用 1枚

 

【税務署への提出を要しない受給者分】

給与所得の源泉徴収票 給与支払報告書
受給者交付用 1枚 市区町村提出用 1枚

 

給与支払報告書は原則として、翌年の1月1日現在において給与等の支給を受ける全受給者について、翌年の1月1日現在の受給者の住所地の市区町村へ提出が必要となります。

 

また、給与所得の源泉徴収票は、「提出範囲」の該当の有無にかかわらず全受給者分を作成し、期日までに受給者本人に交付することになります。(※本来の期日は翌年の1月31日であり、令和8年は1月31日が土曜日であるため2月2日までです)年の中途で退職した人の場合は、退職日以後1ヵ月以内の交付が必要となります。

 

給与所得の源泉徴収票については、このほかにも多くの注意点があります。この書類の作成を行う際には、国税庁が公開する最新資料を確認してから手続きに進んでください。

 

<参考>:第2 給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)<PDF>(国税庁)

 

(2)退職所得の源泉徴収票

 

退職所得の源泉徴収票は、退職手当や一時恩給その他これらの性質を有する給与など、退職をする際に一時的に受ける給与(退職手当等)を支払うタイミングで発行する書類です。

 

先述の「給与所得の源泉徴収票」とフォーマットが異なる理由は、給与や賞与を対象とする給与所得と退職所得では、税額の計算方法が異なるからです。そのため、退職者に先述の退職手当等を支払う際には、給与所得とは別に源泉徴収票を発行する必要があります。

 

・退職所得の源泉徴収票における「提出する必要がある人」

国税庁の資料では、令和7年分における退職所得の源泉徴収票について、「提出範囲」を以下のように定めています。

 

 

令和7年中に支払が確定した、法人(人格のない社団等を含みます。)の役員(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、相談役、顧問等)に対して支払う退職手当等

<引用>:第3 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票<PDF>(国税庁)

 

 

ただし、死亡退職により退職手当等を支払った場合は、相続税法の規定による「退職手当金等受給者別支払調書」という別の法定調書を提出することになります。この場合、退職所得の源泉徴収票の提出は不要です。

 

・退職所得の源泉徴収票における「記載項目」

退職所得の源泉徴収票は、以下のとおり9つの項目で構成されています。

 

① 支払を受ける者 ② 区分 ③ 支払金額
④ 源泉徴収税額 ⑤ 特別徴収税額 ⑥ 退職所得控除額
⑦ 勤続年数 ⑧ (摘要) ⑨ 支払者

 

R7退職所得のの源泉徴収票

 

<出典>:第3 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票<PDF>(国税庁)

 

・退職所得の源泉徴収票と特別徴収票

退職所得に関しても、給与所得と同様に「税務署に提出する様式」と「市区町村に提出する様式」の2種類があります。市区町村に提出する様式が「退職所得の特別徴収票」というものです。

ただ、フォーマットは全く同じのため、基本的に「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」という名称で同じものを使います。退職所得の源泉徴収票と特別徴収票の提出先は以下のとおりです。

 

・【退職所得の源泉徴収票の提出先】退職手当等の支払事務を取り扱う事務所、事業所などの所在地を所轄する税務署

・【退職所得の特別徴収票の提出先】受給者の1月1日現在における住所地の市区町村

 

人事給与の担当者はこれらの書類に関して、提出期限である「退職後1ヵ月以内」に以下の2つのことをする必要があります。

 

・1部を税務署および市区町村役場に提出する

・対象範囲(対象者)にかかわらず、退職後1ヵ月以内にすべての受給者に交付する

 

ただし、税務署に対する退職所得の源泉徴収票に関しては、その年に退職した受給者分をすべてとりまとめて、翌年の1月31日(令和8年は1月31日が土曜日であるため2月2日まで)に提出する形でも問題ありません。

 

なお、退職所得の源泉徴収票と特別徴収票には、各項目の書き方を含めたさまざまな注意点があります。はじめてこれらの法定調書を作成・提出する際には、国税庁が公開している最新資料を必ず確認するようにしてください。

 

<参考>:第3 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票<PDF>(国税庁)

 

(3)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

 

これらの法定調書は、その名のとおり報酬、料金、契約金、賞金の支払いが発生するときに作成・提出が求められるものです。

 

・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書における「提出義務者」

この書類の提出対象は、以下3つの法律で定められている報酬・料金・契約金・賞金(以下「報酬、料金等」の支払いをする方です。

 

 

  • 所得税法第 204 条第1項各号
  • 所得税法第 174 条第 10 号
  • 租税特別措置法第 41 条の20 第 1 項

 

 

・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書における「提出範囲」
令和6年中の支払いに関しては、以下の7区分のいずれかに該当する場合に、税務署に対して支払調書を提出する必要があります

 

区分 提出範囲

(1) 外交員、集金人、電力量計の検針人及びプロボクサーの報酬、料金

同一人に対する令和6年中の支払金額の合計が 50 万円を超えるもの。

2) バー、キャバレー等のホステス、バンケットホステス、コンパニオン等の報酬、料金

(3) 広告宣伝のための賞金

(4) 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

同一人に対する令和6年中の支払金額の合計が 50 万円を超えるもの。ただし、国立病院、公立病院、その他の公共法人等に支払うものは提出する必要はありません。
(5) 馬主が受ける競馬の賞金 その年の1回の支払賞金額が 75 万円を超える支払を受けた方に係るその年中の全ての支払金額。

(6) プロ野球の選手などが受ける報酬及び契約金

同一人に対する令和6年中の支払金額の合計が 5 万円を超えるもの。
(7) (1)から(6)以外の報酬、料金等

 

<出典>:第4 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書<PDF>(国税庁)

 

・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書における「記載項目」

この支払調書は、以下の7項目で構成されています。

 

①支払を受ける者 ②区分 ③細目 ④支払金額
⑤源泉徴収税額 ⑥(摘要) ⑦支払者

 

R7報酬、料金、契約金及び賞与の支払い調書

 

<出典>:第4 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書<PDF>(国税庁)

 

・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書における注意点

この支払調書の提出範囲に該当した場合、以下の支払いに関しても作成・提出が求められます。

 

 

  • 法人(人格のない社団等を含みます。)に支払われる報酬、料金等で源泉徴収の対象とならないもの
  • 支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収をしていない報酬、料金等

 

<引用>:第4 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書<PDF>(国税庁)

 

 

支払調書の作成日時点で未払金がある場合は、源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の合計額を見積もったうえで記載します。また、この支払調書にも各項目に記載時の注意点があります。はじめて調書作成をする際には、国税庁が公開している最新資料を確認しましょう。

 

<参考>:第4 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書<PDF>(国税庁)

 

法定調書合計表

法定調書合計表とは何か

 

法定調書合計表は、一般的には「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」のことを指しており、以下の6種類の法定調書を提出する際に添付する書類です。いわゆる“表紙”のようなものであり、各法定調書の内容を集計した金額を表示する書類になります。

なお、以下6種類の法定調書以外の法定調書を税務署に提出する際には、それぞれの法定調書に該当する○○支払調書合計表という合計表もあるため、混同しないよう注意が必要です。

 

 

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 退職所得の源泉徴収票
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 不動産の使用料等の支払調書
  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書
  • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

 

 

法定調書合計表

 

<引用>:F1-1 給与所得の源泉徴収票(同合計表)(国税庁)

 

法定調書合計表の記載項目

 

法定調書合計表の一番上に記載するのは、以下のような提出者情報です。

 

 

  • 提出義務者の住所または所在地
  • 提出義務者の氏名または名称
  • 代表者氏名
  • 個人番号または法人番号
  • 調書の提出区分
  • 作成担当者
  • 作成税理士署名/税理士番号 など

 

 

また、各支払調書の項目では、以下のような項目を入力していきます。

※調書ごとに項目内容に多少の違いがあります

1から6の法定調書のすべてについて、A欄に支給総額を記載し、B欄には支給総額のうち提出範囲を満たして税務署に提出する分だけの数を記載するというフォーマットになっています。

 

 

  • 対象の人員数
  • 支払金額の合計
  • 源泉徴収税額の合計 など

 

 

法定調書における5つの提出方法

 

法定調書および法定調書合計表には、以下の5つの提出方法が用意されています。

 

 

(1)書面で提出する

(2)e-Taxで提出する

(3)eLTAXで提出する

(4)認定クラウドで提出する

(5)光ディスクなどで提出する

 

 

ここでは、上記5つの提出方法について、基本的な特徴や注意ポイントなどを確認しましょう。

 

(1)書面で提出する

 

作成した法定調書および法定調書合計表をプリントアウトして、郵送または持参で「紙」で提出する方法です。

 

ただし国税庁による電子申請推進の影響から、2025年9月現在では前々年に提出すべきであった法定調書の枚数が100枚以上である場合は書面提出が不可となり、その代わりe-Tax等による提出が求められるようになりました。

 

また、令和9年1月以降に提出する法定調書については、その基準が「30枚以上」になります。提出する法定調書の枚数が30枚前後になる可能性がある場合は、早めにe-Taxなどの準備を始めたほうがよいでしょう。

 

e-TAX、クラウドまたは光ディスクの提出義務基準

 

<参考>:令和6年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引<PDF>(国税庁)

 

(2)e-Tax(Web版)で提出する

 

国税庁が提供する「e-Taxソフト(Web版)」用いた作成・提出の方法です。この仕組みを使うと、給与所得の源泉徴収票などを画面上で1件ずつ入力したり、他のソフトで作成したCSVファイルを取り込んで送信したりすることが可能となります。

 

e-Taxによる提出のご案内

 

<引用>:法定調書(源泉徴収票、支払調書)の作成と提出(国税庁)

 

国税庁では以下の6つの法定調書について、e-Taxソフト(Web版)を使った作成・提出を推奨しています。

 

 

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 退職所得の源泉徴収票
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 不動産の使用料等の支払調書
  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書
  • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

 

 

e-Taxソフト(Web版)のメリットは、すべての法定調書に対応した「e-Taxソフト」とは異なり、専用ソフトウェアのダウンロードが不要である点です。

 

また、書面提出では税務署もしくは郵便ポストまで行く必要がありますが、e-Taxであればテレワークを行う自宅やオフィスなどから24時間いつでも法定調書の作成・提出が可能です。(関与税理士に委託せずに自社でe-Tax提出する際は、代表者の電子証明書の添付が必要です)

 

なお、国税庁の情報によると、法定調書を提出する人の73.4%がe-Taxを利用しているようです。

 

<参考>:法定調書の提出はe-Taxで!!(国税庁)

<参考>:法定調書(源泉徴収票、支払調書)の作成と提出(国税庁)

 

(3)eLTAXで提出する

 

eLTAX(地方税ポータルシステム)による提出は、平成29年1月から利用可能となった比較的新しい方法です。事業者が作成した統一CSVレイアウト様式で作成した給与支払報告書のデータをeLTAXで市区町村に送信すると、税務署にも一括で送信できるため、以下のように各所への提出をスムーズに行えます。

 

 

  • 【給与所得の源泉徴収票】所轄税務署へ
  • 【給与支払報告書】各市区町村へ

 

 

e-Taxは「国税」が中心、eLTAXは「地方税」が中心のシステムです。ただし、eLTAXには国税に関係する以下の4つの法定調書についても一元化できる特徴があります。

 

 

【地方税】

  • 給与支払報告書(個人別明細書)
  • 給与支払報告書(総括表)
  • 公的年金等支払報告書(個人別明細書)
  • 公的年金等支払報告書(総括表)

 

【国税】

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
  • 公的年金等の源泉徴収票
  • 公的年金等の源泉徴収票合計表

 

 

給与支払報告書は、給与を支払う従業員の居住地(住所のある市区町村)に送付するものであることから、従業員がさまざまな市区町村から通っている事業所などの場合、その手続きも複雑になりがちです。

 

しかしそこでeLTAXとe-Taxを組み合わせた仕組みを活用すれば、オンライン上で必要な市区町村への提出をスムーズに行えるでしょう。

 

なお、法定調書合計表のうち、今現在eLTAXで税務署に提出できるのは「給与所得の源泉徴収票」のみです。つまり、退職所得の源泉徴収票以下の5つの法定調書を提出する必要がある際は、それぞれの法定調書および合計表は別途e-Taxで提出する必要があります。

 

<参考>:給与・公的年金等の支払報告書及び源泉徴収票のeLTAXでの一括作成・提出(電子的提出の一元化)について(国税庁)

 

(4)認定クラウドで提出する

 

認定クラウド等(クラウドサービス)とは、国税庁が示す要件にマッチしていて、なおかつ国税庁長官の認定を受けたクラウドサービスの総称です。令和5年1月からは、マイナポータルを経由する仕組みも構築されています。

 

認定クラウド等を利用した提出は令和4年1月から始まったもので、基本的な流れとしては、以下の2ステップです。

 

 

(1)
 法定調書提出者が、認定クラウド等の提出領域に調書データを記録する

(2)
 税務署長に対して、当該データの閲覧およびe-Taxに記録する権限
 (アクセス権)を付与する

 

 

この方法で法定調書を提出する場合、提出者が「認定特定電子計算機による申請等の開始(変更)届出書」を所轄の税務署長に提出する必要があります。この書類は、e-Taxでも提出可能です。

 

<参考>:クラウドサービス等を利用した法定調書の提出について(国税庁)

 

(5)光ディスクなどで提出する

 

光ディスク等(CD・DVDなど)による提出も、電子申請の対象です。

 

たとえば、令和7年現在において当該法定調書の枚数が100枚以上の場合、e-Taxまたは光ディスク等による提出が必要ということになります。
これが令和9年1月1日以降になると、範囲拡大により30枚以上が対象になるわけです。

 

光ディスク等の媒体で提出する場合は、各調書のレコード内容および記録要領を守るのはもちろんのこと、光ディスク等の種類やファイルの仕様などにも注意する必要があるでしょう。

 

<参考>:光ディスク等の規格とレコードの内容及び記録要領について(法定調書)(国税庁)

<参考>:法定調書の光ディスク等による提出のご案内(国税庁)

 

法定調書の保管義務と修正方法

 

法定調書に関する業務は、「作成・提出すればそれで終わり」ではありません。法定調書のなかには、法律で定められた保管義務が発生するものがあります。また、作成した内容にミスがあり、それが発覚した場合には修正対応も必要でしょう。

 

ここでは、法定調書を作成・提出したあとの話として、保管と修正のポイントを解説していきます。

 

法定調書における保管義務と期限

 

法定調書における保管義務の有無は、書類の種類ごとに異なります。

 

たとえば、給与所得や退職所得の源泉徴収票は、本人への交付と税務署・市区町村役場への提出を目的とする書類です。年末調整や退職手続きが終わると原本は交付・提出されてしまうため、事業者側の保管義務はありません。

 

ただし、源泉徴収票と関連する源泉徴収簿は帳簿であるため、7年間の保管義務が生じます。税務署から閲覧や提出を求められたときにすぐに示せる状態で、7年間の保管をする必要があります。

 

なお、法定調書にマイナンバーを記載して提出した場合は、源泉徴収簿同様の保管が求められますので注意しましょう。

 

 

法定調書の内容に誤りがあった場合の修正方法

 

法定調書の提出後に記載内容の誤りを見つけた場合は、速やかに正しい内容の法定調書を作成し直したうえで税務署に提出する必要があります。この場合、最初に提出した法定調書を無効にする手続きが必要です。そこで必要となるのが、以下の4書類の提出になります。

 

  必要書類 ポイント
1 先に提出した
「法定調書」の写し
先に提出した法定調書と同じ内容のものを作成するか、控えの写しを使用し、その法定調書の右上部余白に「無効」と赤書きします。
2 無効分の「合計表」 無効とした法定調書の支払金額等を記載した合計表を作成し、「調書の提出区分」欄に
「4」(無効)と記入してください。
3 正しい「法定調書」 正しい内容の法定調書を作成し、その法定調書の右上部余白に「訂正文」と赤書きします。
4 訂正分の「合計表」 訂正分とした法定調書の支払金額等を記載した合計表を作成し、「調書の提出区分」欄に「3」(訂正)と記入してください。

 

<引用>:提出した法定調書に記載誤りを発見した場合の訂正方法(国税庁)

 

また、法定調書の内容に誤りがあった場合は、摘要欄に「記載誤りとなった箇所等」を記載し、「再交付」と表示した正しい法定調書を受給者に対して再交付する必要もあるでしょう。

 

 

法定調書とマイナンバー

 

法定調書の作成・提出をする際に注意したいのが、個人番号(マイナンバー)の取り扱いです。法定調書とマイナンバーの関係および運用方法には、制度改正の影響で大きな変化が生まれています。
ポイントを見ていきましょう。

 

マイナンバーの記載が不要となる法定調書

 

平成27年10月2日に所得税法施行規則等の改正が行われたことで、給与などの支払いを受ける人に交付をする以下の税務関係書類(本人交付用)について、マイナンバーを記載しないことが決定しました。

 

 

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 退職所得の源泉徴収票
  • 公的年金等の源泉徴収票
  • 配当等とみなす金額に関する支払通知書
  • オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書
  • 上場株式配当等の支払に関する通知書
  • 特定口座年間取引報告書
  • 未成年者口座年間取引報告書
  • 特定割引債の償還金の支払通知書

 

<引用>:本人へ交付する源泉徴収票や支払通知書等への個人番号の記載は必要ありません!<PDF>(国税庁)

 

 

記載が不要となった理由は、「書類の郵送事故や紛失などが生じた場合、大事なマイナンバーの情報流出リスクがあるから」ということです。

 

一方で税務署に提出する源泉徴収票などには、従来どおりマイナンバーの記載が必要となりますので注意が必要です。

 

<参考>:Q1-1 本人へ交付する源泉徴収票や支払調書へマイナンバー(個人番号)を記載してよいですか。(国税庁)

<参考>:本人へ交付する源泉徴収票や支払通知書等への個人番号の記載は必要ありません!<PDF>(国税庁)

 

よくある質問と関連情報

 

人事担当者がはじめて法定調書の作成・提出をする場合、書類の種類と記載項目、注意点の多さから戸惑いが生じることもあるでしょう。
ここでは、法定調書の作成担当者からよく寄せられる質問とその回答の一部を紹介します。

 

Q.年末調整の際、法定調書はどのタイミングで作成するものですか?

 

給与所得の源泉徴収票は、毎年10月頃~1月末までに行われる年末調整のなかで作成されるものです。

 

一般的な作成時期は、毎年の年末調整を終えてから1月末までに作成・提出するイメージです。ただし、12月支給給与等にかかる源泉徴収額の納付は翌年の1月10日までに済ませる必要があるため、源泉徴収票の情報もその時期までにまとめておくのが理想でしょう。

 

年末調整業務の具体的な流れや手順については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひチェックしてください。

 

【関連記事】年末調整業務の進め方ガイド|担当者がやるべき手続きの流れや必要書類の種類などを解説

 

Q.法定調書に関して、注目すべき最新情報などはありますか?

 

人事担当者が法定調書関連で注目すべき最新情報については、年末調整の手続きおよび法定調書の提出等において、電子申請が更に進んでいくことす。

 

たとえば、令和9年1月1日以降に提出する法定調書について「30枚以上であれば電子申請の対象」になることが決まっていますが、その先の令和10年や11年になれば、対象範囲はさらに拡大するかもしれません。

 

いずれにしても国税庁から新しい情報が発表された後、混乱することなく年末調整や法定調書の発行手続きを進めるためには、人事給与の関連業務について、早いうちから電子化の検討を進めておくことが重要になるでしょう。

 

 

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本記事では、法定調書の概要と種類、作成時のポイントを詳しく解説してきました。法定調書の作成および提出に関しては多くの注意点があるため、人事部のなかでも負担に感じている方は多いのではないでしょうか。もし年末調整の手続きの負担を軽減したいとお考えでしたら、ぜひラクラスにご相談ください。

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この記事の監修者:飛悠税理士法人

私たち飛悠税理士法人は、お客様に対し税務会計の専門家としての立場でサービスを提供することはもちろんですが、その前に人間同士の信頼関係、人としての筋道を大切にすることをモットーにしています。

そのためにお客様のお考えをよく聞き、私達の考えをきちんとお伝えすることによって、お互いの信頼関係を築いていくことが大切だと思っています。

 

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