社会保険料の計算方法は?|給与計算と賞与計算の違いや注意点を解説
監修者:
社会保険労務士 伊藤大祐
社会保険料の概要を確認したうえで、給与計算と賞与計算における各保険料の計算方法や違いなどを詳しく解説します。また、年末調整に関連する社会保険料控除や免除されるケースや標準報酬月額の概要についても解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
人事給与部門の担当者が給与計算を担当するうえで理解しておきたいのが、社会保険料に関する知識です。なお、本記事では健康保険料について、子ども・子育て支援金(子ども・子育て支援納付金相当分を含む保険料)を含めて「健康保険料」として説明します。社会保険料は、人事給与部門の大事な業務である“年末調整”にも大きく関わるものとなります。
そこで本記事では、社会保険料の概要を確認したうえで、給与計算と賞与計算における各保険料の計算方法を詳しく解説します。後半では、年末調整に関連する社会保険料控除なども解説していきます。
給与計算に携わるにあたって社会保険料の計算方法を詳しく理解したい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
社会保険料とは
社会保険料の各種手続きや計算をするうえで重要になるのが、「そもそも社会保険料が具体的に何を指すのか?」ということの理解です。ここではまず、社会保険料の概要を整理しておきましょう。
社会保険料とは
社会保険料とは、“社会保険”に対して徴収される保険料の総称です。社会保険料には、広義と狭義があり、企業の担当者が押さえておくべき社会保険料は、下記5種類の総称である広義の面になります。
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【健康保険料】 【厚生年金保険料】高齢や障害の状態、死亡に備える制度の保険料 【介護保険料】要支援・要介護認定時の介護サービス利用に備える保険料 【雇用保険料】失業や教育訓練などに備える制度の保険料 【労災保険料】労働災害に備える制度の保険料
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ここで一つ注意点があります。それは、政府などが発信する情報では、以下の3つに限定した意味(狭義)で「社会保険(社会保険料)」という言葉を使うことがあります。
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たとえば、「政府広報オンライン」などから情報を集める場合、社内で当たり前に使っている広義の面とは種類やニュアンスが異なってくる可能性がありますので注意が必要です。
<参考>:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。(政府広報オンライン)
社会保険料を納めなければならない理由
なぜ私たちは、社会保険料を納めなければならないのでしょうか。
事業者や従業員個人が社会保険料を納めなければならない理由は、社会保険料が日本の社会保障制度を維持するために必要なお金だからです。
日本の社会保障制度は、「社会を構成する人がともに助け合い支え合う」という社会連帯と相互扶助の考え方がベースになっています。加入者が支払った社会保険料は、以下のような“万が一の出来事”に直面した人を支えるために使われる仕組みなのです。
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もし事業者が社会保険料を納付せず滞納を続けた場合、延滞金が発生するとともに納付先から督促を受けることになります。また、それでも納付に応じない場合、最終的には法律に基づく滞納処分として、財産の差し押さえに至る可能性があります。
こうした問題が起こると、当然のことながら企業の社会的信用が低下し、事業継続にも支障をきたします。
事業者は安定的に事業を続けるためにも、社会保険料を継続的に納め、事業者としての義務を果たす必要があるでしょう。
社会保険の加入条件と保険料徴収の対象者
次に、社会保険の加入条件と保険料徴収の対象者を見ていきましょう。
社会保険の場合、その種類によって加入が義務付けられている人が異なります。それはつまり、保険料徴収の対象者も保険の種類によって違うということです。
では、保険の種類ごとの加入条件について解説していきましょう。
厚生年金と健康保険への加入要件
厚生年金と健康保険の場合、「事業所の要件」と「従業員個人の要件」の2つから加入が必要かどうかを見ていく必要があります。
- 事業所の要件
まず、社会保険の適用を必ず受けるのが「強制適用事業所」です。
株式会社などの法人は従業員数にかかわらず、従業員が常時5人以上の個人事業所で、サービス業や農林漁業を除く事業所は社会保険の適用事業所となります。
この要件に該当する企業が、後述の要件に該当する従業員を使用している場合、厚生年金・健康保険の加入手続きが必要となります。
また、強制適用事業所ではなくても、従業員の半数以上の同意を受けて事業主が申請した場合、厚生労働大臣の認可を受けて適用事業所になることが可能になっています。
<参考>:適用事業所と被保険者(日本年金機構)
- 従業員個人の要件
従業員の要件は以下の4つです。この4要件すべてに該当した場合、その従業員は厚生年金保険と健康保険の加入対象になります。
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なお、2024年10月から「従業員数51~100人」の企業で働くパート・アルバイト従業員も、新たに社会保険適用の対象となりました。厚生年金および健康保険の加入要件には、細かな注意点があります。詳細について確認したい場合は、厚生労働省が公開する特設サイトをチェックしておくとよいでしょう。
<参考>:社会保険適用拡大特設サイト(厚生労働省)
介護保険の適用について
雇用保険への加入要件
事業主側は、労働者を一人でも雇っていれば雇用保険の適用事業所になります。(※農林水産の一部事業を除く)
これに対して労働者側の要件は、以下の2つです。
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(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること (2)31日以上の雇用見込みがあること
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この(1)と(2)の両方に該当すれば、原則としてすべての人が雇用保険の被保険者になります。パート・アルバイトなどの雇用形態は問いません。(※季節的に一定期間のみ雇用される労働者などの例外もあります)
<参考>:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!(厚生労働省)
労災保険の適用について
労災保険も雇用保険と同様に、労働者を一人でも雇っていれば適用事業所になります。(※農林水産の一部事業を除く)労災保険は、パート・アルバイトを含めすべての労働者に適用されます。
なお、国では、労災保険と雇用保険をセットにしたものを「労働保険」と呼んでいます。厚生労働省・労働基準監督署・ハローワークなどの情報では「労働保険」とまとめて記載してあることも多いので注意が必要です。
<参考>:ひとりでも労働者を雇ったら労働保険(労災・雇用)に入る義務があります(労働基準監督署・(公共職業安定所))
社会保険料の計算に必要となる標準報酬月額
社会保険料の計算には標準報酬月額が必要となりますが、標準報酬月額は厚生年金保険料や健康保険料の算出で使うものです。
具体的には、被保険者が事業者から受け取る給与額を区切りの良い幅で区分した報酬月額に当てはめて決まる数字になります。ちなみに2024年11月現在では、健康保険の標準報酬月額は50等級、厚生年金の標準報酬月額は32等級に分かれています。
なお、報酬月額は、基本給に「残業手当」「通勤手当」「事業所が提供する食事代や宿舎費」といった金額を加えた、税引き前の給与も含めて決定される仕組みになっています。
標準報酬月額の決定はいつ?
標準報酬月額は、入社時に決定されます(資格取得時決定)。その後、毎年4月~6月の報酬月額をもとに、毎年9月に改定(定時決定)されます。ただし、算定後の報酬月額に2等級以上の大幅な変動が生じた場合などは、随時改定が行われる仕組みです。
また、育児休業の終了時や産前産後休業の終了時なども、イレギュラーな改定が行われます。詳しい決定(改定)の種類と方法は、日本年金機構のページで確認しておくとよいでしょう。
<参考>:厚生年金保険の保険料(日本年金機構)
報酬月額ごとの社会保険料の早見表
ここまで、社会保険料の種類や計算方法について解説してきました。しかし、人事給与部門の担当者のなかには、「実際にどの程度の社会保険料が控除されるのかを知りたい」という方も多いでしょう。
そこで本章では、報酬月額ごとの社会保険料の目安を表にして紹介します。なお、実際の社会保険料は、加入している健康保険組合や協会けんぽの都道府県、年度ごとの保険料率などによって異なります。以下の表はあくまでも目安として参考にしてください。
報酬月額ごとの社会保険料(本人負担額)の目安
| 報酬月額 | 40歳未満の社会保険料 | 40歳以上65歳未満の 社会保険料 |
| 200,000円 | 約29,000円 | 約31,000円 |
| 250,000円 | 約38,000円 | 約40,000円 |
| 300,000円 | 約44,000円 | 約47,000円 |
| 350,000円 | 約53,000円 | 約56,000円 |
| 400,000円 | 約60,000円 | 約64,000円 |
| 500,000円 | 約73,000円 | 約78,000円 |
※健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料(40歳以上の場合)・雇用保険料の本人負担分を合算した概算です。
この表を見てわかるように、社会保険料は給与が高くなるほど増加します。これは、健康保険料や厚生年金保険料が標準報酬月額に基づいて計算される仕組みになっているためです。
また、40歳以上になると介護保険料も加算されるため、40歳未満の従業員と比較すると社会保険料の負担額が高くなります。
人事給与部門では、従業員から「どのくらい給与から社会保険料が引かれているのか」と質問を受けることもあります。そのため、概算の金額感を把握しておくことも重要でしょう。
給与計算における社会保険料の計算方法
社会保険料の計算方法は、保険ごとに異なります。ここでは、5つの保険を挙げながら保険料を算出するための式やポイントなどをそれぞれ解説していきます。
(1)健康保険料の計算方法
健康保険料は、「標準報酬月額×健康保険料率」で算出します。
たとえば、標準報酬月額が30万円で健康保険の保険料率が9.81%の場合、30万円×9.81%で健康保険料は2万9,430円ということになります。
なお、健康保険料率は加入されている健康保険組合で異なり、協会けんぽに加入されている場合には都道府県ごとに異なりますので、計算時には加入されている健康保険組合・協会けんぽ(事業所の所在地)の料率を参照しましょう。
健康保険料は、事業者と従業員が折半で支払う仕組みです。従業員の負担分は、上記の式で算出した保険料を2で割ることで算出できます。
(2)介護保険料の計算方法
介護保険料の計算式は、「標準報酬月額×介護保険料率」です。
協会けんぽに加入している事業所の場合、介護保険料率は全国共通です。令和8年度の介護保険料率は1.62%となっています。
たとえば、令和8年度に標準報酬月額が30万円の人の場合、介護保険料は30万円×1.62%=4,860円です。
介護保険料率は加入している健康保険組合・協会けんぽによって異なりますので、計算時に加入されている健康保険組合・協会けんぽの料率を参照しましょう。
なお介護保険料も健康保険料と同様に、事業者と従業員の折半になります。
<参考>:令和8年度健康保険料率・介護保険料率・子ども・子育て支援金率に関するお知らせ(日本年金機構)
(3)厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料は、「標準報酬月額×18.3%(保険料率)」です。厚生年金の保険料率は、平成29年9月を最後に引き上げが終わり、現在は18.3%で固定されています。
たとえば、標準報酬月額が30万円の人の厚生年金保険料は、30万円×18.3%で5万4,900円になります。なお、厚生年金保険料も事業主と従業員の折半です。
<参考>:厚生年金保険料額表(日本年金機構)
(4)雇用保険料の計算方法
雇用保険料は、「賃金総額×雇用保険料率」で算出します。
賃金総額とは、基本賃金・賞与・超過勤務手当・深夜手当・扶養手当といった「事業主が労働の対償として支払うすべてのもの」を指します。
賃金総額の具体的な範囲については、厚生労働省の資料をチェックするとよいでしょう。
<参考>:労働保険対象賃金の範囲(厚生労働省)
雇用保険の料率は少し複雑です。厚生労働省では、令和8年4月1日~令和9年3月31日までの雇用保険料率を公表しています。令和8年度は、令和7年度から雇用保険料率が引き下げられています。

<引用>:令和8(2026)年度 雇用保険料率について(厚生労働省)
たとえば、賃金の総額が30万円である人が一般の事業を行う会社に勤めている場合、30万円×15.5/1,000の計算で、雇用保険料は4,650円になります。
雇用保険の場合、上記の表が示すとおり、労働者と事業主におけるそれぞれの負担割合にもさまざまなパターンがあります。
(5)労災保険料の計算方法
労災保険料は、「賃金総額×労災保険料率」で算出します。賃金総額の考え方は、雇用保険料と同じです。
労災保険の料率は、厚生労働省が示すとおり「事業の種類の分類」×「事業の種類」の組み合わせでかなり細かく決められています。
たとえば、令和6年度の建設事業の場合、「33舗装工事業」と「34鉄道又は軌道新設事業」が9/1,000であるのに対して、「31水力発電施設、ずい道等新設事業」は34/1,000という大きな料率です。
また、労災保険料率は年度によっても変わりますので、厚生労働省のホームページなどから最新の情報を確認する必要があります。
<参考>:令和8年度の労災保険率について(令和7年度から変更ありません)(厚生労働省)
例として賃金の総額が30万円である人が舗装工事業に従事していた場合、30万円×9/1,000で2,700円の労災保険料になります。労災保険料は全額が事業主負担であり、従業員の給与から差し引く必要はありません。
<参考>:労災補償(厚生労働省)
なお、国や労働保険組合などでは、雇用保険と労災保険をまとめた「労働保険」として制度内容を紹介することが多くあります。計算方法は、以下の式で解説されることもありますので参考にしてください。
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<参考>:労働保険料の計算例(大阪労働局)
賞与計算における社会保険料の計算方法
次に、従業員に賞与(ボーナス)を支給する場合を見ていきましょう。
従業員に賞与を支給する場合、賞与からも社会保険料を差し引きます。賞与における健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の計算で使用するのが、『標準賞与額』です。
標準賞与額とは
標準賞与額は、税込みの賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた数字です。厚生年金保険料については、1回の支給で150万円が上限となりますが、もし賞与が同月に2回以上支給された場合は、合算した額の上限が150万円になるという考え方です。
標準賞与額の対象になるのは、労働者が労働の対償として受け取るもののうち、年3回以内で支給されるものです。自社製品などの現物支給も含まれますが、細かな条件については日本年金機構のページを確認してください。
<参考>:厚生年金保険の保険料(日本年金機構)
賞与における社会保険料の計算式
賞与の場合、給与計算のところで紹介した保険料率の数字を使い、以下の計算式で社会保険料を算出します。
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社会保険料の計算例
ここまで紹介した計算方法について、実際の数字を使って確認しましょう。
ここでは、月給30万円の従業員を例に、社会保険料の計算例を紹介します。なお、保険料率は地域や加入している健康保険組合によって異なりますため、あくまで一般的な例として解説していきます。
月給30万円の場合の社会保険料計算例
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【条件】
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- 健康保険料
健康保険料は、以下の計算式で算出します。
標準報酬月額30万円 × 10.00% = 30,000円
健康保険料は事業主と従業員で折半するため、従業員負担額は15,000円になります。
- 厚生年金保険料
厚生年金保険料は、以下の計算式で算出します。
標準報酬月額30万円 × 18.30% = 54,900円
厚生年金保険料も事業主と従業員で折半するため、従業員負担額は27,450円です。
- 雇用保険料
雇用保険料は、以下の計算式で算出します。
30万円 × 5/1,000 = 1,500円
雇用保険料は、労働者負担分を給与から控除します。
- 従業員負担額の合計
上記条件における従業員負担額の合計は、以下のとおりです。
・健康保険料:15,000円
・厚生年金保険料:27,450円
・雇用保険料:1,650円
合計:44,100円
つまり、月給30万円の従業員の場合、社会保険料として約4万4,000円が給与から控除されることになります。
給与計算の実務では、実際の標準報酬月額や保険料率を確認したうえで計算することが重要です。また、保険料率は毎年見直しが行われる可能性があるため、必ず最新の保険料額表や料率表を参照するようにしてください。
社会保険料控除とは
社会保険料控除は、人事給与部門の大事な業務である“年末調整”と非常に関連性が高いものです。担当者は、年末調整シーズンに生じる従業員からの問い合わせに備えて、社会保険料控除がどのようなものかを知っておく必要があるでしょう。
社会保険料控除とは
社会保険料控除は、被保険者が自分もしくは配偶者、その他親族の社会保険料をおさめたときに受けられる所得控除の総称です。
この控除の対象となる社会保険料は、ここまで解説してきた健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険に限りません。以下のように全部で14種類の保険料や掛金が該当します。
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(1)健康保険、国民年金、厚生年金保険および船員保険の保険料で (2)国民健康保険の保険料または国民健康保険税 (3)高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料 (4)介護保険法の規定による介護保険料 (5)雇用保険の被保険者として負担する労働保険料 (6)国民年金基金の加入員として負担する掛金 (7)独立行政法人農業者年金基金法の規定により (8)存続厚生年金基金の加入員として負担する掛金 (9)国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、 (10)労働者災害補償保険の特別加入者の規定により負担する保険料 (11)地方公共団体の職員が条例の規定によって組織する (12)国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律の公庫等の (13)健康保険法附則または船員保険法附則の規定により被保険者が (14)租税条約の規定により、当該租税条約の相手国の社会保障制度
<引用>:No.1130 社会保険料控除(国税庁)
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年末調整と社会保険料控除
年末調整では、社会保険料控除に関する事務手続きが発生します。
社会保険料控除の大きなポイントは、従業員本人が、配偶者やその他親族といった自分以外の社会保険料を給与天引き以外の方法で支払っていた場合、事業者側ではその情報を把握できない点です。
そのため、年末調整では従業員本人に以下の書類の提出や記入をしてもらい、事業者側では把握できない「誰の何をいくら支払ったか?」という情報を教えてもらう必要があります。
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(1)給与所得者の保険料控除申告書 (2)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 (3)社会保険料控除証明書
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社会保険料の控除証明書は、保険料の種類ごとに書類提出の必要・不要の対応が異なります。また、場合によっては多くの証明書を用意する必要も出てきます。そのため、人事給与部門では早めの証明書収集・準備の周知をする必要があるでしょう。
社会保険料が免除されるケース
次に、社会保険料が免除されるケースを見ていきましょう。
従業員が産前産後休業または育児休業等を取得した場合は、従業員による申し出と事業主による申請書の提出によって、事業主と従業員双方の社会保険料の納付が一定期間免除されます。なお、ここでいう社会保険料とは、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の3つです。
<参考>6-4:育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき(日本年金機構)
具体的には、産前産後休業(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)+産後56日)のうち、妊娠もしくは出産を理由に勤務しなかった期間が対象になります。この期間に従業員本人が申請することで、産休の開始月~産休終了予定日の翌日の属する月の前月まで、社会保険料が免除になります。
たとえば、ある従業員が以下のようなスケジュールで産前産後休業を取得した場合、6月~8月分の社会保険料が免除になるというわけです。
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【出産予定日】7月15日 【産前休業の期間】6月5日~7月15日 【産後休業】7月16日~9月10日 【社会保険料の免除期間】6月~8月分
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申請書類は、被保険者の産前産後休業期間中または産前産後休業終了後の終了日から起算して1カ月以内の期間中に、事業主が管轄の年金事務所もしくは日本年金機構の事務センターに提出する必要があります。届出様式や手続きなどは、日本年金機構のページで確認しておきましょう。
<参考>:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き(日本年金機構)
社会保険料の計算をするうえでの注意点
社会保険料の計算は、給与計算業務のなかでも特に正確性が求められる業務です。計算ミスが発生すると、従業員への追加徴収や返金対応が必要になるだけでなく、社会保険手続きの修正などが発生する可能性もあります。
社会保険料を計算する際にまず注意したいのが、「保険料率」です。
保険料率は、加入している健康保険組合や事業の種類などによって異なります。たとえば、協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに設定されており、地域ごとの医療費水準などを踏まえて決定されています。そのため、同じ給与額であっても、事業所の所在地によって健康保険料が異なる場合があるのです。
また、社会保険料率は定期的に改定されることにも注意が必要です。
健康保険料率や介護保険料率、雇用保険料率などは改定が行われることがあるため、前年の料率をそのまま使用してしまうと誤った保険料を控除してしまう可能性があります。給与計算を行う際には、厚生労働省や日本年金機構、協会けんぽなどが公表する最新情報を確認するようにしましょう。
さらに、標準報酬月額の変更漏れにも注意が必要です。標準報酬月額は、毎年の定時決定(算定基礎届)や、一定の条件を満たした場合の随時改定(月額変更届)によって見直されます。昇給や降給があったにもかかわらず標準報酬月額を適切に変更していない場合、社会保険料の過不足が発生する可能性があります。
近年では社会保険の適用拡大も進んでおり、パート・アルバイト従業員の加入判定も複雑になっています。加入対象者の見落としは法令違反につながる可能性もあるため、勤務時間や賃金などの加入要件を定期的に確認することが重要です。
人事給与部門では、保険料率や法改正の情報を継続的に収集するとともに、給与計算システムやチェック体制を活用しながら正確な社会保険料計算を行うように心がけましょう。
社会保険料の計算を効率化する方法
前述したように、社会保険料の計算は給与計算業務のなかでも特にミスが許されない業務です。社会保険料の控除額を誤ると、従業員への影響だけでなく、会社側にも修正対応や追加手続きなどの負担が発生してしまいます。
また、社会保険料率の改定や標準報酬月額の見直しなど、定期的なメンテナンスが必要になることから、人事給与部門の担当者にとって大きな負担になりやすい業務でもあります。ここでは、社会保険料計算を効率化するための方法を紹介していきます。
方法(1)給与計算システムを活用する
社会保険料計算の効率化において、まず検討したいのが、給与計算システムの活用です。
給与計算システムを利用することで、標準報酬月額や保険料率に基づく計算を自動化できます。また、法改正や保険料率の変更に対応したアップデートが提供されるサービスも多く、担当者の負担軽減につながります。
ただし、システムの導入や運用にはコストが発生するため、自社の規模や業務内容に応じた検討が必要になるでしょう。
方法(2)
社会保険料率の改定情報を定期的に確認する
社会保険料率は毎年見直しが行われる可能性があります。
特に健康保険料率は都道府県ごとに異なりますし、協会けんぽでも毎年改定されるケースがあります。さらに、雇用保険料率についても法改正などによって変更されることが多々あります。
そのため、古い保険料率のまま給与計算を行うと控除額の誤りにつながり効率が低下してしまいますので、担当者は厚生労働省や日本年金機構などの情報を定期的に確認することが重要になります。
方法(3)業務フローの標準化を進める
社会保険料計算に関する業務が属人化している場合、担当者の異動や退職によって業務品質や効率が低下してしまう可能性があります。
そのため、「計算手順のマニュアル化」や「チェックリストの整備」、「ダブルチェック体制の構築」などを行い、業務フローの標準化を進めることが業務効率化にもつながるでしょう。
方法(4)アウトソーシングを活用する
給与計算や社会保険関連業務をアウトソーシングすることも有効な選択肢です。アウトソーシングを活用することで、担当者は保険料計算や法改正対応といった定型業務から解放され、採用・人材育成・組織開発などのコア業務に集中しやすくなるはずです。
また、専門知識を持つ事業者に業務を委託することで、計算ミスや法改正対応漏れなどのリスク低減も期待できるでしょう。
近年では、クラウドシステムとアウトソーシングを組み合わせたBPaaS(Business Process as a Service)の活用も進んでいます。自社の人事給与業務の効率化を検討している場合には、こうしたサービスの導入も視野に入れるとよいかもしれません。
社会保険料の計算に関してよくある質問
最後に、社会保険料の計算に関してよく寄せられる質問と回答を紹介していきます。
Q.残業代は社会保険料の計算対象になりますか?
はい、なります。社会保険料の計算で使用する標準報酬月額には、基本給だけでなく残業手当や各種手当なども含まれます。そのため、残業代が増加した場合には「定時決定」や「随時改定」の結果として標準報酬月額が変更される可能性があります。
Q.通勤手当は社会保険料の計算対象になりますか?
はい、対象になります。所得税では一定額まで非課税となる通勤手当ですが、社会保険料の計算では“報酬”として扱われます。そのため、通勤手当も標準報酬月額の算定対象になるわけです。
Q.賞与にも社会保険料はかかりますか?
はい、かかります。
賞与についても健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料などの対象になります。ただし賞与の場合は、標準報酬月額ではなく「標準賞与額」を用いて計算を行います。
Q.パート・アルバイトも社会保険に加入しますか?
一定の要件を満たす場合は加入対象になります。
近年は社会保険の適用拡大が進んでおり、パート・アルバイトであっても勤務時間や賃金などの条件を満たせば厚生年金保険や健康保険への加入が必要になります。
Q.社会保険料は会社と従業員でどのように負担しますか?
健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料については、原則として事業主と従業員が折半で負担します。一方、労災保険料は全額事業主負担です。また、雇用保険料は事業主と従業員の双方が負担しますが、その負担割合は事業の種類などによって異なります。
Q.社会保険料率はいつ改定されますか?
社会保険料率の改定時期は保険の種類によって異なります。たとえば協会けんぽの健康保険料率は毎年3月に改定されることが多く、雇用保険料率も法改正などによって変更される場合があります。社会保険料の計算を行う際には、必ず最新の料率を確認するようにしましょう。
Q.社会保険料の控除額を間違えた場合はどうなりますか?
社会保険料の控除額に誤りがあった場合、従業員への返金や追加徴収などの対応が必要になることがあります。また、状況によっては社会保険関連の手続きや給与データの修正も必要になります。そのため、日頃から計算結果の確認やチェック体制の整備を行うことが重要でしょう。
人事業務のアウトソーシングならラクラスへ
本記事では、社会保険料の計算方法や注意点について解説させていただきました。
人事給与部門の担当者が給与計算を担当するうえでは注意しなければならない点が多くあり、負荷が高いことがお分かりになったかと思います。
もし社会保険料を含む『人事業務における課題の解決』をお考えであれば、ぜひラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができ、コア業務に集中できるようになります。
ラクラスの特徴として、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ対応を得意としています。他社では難色を示してしまうようなカスタマイズであっても、柔軟に対応することができます。それにより、大幅な業務効率の改善を見込むことができます。
また、セキュアな環境で運用されるのはもちろんのこと、常に情報共有をして運用状況を可視化することも心掛けています。そのため、属人化は解消されやすく「人事の課題が解決した」という声を数多くいただいております。
特に大企業を中心として760社86万人以上の受託実績がありますが、もし御社でも人事の課題を抱えており解決方法をお探しでしたら、ぜひわたしたちラクラスへご相談ください。
この記事の監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
社労士試験合格後、社労士事務所勤務を経て、ソフトバンクグループのシェアードサービス企業で給与計算業務に携わるとともに人事システムの保守・運用を担う。
その後、人事業務のアウトソーシングサービスを提供する企業の立上げに参画。主に業務構築、システム運用に従事。
その他、人事領域以外のアウトソーシング企業等での勤務も経験し2019年に独立。
現在、人事・給与計算システムの導入支援を中心に社労士として顧問企業の労務面のサポートも行う。

