労災とは? 法的な定義と労災保険の給付内容について徹底解説
本記事では、労災の定義や関連する法律、給付内容などの基礎を詳しく解説します。また、実務で使える手続きの流れやポイントに加え、新任の人事労務担当者から多い質問も紹介していきます。関連業務を適切に行うために「労災とは?」という疑問を解消したい方は、ぜひ参考にしてください。
監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
人事担当者が適切な労務管理を行っていくなかでは、「労災(労働災害)を防ぐ」ということも重要になります。そして、万が一労災が起きてしまったときには、必要な手続きを迅速に行って、従業員や家族の不安や負担を減らすことも必要です。
そこで本記事では、労災の定義や関連する法律、給付内容などの基礎を詳しく解説します。記事の後半では、実務で使える手続きの流れやポイントに加え、新任の人事労務担当者から多い質問も紹介していきます。
関連業務を適切に行うために「労災」という制度をしっかり理解したい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
労災の基本的な定義
人事労務担当者が労災に関する適切な手続きや予防策を講じるためには、「そもそも労災とはなにか?」という定義から理解していく必要があります。また、人事部門では労災に関する公的な保険(労働者災害補償保険)を多く取り扱います。この保険の概要や関連法律について詳しく知ることも、業務をスムーズに行ううえで重要でしょう。
この章では、言葉の意味や法律的な観点から、労災および労災保険の定義を確認していきます。
労災とはなにか
労災とは、労働災害のことです。具体的には、業務が原因で労働者が病気にかかったり負傷をしたりすることを指します。労災について定める労働安全衛生法第2条第1項第1号では、この概念を以下のように定義しています。
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労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること
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労働安全衛生法とはなにか
上記で触れた労働安全衛生法は、企業が労災を防ぎ従業員の健康を守るうえで必ず意識すべき法律です。法律名の構成要素でもある「安全」と「衛生」には、以下の意味があります。
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【安全】労働者の負傷を防ぐこと 【衛生】労働者の疾病を防ぐこと
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労働安全衛生法の目的は、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進すること」です。労働安全衛生法では、これらの目的を達成するために、事業者に対して以下のような措置を義務付けています。なお、ここでいう事業者とは、「事業を行う者で、なおかつ労働者を使用するもの」です。
| 項目 | 概要 | 詳細・ポイント |
| ①安全管理体制の確立 | 事業規模や業種ごとに整備すべき体制が定められている |
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| ②労働者の危険または健康障害を防止するための措置 | 詳細は、労働安全衛生規則などの省令で定められている |
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| ③機械等ならびに危険物および有害物に関する規制 | 危険な作業が求められる有害物や機械などについて、製造・譲渡の制限や調査・点検の義務が定められている | |
| ④労働者の就業に当たっての措置 | 労働者を対象とする安全衛生教育の実施および一定業務に就くための資格などを定めている |
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労災保険(労働者災害補償保険)とは
労災保険は、人事労務担当者が取り扱う公的な保険の一種です。
労災保険は、先ほど労災の定義で述べた「業務上の事由」に加えて、「通勤中の事由」による労働者の負傷・疾病・障害・死亡に対して、被災者本人や遺族のために必要な保険給付を行う制度となります。
労災保険における3つの災害分類(種類)
労災保険の種類は、原因・事由および災害分類により以下の3つに分けられます。
| 保険 | 原因・事由 | 災害分類 | 概要 |
| 労災保険 | 仕事によるもの | 業務災害 | 労働者が業務を要因として被った負傷、疾病、障害または死亡のこと |
| 複数業務 要因災害 |
複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因として被った負傷、疾病、障害または死亡のこと | ||
| 通勤によるもの | 通勤災害 | 通勤によって労働者が被った負傷、疾病、障害または死亡のこと |
<出典>:労災保険給付の概要<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
災害分類の1つである「複数業務要因災害」は、副業・兼業を行う労働者が増えるなかで、2020年9月1日より新たに導入された種類となります。
<参考>:複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説<PDF>(厚生労働省)
厚生労働省では、同じく労働者の疾病等に対して給付を行う「健康保険」との違いおよび事由・災害分類について、以下の図でわかりやすく紹介しています。

<引用>:労災保険給付の概要<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
たとえば従業員が、仕事中にそれが要因と考えられる病気やケガを負えば「労働災害による労災保険」であり、通勤中の事故などでケガなどをすれば「通勤災害による労災保険」の給付対象になります。一方で、仕事とは関係のない持病での通勤や休日に負ったケガなどに対しては、「健康保険」の給付対象になるわけです。
なお、職場で労災が発生した場合、事業主は労働基準法の定めにより、補償責任を負わなければなりません。しかし、そこで労災保険による給付が行われると、事業主は給付額の範囲内で労働基準法上の補償責任を免れることになります。
労災保険における具体的な保険給付の種類と概要については、次章でも詳しく紹介していきます。
労災保険における給付の種類と概要
労災保険では、以下のように様々な対象への給付を用意しています。この章では、各種類の概要をわかりやすく解説します。
| 要因・事由 | 状態 | 給付の種類 | |
| 業務災害・ 複数業務要因災害・ 通勤災害による 傷病等 |
負傷・疾病 | 療養(補償)等給付 | 療養の給付 |
| 療養の費用 | |||
| 休業(補償)等給付 | |||
| 傷病(補償)等年金 | |||
| 死亡 | 遺族(補償)等給付 | 年金 | |
| 一時金 | |||
| 葬祭料等(葬祭給付) | |||
| 治ゆ (症状固定) |
障害(補償)等給付 | 年金 | |
| 一時金 | |||
| 介護(補償)等給付 | |||
| 定期健康診断等の 異常の所見 |
二次健康診断等給付 | ||
<引用>:労災保険給付の概要<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
(1)【負傷・疾病】労災保険給付の種類
業務災害・複数業務要因災害・通勤災害による負傷・疾病を要因とする場合、以下の3つのうちいずれかの給付対象になる可能性があります。
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それぞれ簡単に解説していきます。
- 療養(補償)等給付(療養の給付・療養の費用)
療養(補償)等給付は、業務災害・複数業務要因災害・通勤災害のいずれかで負傷・疾病になった労働者が療養を受けるときに給付されるものです。この制度では、利用する病院・医療機関等ごとに、以下の2種類の給付制度を設けています。
【療養の給付】労災病院や労災保険指定医療機関等で療養を受けるとき
【療養の費用】労災病院や労災保険指定医療機関等以外で療養を受けるとき
療養(補償)等給付は、治療に必要な費用(診察、薬剤、処置、入院、移送等)について、治ゆ(症状固定)まで給付されます。
<参考>:療養(補償)等給付の請求手続<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
<参考>:労災保険給付の概要<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
- 休業(補償)等給付
休業(補償)等給付は、労働者が業務もしくは通勤が原因で負傷・疾病による療養のために労働できなくなったとき、その理由から賃金を受けられない場合に第4日目から給付されるものです。この制度では、休業の初日から第3日目までを“待機期間”と呼びます。事由ごとに以下の2種類のいずれかが給付される形です。
【業務災害の場合】休業補償給付
【複数業務要因災害もしくは通勤災害の場合】休業給付
<参考>:休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
- 傷病(補償)等年金
傷病(補償)等年金は、業務もしくは通勤が原因となった負傷・疾病の療養開始後1年6ヵ月を経過した日またはその日以後、以下の要件に該当する場合に、支給される給付です。
① その負傷または疾病が治っていないこと
② その負傷または疾病による障害の程度が傷病等級表の傷病等級に
該当すること
傷病(補償)等年金についても、以下の事由ごとに給付の名称が異なります。
【業務災害の場合】傷病補償年金
【複数業務要因災害の場合】複数事業労働者傷病年金
【通勤災害の場合】傷病年金
他の制度と同様に、業務災害の場合は「傷病補償年金」、複数業務要因災害または通勤災害の場合は「傷病年金」として支給されます。
<参考>:休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
(2)【死亡】労災保険給付の種類
労働者が業務災害・複数業務要因災害・通勤災害による傷病等による死亡で要件に該当した場合、以下のいずれかの給付が行われます。
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それぞれ詳細を見ていきましょう。
- 遺族(補償)等給付(年金・一時金)
遺族(補償)等給付とは、業務または通勤災害が原因で亡くなった労働者の遺族に対して給付されるものです。具体的な名称は、以下のように死亡につながった災害事由ごとに異なります。
【業務災害の場合】遺族補償給付
【複数業務要因災害】複数事業労働者遺族給付
【通勤災害の場合】遺族給付
この給付の場合、被災者本人の死亡にともない給付される特徴から、「受け取ることができる遺族が誰もいない」といったケースを鑑み、一時金という仕組みも用意されています。年金と一時金における支給要件の主な違いは、以下のとおりです。
【年金】
労働者が死亡したとき
【一時金】
労働者が死亡し、遺族(補償)等年金を受け取る遺族がいないとき等
<引用>:労災保険給付の概要<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
- 葬祭料等(葬祭給付)
葬祭給付は、被災者本人の葬祭を行なった遺族などに対して給付されるものです。労災発生事由ごとの名称は、以下のとおりになります。
【業務災害の場合】葬祭料
【複数業務要因災害の場合】複数事業労働者葬祭給付
【通勤災害】葬祭給付
なお、被災者本人に葬祭を執り行う遺族がなく、企業が社葬を行なった場合、葬祭給付はその会社に対して支給されることがあります。
<参考>:遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
(3)【治ゆ(症状固定)】労災保険給付の種類
業務または通勤が原因で負傷・傷病を負い、治ったときに身体に一定の障害が残った場合、障害等級に応じて以下のいずれかの年金・一時金が支給されます。
【障害等級第1級から第7級に該当するとき】
障害(補償)等年金、障害特別支給金、障害特別年金
【障害等級第8級から第14級に該当するとき】
障害(補償)等一時金、障害特別支給金、障害特別一時金
上記の「特別」と記載されているものは、各等級の障害(補償)等年金もしくは一時金に上乗せ支給となるものです。
なお、障害補償年金および一時金と、これまで紹介した療養・休業補償または傷病補償年金との関係は、以下のとおりになります。

<引用>:わかりやすい障害補償年金のしおり 令和7年度<PDF>(人事院職員福祉局補償課)
<参考>:障害(補償)等給付の請求手続<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
<参考>:労災保険給付の概要<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
(4)【介護】労災保険給付の種類
介護(補償)等給付とは、先述の障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の受給者のうち、以下のいずれかに該当する人が現に介護を受けている場合に支給されるものです。
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現に介護を受けている場合、事由に応じて以下の給付が行われます。
【業務災害の場合】介護補償給付
【複数業務要因災害の場合】複数事業労働者介護給付
【通勤災害の場合】介護給付
<参考>:介護(補償)等給付の請求手続<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
(5)【定期健康診断等の異常初見】労災保険給付の種類
二次健康診断等給付は、業務による過重な負荷が原因で起こり得る脳・心臓疾患を防ぐために設けられた給付です。
この制度では、職場の一次健康診断(定期健康診断等)で異常の所見が認められた場合に、心臓・脳血管の状態を把握するための二次健康診断および脳・心臓疾患の発症を防ぐ目的の特定保健指導を1年度内に「1回・無料」で受診できるようにしています。
二次健康診断等給付は、脳・心臓疾患の予防的観点から設けられた制度であるため、一般の事由(労働災害・複数業務要因災害・通勤災害)とは大きく異なる以下の3要件をすべて満たしたときに給付が行われる形です。
① 一次健康診断の結果、異常の所見が認められること
② 脳・心臓疾患の症状を有していないこと
③ 労災保険の特別加入者でないこと
<引用>:労災保険二次健康診断等給付(厚生労働省)
上記の①~③には、さらに細かな要件が設けられています。労災保険二次健康診断等給付の手続きをする際には、厚生労働省が示す以下のページを必ず確認してください。
<参考>:労災保険二次健康診断等給付(厚生労働省)
労災発生時における保険給付申請の流れと
必要書類
労働者災害補償保険法施行規則23条1項では、保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。と定めています。
そのため、労働者から労災(業務災害・複数業務要因災害・通勤災害)の報告があった場合、人事労務担当者は、従業員の状況に応じた適切な手続きを行わなければなりません。
この章では、労災発生時における基本的な手続きの流れと必要書類、提出先などの原則を解説していきます。
労災発生時における保険給付申請の基本的な流れ
従業員が労災により負傷や疾病にかかるなどの事由から保険給付を請求する場合、以下の流れで手続きが進められていきます。
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① 労災の初動対応を行う
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上記のなかで人事労務部門に特に関係する項目は、①②③です。ポイントを詳しく見ていきましょう。
①初動対応を行う
労災が起きた場合にまず行う必要があるのが、以下の2つの初動対応です。
・被災者本人の救護と医療機関への連絡
・事故状況のヒアリングと記録
たとえば、従業員が製造現場の事故でケガを負った場合、被災者本人の救護を最優先に行います。また、外傷がなく会話ができる状態であっても、しばらく時間が経ってから痛みなどの症状がでてくるかもしれません。したがって原則は、労災保険から直接給付が行われる労災保険指定医療機関等の受診を案内する必要があるでしょう。
人事労務部門では病院に付き添わず、被災者本人の単独や現場の上司などと受診をしてもらう際には、通常の受診で使っている健康保険証ではなく「労災による受診」になる旨を伝える必要があります。
救護と受診の段取りを終えたら、次は労災の申請書類に記載する情報を集めるために、被災者本人もしくは同僚などから労災の発生日時と状況をヒアリングします。そこでたとえば「製造現場でトラブルが生じた」とか「出張中の社用車で交通事故に遭った」といった状況の場合、写真に日時を入れて残しておくことも重要です。
②所轄の労働基準監督署長に対して労災発生を報告する
初動対応を終えたら、次は労災が起きたことを所轄の労働基準監督署に報告します。これは、労働安全衛生法第100条および労働安全衛生規則第97条で定められた事業主の義務です。具体的には、以下の3つのいずれかが発生したとき遅滞なく労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出します。
(1)労働者が労働災害により死亡し、又は休業したとき
(2)労働者が就業中に負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、
又は休業したとき
(3)労働者が事業場内又はその附属建設物内で負傷、
窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したとき
<引用>:労働者死傷病報告(厚生労働省)
なお、令和7年(2025年)1月1日施行の制度改正により、労働者死傷病報告の電子申請が義務化されました。申請時は、ぜひ以下のページから詳細を確認してください。
<参考>:労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されました(令和7年1月1日施行)
③労災の請求書を所轄の労働基準監督署長に提出する
労災保険の場合、たとえば通勤中の事故でケガを負った従業員が救急車などで直接病院に向かうこともあります。この場合、病院側ではそのケガが「本当に通勤災害によるものなのか?」の判断ができません。
そこで被災者本人が給付を受けるためには、会社側が労災保険給付の請求書のなかで、通勤中や業務上の事故発生であることを証明する「事業主証明」が必要となります。事業主証明には、書類の記載内容に不備がないことを示す意味合いもあるようです。
基本的な流れとしては、企業側で事業主証明した書類を会社から所轄の労働基準監督署に提出するのが一般的です。
しかしそこで、従業員の請求内容に疑義がある場合などは、事業主証明をしないことも可能です。この場合、被災者本人は、「事業主からの証明がない労災保険給付の請求書」のほかに、事業主が記載した「証明拒否理由書」を添えて労働基準監督署に提出する流れになります。
事業主が証明拒否理由書を記入する際には、請求を行う被災者本人および遺族に対して理由を詳しく説明する姿勢が求められるでしょう。
なお、労災保険における事業主側の手続きは、以下のページでも解説されています。
これからはじめて手続きをする方は、ぜひ確認しておいてください。
<参考>:労災保険の手続(事業主用)(厚生労働省・宮城労働局)
労災保険における給付請求書の様式と提出先
労災保険の給付を請求する際に使用する様式は、以下の表のとおり受ける給付の種類ごとに異なります。
| 給付の種類 | 請求書の 様式 |
請求権の 時効 |
提出先 | 関連URL |
| 療養(補償)等給付 |
療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書(5号) |
被災労働者に対する金銭給付ではないため、被災労働者に対して直接時効の問題は生じません | 病院や薬局等を経て所轄労働基準監督署長 | 療養(補償)等給付の請求手続 |
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療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(7号) |
療養の費用の支出が具体的に確定した日の翌日から2年 | 所轄労働基準監督署長 | ||
| 休業(補償)等給付 |
休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書(8号) |
療養のため労働することができないため賃金を受けない日の翌日から2年 | 休業(補償)等給付・傷病(補償)等年金の請求手続 | |
| 障害(補償)等給付 |
障害補償給付・複数事業労働者障害給付支給請求書(10号) |
傷病が治ゆした日の翌日から5年 | ||
| 遺族(補償)等給付 |
遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書(12号)遺族年金支給請求書(16号の8) |
被災労働者が亡くなった日の翌日から5年 | ||
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遺族補償一時金・複数事業の労働者遺族一時金支給請求書(15号) |
被災労働者が亡くなった日の翌日から5年 | |||
| 葬祭料等(葬祭給付) |
葬祭料又は複数事業労働者葬祭給付請求書(16号) |
被災労働者が亡くなった日の翌日から2年 |
遺族(補償)等給付・葬祭料等(葬祭給付)の請求手続 | |
| 介護(補償)等給付 | 介護補償給付・複数事業労働者介護給付・介護給付支給請求書(16号の2の2) | 介護を受けた月の翌月の1日から2年 | ||
| 二次健康診断等給付 | 二次健康診断等給付請求書(16号の10の2) | 労働者が一次健康診断の結果を了知し得る日の翌日から2年 | 病院または診療所を経て所轄労働局長 | 労災保険二次健康診断等給付 |
<参考>:労災保険給付の概要<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
また、労災保険の場合、それぞれに異なる時効が設定されています。労災手続きを行う人事労務の担当者は、各給付について「どの様式を使い、いつまでに、どこへ請求するのか?」をおさえたうえで、適切な流れで手続きを進める必要があるでしょう。
労災に関するよくある質問
労災は、さまざまな場面で行うとともに、被災労働者の健康や障害に関わる可能性もあることから、人事労務担当者にとっても注意すべき点が多いデリケートな手続きです。ここでは、新任の人事労務担当者から問い合わせが多い労災に関するよくある質問と回答の一部を紹介しましょう。
Q.労災はどのような基準で認定されるものですか?
労災(業務災害・複数業務要因災害・通勤災害)が認定されるかどうかの判断は、厚生労働省が示す要素や考え方から総合的に行うものです。たとえば、労働者の負傷が「業務上のものである」と認められるためには、以下の3つのパターンに該当するかを丁寧に見ていくことになります。
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① 事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
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①の「事業主の支配・管理下で業務に従事している場合」については、所定労働時間や残業時間に事業場の施設内で業務従事中に起きた災害は、被災労働者の行為や事業場内の設備・施設などの管理状況が要因であると考えるのが自然です。そのため、特段の事情がない限り、業務災害であると認められます。
ただし、そこで仮に労働者が私用行為を行なっていたり、業務を逸脱する恣意的行為をしていたりして、それが被災原因であると見られる場合は、労災の対象にならない可能性が高いです。このほかに、台風や地震といった天災地変による被災の場合も、業務災害とは認められないケースがあります。
厚生労働省が示す以下のページには、労災の認定基準につながる考え方が詳しく記載されています。ぜひ参考にしてください。
<参考>:労災認定の考え方(業務災害・複数業務要因災害・通勤災害)(厚生労働省・福井労働局)
Q.「治ゆ」とは具体的にどういう状態ですか?
労災保険では、完治までは至らなくても傷病の状態が安定し、治療を続けてもこれ以上改善しない状態を「治癒(治ゆ)」や「症状固定」と呼びます。
たとえば、業務災害でケガをした従業員が会社を休んで治療をする場合、病院や調剤薬局などに支払うための療養(補償)等給付および休業(補償)等給付が支給されるのが一般的です。
しかしそこで、これ以上の治療をしても改善しない「治ゆ」の状態になり労災保険が定める障害が残った場合、療養(補償)等給付の代わりに障害(補償)等給付の対象になります。
なお、厚生労働省の資料などでは、治ゆや症状固定の状態を「治った」と表現しています。被災した従業員に説明などをする際には、世間一般でもよく使われる「治った」の労災保険における定義や考え方について、以下ページのパンフレットなどを見ながら確認しておく必要があるでしょう。
<参考>:労災保険における傷病が「治ったとき」とは(厚生労働省)
Q.人事労務担当者が労災手続きを怠った場合、ペナルティはありますか?
従業員の通勤経路や事業場などで災害が起きたにも関わらず、所轄の労働基準監督署に労働者死傷病報告の提出を怠ることを、「労災隠し」と呼びます。企業が労災隠しをした場合のペナルティは、50万円以下の罰金です。
一方で、請求書の提出にあたり事業主証明がない場合でも申請自体は可能ですが、追加確認(事業主への聴取等)が行われることがあります。実務上は、事実関係を整理したうえで、可能な範囲で協力する姿勢が重要です。事業主証明と証明拒否理由書の提出が両方とも行われない場合、事業主に対する調査の一環として、“事業聴取”などが実施されることがあります。
ただし、被災した労働者などの労災保険申請について、事業主には協力をしなければならない義務があります。そこで事業主証明および証明拒否理由書の両方を提出しなければ、労働基準監督署および従業員などからの印象が悪くなります。どうしても協力できない明確な理由がある場合は、申請を行う従業員などに丁寧な説明をする必要があるでしょう。
<参考>:「労災かくし」の排除に向けて(厚生労働省・山口労働局)
人事労務のアウトソーシングならラクラスへ
本記事では、労災の定義や関連する法律、給付内容などの基礎を詳しく解説してきました。労災の手続きに関しては多くのやるべきことや注意点があるため、人事部のなかでも負担に感じている方は多いのではないでしょうか。
もし人事労務における業務効率化をお考えであれば、ラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができコア業務に集中できるようになります。
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この記事の監修者:監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
社労士試験合格後、社労士事務所勤務を経て、ソフトバンクグループのシェアードサービス企業で給与計算業務に携わるとともに人事システムの保守・運用を担う。
その後、人事業務のアウトソーシングサービスを提供する企業の立上げに参画。主に業務構築、システム運用に従事。その他、人事領域以外のアウトソーシング企業等での勤務も経験し2019年に独立。
現在、人事・給与計算システムの導入支援を中心に社労士として顧問企業の労務面のサポートも行う。
