私傷病休職とは? 制度の基本から給与手当の詳細まで徹底解説
本記事では、私傷病休職制度の概要と法律上の取り扱い、一般的な手続きの流れを解説します。また、復職および解雇・退職に関する適切な対応のポイントも紹介していきます。これから私傷病休職制度の設計・導入をしようと考えている担当者の方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
仕事以外の要因でケガや病気になり、労務に従事できなくなった従業員を退職や解雇から保護するためには、「私傷病休職制度」を導入するとよいでしょう。ただし、私傷病は「業務外で起きたケガや病気」が対象であることから、非常に繊細で複雑な制度になります。
そのため、労使の双方が納得できる制度を設計するためには『私傷病休職がどのようなものなのか』といった基本から理解していくことが重要です。
そこで本記事では、私傷病休職制度の概要と法律上の取り扱い、一般的な手続きの流れを解説します。記事の後半では、復職および解雇・退職に関する適切な対応のポイントも紹介していきます。
これから私傷病休職制度の設計・導入をしようと考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
私傷病休職とは?制度の基本を理解する
私傷病休職の制度を設計・運用するうえでは、その意味や目的、法律上の位置づけなどを理解しておく必要があります。ここでは、私傷病休職制度の基礎知識として一般的な定義・目的・法的根拠を確認しましょう。
私傷病休職とは
私傷病とは、業務外のいわゆるプライベートで発生したケガや病気のことです。そこには持病の悪化も含まれます。
私傷病休職は、それら私傷病によって働けなくなった従業員を会社に在籍させたままの状態で一定期間の就労を免除し、休ませる制度の総称です。
私傷病と労働災害の違い
私傷病休職の定義や特徴を理解するうえでは、同じく従業員の病気やケガで働けなくなったケースが対象となる「労働災害による休職」との違いを見ていくと理解しやすいでしょう。
労働災害は、業務が原因で労働者が負傷や病気、死亡に至ることです。厚生労働省のサイトでは、労働災害を以下のように定義しています。
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労働災害とは、業務が原因で労働者が負傷したり病気になったりすることをいいます。具体的には、「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること(労働安全衛生法第2条第1項第1号)」をいいます。
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労働災害により従業員が会社を休んだ場合、会社が「休業補償給付支給請求書」を労働基準監督署に提出することで、第4日目から休業補償給付が支給されます。また、労働災害による入院や障害を負い要件に該当すれば、これらも保険給付の対象になるでしょう。こうした手続きは、国が定めるルールのなかで行われるものとなります。
一方で私傷病の場合は業務外のプライベートの話になるため、労働災害の対象にはなりません。したがって、私傷病休職は国が定めたルールではなく各企業が独自に設ける制度になります。
<参考>:労働災害が発生したとき(厚生労働省)
私傷病による解雇と賃金支払いの原則
そもそも、企業と従業員の労働契約は「労働力の提供に対する賃金の支払い」により成り立つものです。そこで仮に従業員が休日に大怪我をして長期間の休職をせざるを得なくなった場合、労働力の提供が止まるわけですから、企業は自社の解雇規程にもとづき「会社を辞めてもらう」という選択をすることも、制度上は可能なケースが多いでしょう。
また、私傷病により休む場合、まず年次有給休暇を取得し、消化後は欠勤扱いとなります。その後、会社の判断で私傷病休職制度を適用することがあります。
しかし、その従業員が長年自社の業績に大きな貢献をしていたり、本人にはまったく責任がない不慮の事故でケガを負ったりした場合、会社側としても即座に解雇通告をすることをためらう部分もあるでしょう。
こうしたなかで各社が一定期間の解雇猶予の措置として設けるのが、今回のテーマである「私傷病休職」という独自の仕組みになります。
私傷病休職の法的根拠
私傷病休職は法律で定められた制度ではないため、具体的なルールは各社が独自に就業規則のなかで決めるものとなります。
ただし、私傷病休職は先述のとおり解雇とも大きな関係があることから、非常に複雑で繊細な制度です。
就業規則は原則として簡単に変更できるものではなく、制度の導入時は内容の設計や就業規則への具体的な規定方法を慎重に検討する必要があります。
私傷病休職制度の一般的なメリット・デメリット
私傷病休職制度のメリット・デメリットは、各企業が設計した制度内容の影響を受けるものです。しかし、一般的には私傷病休職制度の適切な活用により以下のようなメリット・デメリットが生じることが多いでしょう。
| 私傷病休職制度のメリット | |
| 企業のメリット | 従業員のメリット |
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| 私傷病休職制度のデメリット | |
| 企業のデメリット | 従業員のデメリット |
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私傷病休職制度における一般的な期間
私傷病休職制度の“期間”についても、先述のとおり各社が独自に設計できるものです。ただし、運用中に生じる想定外の問題などを最小限にするためには、多くの企業が設定している期間を参考にすることも必要です。ここでは、一般的な期間の決め方と注意点を見ていきましょう。
私傷病休職制度における一般的な期間
私傷病休職制度の期間は、勤続年数に応じたものになることが多いです。具体的には、以下のようなイメージでしょう。
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また、私傷病休職制度には上限も必要です。一般的には2年程度の上限とするケースが多いようです。
私傷病休職制度の期間設計における2つの注意点
私傷病休職制度の期間を決めるときには、以下の2点に注意する必要があります。
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それぞれポイントを簡単に見ていきましょう。
・休職制度が濫用される可能性
私傷病は、従業員の業務外の過ごし方や自己管理の影響を受けて発生する可能性があるものです。そこで注意しなければならないのが、休職制度が濫用される問題です。
たとえば、ある従業員が自分の体力・能力をはるかに超えた危険性の高いアクティビティなどを休日に行っていてアクティビティ中に大怪我を負って入院となれば、私傷病休職制度の対象になるかもしれません。
しかし、そこで注意点があります。それは、大怪我をした従業員の身体が健康な状態に戻り復職したあとに、再びそのアクティビティを行った場合、さらなる大怪我を負うことで2度目の私傷病休職対象になる可能性がでてくる点です。
会社は原則として、労働義務のない休日の個人行動に関与することはできません。したがって、大怪我を負った従業員に対して「今後アクティビティはもう実施しないでほしい」などの要求もできないわけです。
そのような状況のなかで私傷病休職制度が濫用される問題を防ぐためには、期間について以下のような“累積”や“通算”の考え方を取り入れるのも一つの方法でしょう。
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・雇用形態などで不合理な待遇差が生じる可能性
私傷病休職制度を設計する場合、同一労働同一賃金の考え方も大切にしなければなりません。
同一労働同一賃金とは、わかりやすくいえば正社員と非正規労働者との間の不合理な待遇差を解消しなければならないということです。
たとえば、「勤続3年以内⇒6ヵ月、勤続5年以内⇒1年、勤続5年超 ⇒ 1年半」という期間は、正社員だけでなく契約社員・パートタイマー・アルバイトといった非正規労働者にも適用されなければなりません。
そこで仮に、「正社員は6ヵ月であるのに対して、アルバイトは2ヵ月」といった待遇差がある場合、同一労働同一賃金の考え方に反することになるため注意しなければなりません。
<参考>:同一労働同一賃金特集ページ(厚生労働省)
私傷病休職中の給与・傷病手当金・
社会保険料について
私傷病休職制度を導入する場合、休職期間中の給与・賞与の払い方や社会保険料の負担についても設計しなければなりません。
また、私傷病で従業員が仕事を休む場合、国が定める傷病手当金の支給対象になるケースがあります。
ここでは、私傷病休職中における給与や賞与および社会保険料の考え方と、傷病手当金の基本ルールを確認しましょう。
私傷病で休職中の給与と賞与の支払い
従業員が私傷病で休んでいる期間は、先述のとおり「会社に対して労働力を提供できていない状態」です。
そのため、極論をいえば「私傷病休職の期間中の解雇は猶予されるが、給与や賞与の支払いはない」というルールも設定可能となります。ただし、多くの企業では、私傷病休職をしている従業員に、「私傷病休職手当」や「病気休暇手当」を支給しているようです。
休職期間中の給与・賞与・各種手当に関するルールや計算式については、必ず就業規則に記載するようにしましょう。
<参考>:就業規則を作成しましょう(厚生労働省)
私傷病休職と傷病手当金
傷病手当金とは、被保険者である従業員が病気やケガの影響で会社を休み、事業主から十分な報酬が得られないときに支給される制度です。この制度での「適用要件」「期間」「支給額」「支給停止(支給調整)されるケース」などを簡単に見ていきましょう。
・傷病手当金の支給要件
傷病手当金は、以下の4つの要件すべてに該当した場合に支給されます。
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<出典>:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
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私傷病による休職は業務外の事由であることから、傷病手当金の支給要件に該当する可能性が高いでしょう。一方で先ほど触れた労働災害や通勤災害、美容整形など、病気とみなされないものは支給対象になりません。
・傷病手当金の支給期間
傷病手当金の支給期間は、下図のとおり支給開始日から通算して1年6ヵ月までです。
休職中に出勤期間がある場合は、その前後の欠勤期間を通算します。

<引用>:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
・傷病手当金の支給額
傷病手当金における1日あたりの金額は、「支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準月額を平均した額」です。ここでいう支給開始日とは、最初に給付が支給される日になります。
ただし、以下のケースに該当する人は、原則とは異なる考え方で支給額が決まります。
| 支給開始日以前の期間が 12ヵ月に満たない場合 |
支給開始日以前に 12ヵ月の標準報酬月額がある場合 |
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①支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均 ②標準報酬月額の平均値 ※当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額 |
支給開始日以前の12ヵ月の各月の標準報酬月額を合算して平均額を算出 |
<出典>:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
・傷病手当金が資格停止(支給調整)されるケース
傷病手当金は、以下のケースに該当した場合に支給停止(支給調整)となります。
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<出典>:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
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傷病手当金には、他にもさまざまな注意点があります。私傷病休職中の従業員について傷病手当金の手続きをする場合は、各健康保険のホームページで詳細を確認するようにしてください。
私傷病休職中における社会保険料の取り扱い
社会保険料の負担は、私傷病休職中も発生します。そこで会社側が従業員負担分を免除しない場合、休職前と同様に企業と休職者本人で2分の1ずつ負担するのが一般的です。
しかし、私傷病休職中に給与の支払いが行われない場合、会社は「その月の給与から社会保険料を控除する」という手続きができません。そのような状況で休職中の従業員に社会保険料を負担してもらうためには、以下のいずれかの方法をとるのが一般的でしょう。
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社会保険料の種類や計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひチェックしてみてください。
【関連記事】社会保険料の計算方法は?|給与計算と賞与計算の違い、保険料の種類や注意点を解説
私傷病による休職までの一般的な流れと
手続き
一般的な私傷病休職では、制度を利用するまでに以下の3ステップで手続きを進めていきます。
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ステップ(1)有給休暇を利用してもらう ステップ(2)従業員が診断書を提出する ステップ(3)会社が休職命令を出す
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それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
ステップ(1)有給休暇を利用してもらう
多くの企業では、まず年次有給休暇を取得してもらう運用が一般的です。そのうえで、有給休暇がすべて消化された後に私傷病休職制度の適用に入る流れとなります。その理由としては、年次有給休暇を使えば仕事を休んでいる間の給与を支払うことができるからで、これは従業員にとってもメリットが大きいでしょう。
ただし、従業員が有給消化ではなく私傷病休職制度の利用を希望する場合は、その求めに応じる必要があります。
ステップ(2)従業員が診断書を提出する
私傷病休職制度の適用判断では、医師の診断書が必要です。そこで重要となるのが、「就労が可能かどうか?」という記載です。従業員に診断書の提出を求める場合は、このポイントも案内したほうがよいでしょう。
また、私傷病休職制度は、会社側が労働者の異変に気づいて利用に至るケースもあります。この場合は、本人とのヒアリングや産業医との相談を経て、医師の受診を勧める流れが一般的でしょう。
しかし、たとえば従業員が「なるべく仕事を休みたくない」と考えて、医師の受診を拒否することがあるかもしれません。一方で企業側には“安全配慮義務”があります。安全配慮義務とは、従業員の心身の健康や生命を守るために、必要な配慮が求められるということです。
従業員本人が私傷病休職制度を希望するかどうかにかかわらず、異変が生じていながらも受診を拒否されることを防ぐためには、就業規則にその規程を記載しておく必要があるでしょう。
ステップ(3)会社が休職命令を出す
私傷病休職は、従業員が要件に該当した場合に会社が命令を下してはじめて開始されるものです。年次有給休暇の消化を終えたら、自動で切り替わるものではありません。
会社が休職命令を出す場合、いわゆる人事異動の辞令と同様に書面の休職命令書を作成・交付します。書面を作成することの重要性は、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてチェックしてみてください。
【関連記事】発令とは?人事異動の内示・辞令との違いや用語の使い方、適切な手続きの流れを詳しく解説
私傷病休職からの「復職」と「退職・解雇」について
私傷病休職制度を導入する際には、会社を休んでいる従業員の復職および、会社を辞めることへの判断基準や手続きの設計も必要です。ここでは、従業員が会社を休みはじめてから会社側が行うべきことと、休職および退職・解雇の判断などについて見ていきましょう。
私傷病休職中の従業員に対して
会社側が行うべきこと
私傷病の従業員が休職に入ったら、定期的に面談の機会を設けることが重要です。休職中の面談には、以下のようなメリットがあります。
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定期面談は、私傷病休職制度の濫用を防ぐうえでも大切な取り組みです。会社側では、定期面談を通して従業員の心身の状況や生活リズムを把握することで、適切な復職支援プランの作成も行いやすくなります。
また、休職中の従業員のなかには、「本当に会社に戻れるのだろうか?」とか「自分の居場所がなくなっているのではないか?」といった不安を抱えている人も多いはずです。そうした従業員の就労意欲を高めるうえでも、定期面談はおおいに役立つものでしょう。
私傷病休職から復職までの考え方とポイント
まず、病気やケガによる休職から復職するうえでは、休職前と同レベルの「完全な回復が必要」というわけではありません。厚生労働省の資料には、以下のように記載されています。
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傷病休職については、休職期間満了時の回復が当該労働者の本来業務に就く程度には回復していなくても、ほどなくそのように回復すると見込まれる場合には、裁判例上、可能な限り軽減業務に就かせるべきことが認められている。
なお、このような配慮義務を前提とすると、使用者の「治癒」の認定については、当該労働者は、診断書の提出などによって協力する義務があるということになる。
<引用>:メンタルヘルス不調による傷病休職後の復職の可否(厚生労働省)
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従業員の復職は、企業の業種や仕事内容の影響を受ける側面もあるはずです。しかし、一般的には、以下のいずれかの要件を満たすときには原則として復帰に向けた準備・調整を始める必要があるでしょう。
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(1)休職前に行っていた業務を通常程度に行える健康状態まで、回復できている (2)(1)には達していないものの、業務を一定期間軽減すれば、休業前の業務を通常程度に行える状態にまで回復できる考えられること (3)休職前の業務を行うのは困難であるものの、他の業務であれば復帰が可能であり、本人も他業務への復帰を望んでいること
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なお、厚生労働省では、傷病を抱える労働者が治療と職業生活の両立を可能とするための職場づくりで留意すべきポイントを以下の資料でまとめています。休職者の復職に向けた手続きを進める際には、ぜひチェックしてください。
<参考>:治療を受けながら安心して働き続けることができる職場づくり|検討事例集<PDF>(厚生労働省)
私傷病休職からの自然退職と解雇
原則として、上記の(1)~(3)に該当せず、復職できない状態のままで休職期間の終了日に達すると、法律上は「労働契約の終了」になります。ここでの注意点は、労働契約の終了方法には、以下の2種類があることです。
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【自然退職】労働契約の自然終了 【解雇】会社側からの一方的な契約解除
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私傷病休職からの労働契約終了は、「病気やケガによる休職から期間内に仕事復帰できず、やむを得ず会社を辞めることになる」というものです。この特徴から、私傷病休職のルールを就業規則内で定める際には、解雇よりも自然退職にするのが理想でしょう。
また、仮に解雇とする場合は、労働基準法の第20条に基づく「30日以上前の解雇予告」もしくは「解雇予告手当の支払い」が必要です。なお、解雇の場合は離職票や雇用保険受給資格者証にも記載されてしまうため、社会的に見てあまり良いものではないでしょう。
私傷病休職から復職できない従業員との労使間トラブルを防ぐうえでは、いわゆる自己都合退職と同じような位置づけとなる「自然退職」の扱いで労働契約を終了とするのがよいでしょう。
私傷病休職制度と就業規則の規定
私傷病休職は、各企業が独自に設ける制度です。私傷病にはさまざまなケースがありますが、労使間トラブルを防ぐためには就業規則のなかで可能な限り具体的にルールを決めることが重要になります。
ここでは、私傷病休職制度を導入する際に就業規則のなかで決めるべき一般的なルールや見直しの方法を解説しましょう。
私傷病休職制度と就業規則の相対的必要記載事項
私傷病休職制度は、就業規則の「相対的必要記載事項」にあたるものです。相対的必要記載事項とは、当該事業場にその制度を導入する場合に、就業規則のなかでルールを定めなければならないものになります。
相対的必要記載事項のなかでの位置づけとしては、「その他労働者に適用される事項」にあたるでしょう。
<参考>:就業規則を作成しましょう(厚生労働省)
私傷病休職制度の導入時に就業規則で定めるべき
項目
私傷病休職制度を導入する場合、一般的には以下の項目を就業規則に記載します。
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従業員が私傷病休職制度を利用する場合、休職前や休職中に「医師の受診」や「診断書の提出」、「状況報告」といったさまざまな義務が発生します。また、軽めの業務から復職する場合、休職前と同レベルの仕事に戻るための判断をするうえでも、受診や診断書が必要になってくるでしょう。
こうしたなかで休職や復職の手続きをスムーズに進めるためには、労使間における認識のズレや提出書類に不備が生じないように、就業規則のなかで「何を、どのように、いつまでに行うべきか?」を細かく記載することが重要です。
また、私傷病休職制度に向けた手続きに入るなかでは、従業員とのコミュニケーションを可能な限り丁寧に行う必要もあるでしょう。
私傷病休職制度の導入で就業規則を
変更する際の流れ
私傷病休職制度の導入にともない就業規則にその旨を新たに記載するためには、以下の流れで手続きを進めていきます。
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(1)私傷病休職制度の内容を考案する (2)制度導入による不利益性の有無を確認する (3)労働者代表から意見聴取をして、意見書を作成する (4)就業規則変更届を作成して、所轄の労働基準監督署に届出をする (5)私傷病休職制度について、社内に周知する
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これはすべての変更・見直しにいえることですが、社内ルールの改定にともない、従業員の労働条件が変わる可能性が少しでもある場合は、法令を遵守したうえで、労使間で事前に十分な話し合いをしていくことが大切です。
特に一部の従業員に不利益が生じる場合は、きちんと内容を説明したうえで合意をとる必要があるでしょう。
また、私傷病休職制度の見直しや変更をする場合、現在この制度を使って休職している従業員に不利益が生じないことやタイミング的な配慮も必要になります。「合意による労働条件の変更」および「就業規則による労働条件の変更」については、厚生労働省の以下の資料で詳しく解説されています。就業規則の変更手続きに入る前に、ぜひチェックしておいてください。
<参考>:労働条件を変更する際には、労使間で十分に話し合うことが必要です(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
私傷病休職制度と関連するリハビリ出勤制度
従業員が1年や2年といった長期間の休職をしていた場合、休職中に健康状態が回復しても業務の感覚が戻らず、復職直後は高いパフォーマンスを発揮できないことがあります。そんな時に活用されることが多いのが、「リハビリ出勤制度」というものになります。
リハビリ出勤制度とは、一時的に業務の負担を軽減するなどの方法で段階的に元の仕事内容に戻していく制度の総称です。就労から長く離れていた従業員のスムーズな復職を促す目的から、各社が独自に設けている仕組みになります。
たとえば、復帰直後はいきなり仕事をするのではなく、まずは会社に来ることから慣れていく「お試し出勤」もリハビリ出勤制度の一種です。
また、本人の持病であるうつ病や精神疾患の悪化で私傷病休職をしていた場合、精神科や心療内科などが主催する復職支援プログラム(リワーク支援プログラム)を受ける「模擬訓練」もリハビリ出勤制度の選択肢に入ってくるでしょう。
リハビリ出勤制度を導入する場合には、1つ注意点があります。それは、施策を実施するタイミングによって、給与発生の有無が変わる点です。
たとえば、リハビリ出勤が復職前に行われる場合、給与は発生しません。一方で、復職をしてからお試し出勤などをする場合には、給与支払いの対象となります。私傷病休職制度とあわせてリハビリ出勤制度を導入する場合は、具体的なタイミングや期間などの細部まで設計する必要があるでしょう。
厚生労働省が示す以下の資料では、心の健康問題で休業した労働者における職場復帰支援や、リワーク支援プログラムなどについて詳しく解説されています。私傷病休職制度やリハビリ出勤制度の設計をする際には、ぜひ参考にしてください。
<参考>:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(厚生労働省)
人事労務のアウトソーシングならラクラスへ
本記事では、私傷病休職制度の概要と法律上の取り扱い、一般的な手続きの流れを解説してきました。私傷病休職制度の設計・導入は複雑なため、人事部のなかでも負担に感じている方は多いのではないでしょうか。
もし人事業務における業務効率化をお考えであれば、ラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができコア業務に集中できるようになります。
ラクラスの特徴として、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ対応を得意としています。他社では難色を示してしまうようなカスタマイズであっても、柔軟に対応することができます。それにより、大幅な業務効率の改善を見込むことができます。
また、セキュアな環境で運用されるのはもちろんのこと、常に情報共有をして運用状況を可視化することも心掛けています。そのため、属人化は解消されやすく「人事の課題が解決した」という声も数多くいただいております。
特に大企業を中心として760社86万人以上の受託実績がありますが、もし御社でも人事の課題を抱えており解決方法をお探しでしたら、ぜひわたしたちラクラスへご相談ください。
