変形労働時間制とは? 残業代の計算と注意点を解説
本記事では、変形労働時間制の基本概念を確認したうえで、厚生労働省が示す4種類の概要と残業時間の考え方や計算時のポイントを解説します。また、変形労働時間制を導入する際の手順やよくある質問も紹介していきます。変形労働時間制の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
変形労働時間制は、労働時間の繁閑差が大きい時や、業務の進捗・スケジュールに応じた柔軟な働き方を実現したい場合によく選ばれる制度です。ただし、変形労働時間制にはさまざまな種類があり、残業代などの部分で注意すべきポイントはそれぞれ異なります。
そのため、変形労働時間制を導入して人件費の適正化や負担軽減、生産性向上を図る場合には、各制度の特徴を理解したうえで自社の業務に適したものを選ぶことが重要です。
そこで本記事では、変形労働時間制の基本概念を確認したうえで、厚生労働省が示す4種類の概要と残業時間の考え方や計算時のポイントを解説します。記事の後半では、実践編として変形労働時間制を導入する際の手順やよくある質問も紹介していきます。
自社の人的リソースを最適化するために変形労働時間制の導入を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
変形労働時間制とは?
変形労働時間制とは、業務の特殊性や繁閑に応じて労使が工夫しながら労働時間の配分などを行い、全体としての労働時間の適正化や負担軽減を図る仕組みの総称です。
たとえば、1年を通して業務の繁閑が比較的少なく、1週間に2日程度の休日を確保できる場合、完全週休2日制の採用が可能です。この場合は、変形労働時間制を選択する必要はありません。また、1日の所定労働時間を短縮できる業種であれば、土曜日を午前中だけ働いて午後は休みとする“半ドン”の仕組みでも対応できるでしょう。
これに対して、以下のような仕事の場合、完全週休2日制度や半ドンの仕組みでは、「繁忙期に多くの残業が発生する一方で、閑散期には作業が少ないにもかかわらず従業員を時間拘束してしまう」という問題が発生します。
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【営業事務など】 【リゾート施設】 【システム開発】
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このような場合、必要以上の人件費がかかることもあるでしょう。しかし、繁閑差が著しい場合には、自社に適した変形労働時間制を導入することで人件費と労働者の負担を軽減できるのです。
変形労働時間制における4つの種類
厚生労働省が示す変形労働時間制には、以下の4種類があります。
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社内の労働時間を最適化するためには、上記から自社に合うものを選択したうえで、適切な運用ルールを設計することが重要です。次項からは、それぞれの種類の概要と、人事担当者が頭を悩ませやすい「残業時間の考え方」におけるポイントを解説しましょう。
<参考>:変形労働時間制(厚生労働省 徳島労働局)
1ヵ月単位の変形労働時間制の概要と
残業代の考え方
1ヵ月単位の変形労働時間制とは、1ヵ月以内における一定期間を平均し、1週間の労働時間が40時間以下の範囲内において、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることを可能とする制度です。なお、特例措置対象事業場の場合には、40時間のところを44時間として計算します。
1ヵ月単位の変形労働時間制は、特定週・月初・月末など、業務が忙しくなる場合に導入しやすい仕組みです。
1ヵ月単位の変形労働時間制の採用要件
1ヵ月単位の変形労働時間制を導入する場合、以下の内容を労使協定または就業規則で定めたうえで所轄の労働基準監督署への届出が求められます。
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<引用>:1ヵ月単位の変形労働時間制(厚生労働省 兵庫労働局)
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1ヵ月単位の変形労働時間制における
残業代の考え方
1ヵ月単位の変形労働時間制における残業代(時間外労働の割増賃金)は、就業規則や労使協定などで定めた各日・各週の労働時間を超え、労働時間の総枠を超える場合に発生します。
主なポイントは、以下の3つです。前述したとおり、特例措置対象事業場の場合には40時間のところを44時間で考えます。
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(1)【1日の法定時間外労働】
(2)【1週の法定時間外労働】
(3)【対象時間の法定時間外労働】
<出典>:1か月単位の変形労働時間制をとる場合の時間外労働の考え方(厚生労働省)
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1年単位の変形労働時間制の概要と
残業代の考え方
1年単位の変形労働時間制とは、1年以内における一定期間を平均し、1週間の労働時間が40時間以下の範囲内において、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
この制度でも、労使協定の締結および所轄労働基準監督署への届出、就業規則への記載が求められます。なお、1年単位の変形労働時間制の場合、特例措置対象事業場でも44時間ではなく「40時間以下」で清算を行います。
1年単位の変形労働時間制の労使協定で
決めるべき要件
1年単位の変形労働時間制を導入する場合、以下の5つの事項について労使協定で締結する必要があります。
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(1)【対象労働者の範囲】
(2)【対象期間および起算日】
(3)【特定期間】
(4)【労働日および労働日ごとの労働時間】
(5)【労使協定の有効期間】
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なお、上記の5項目には、いくつかの注意点があります。詳細については、厚生労働省が公開しているページで確認してください。
<参考>:1年単位の変形労働時間制(厚生労働省)
1年単位の変形労働時間制における残業代の考え方
1年単位の変形労働時間制における残業代(時間外労働に対する割増賃金)は、労働基準法第37条で定められたとおり、労働時間が法定労働時間を超えた場合に支払われるものです。
基本的な考え方とポイントについては以下のとおりですが、先ほど紹介した1ヵ月単位の変形労働時間制と同じになります。
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(1)【1日の法定時間外労働】
(2)【1週の法定時間外労働】
(3)【対象時間法定時間外労働】
<出典>:1年単位の変形労働時間制導入の手引<PDF>(厚生労働省)
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1年単位の変形労働時間制の場合、1つ注意点があります。
それは、対象期間よりも短い労働をした人(途中採用者・途中退職者など)に対して、企業はこれらの労働者に実際に労働をさせた期間を平均して週40時間を超えた分について、割増賃金を支払う必要がある点です。このルールは、労働基準法の第32条の4の2で定められたものになります。
割増賃金の清算タイミングは、対象者ごとに以下のように異なります。
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【途中採用者】対象期間が終了した時点 【途中退職者】退職した時点
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この場合の割増賃金を支払う期間を算出する計算式は、以下のとおりです。
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【割増賃金を支払う期間】
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なお、1年単位の変形労働時間制を導入した場合、人事労務管理や残業代の計算をするうえで、以下のような知識も必要となります。
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【労働日数の限度】 【対象期間における連続日数】 【1日・1週間の労働時間の限度】
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この制度の全体像を知りたい方は、厚生労働省の資料を必ず確認しておいてください。
<引用>:1年単位の変形労働時間制導入の手引<PDF>(厚生労働省)
1週間単位の非定型的変形労働時間制の概要と残業代の考え方
1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、規模30人未満の小売業・旅館・飲食店のような事業において、労使協定の締結と所轄労働基準監督署への届出をすることにより、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定められる制度です。
この制度を運用する場合、1週間における各日の労働時間を当該1週間の開始前までに全労働者に書面で通知する必要があります。
1週間単位の非定型的変形労働時間制の採用要件と残業代の考え方
1週間単位の非定型的変形労働時間制では、以下の2つのことを労使協定のなかで定めます。
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なお、1週間の労働時間は、特例措置対象事業場も同じ40時間で考えます。また、1日の労働時間の上限は10時間です。
割増賃金については、下記のとおり「1日の労働時間」と「1週間の労働時間」の両方で見ていく必要があります。
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【1日】 ・事前通知により所定労働時間が8時間を超える時間とされている日 ・所定労働時間が8時間以内とされている日
【1週間】 ・40時間を超えた時間
<出典>:(4)1週間単位の非定型的変形労働時間制(法第32条の5)(厚生労働省)
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フレックスタイム制の概要と残業代の考え方
フレックスタイム制は、一定期間についてあらかじめ定めた総労働時間のなかで、働く人が自分で日々の始業・終業時刻および労働時間を決められる制度です。
フレックスタイム制度の導入時に決めるべき要件と労使協定
フレックスタイムを導入する場合、労使で以下の枠組みを決めたうえで協定締結をする必要があります。
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(1)対象となる労働者の範囲 (2)清算期間 (3)清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間) (4)標準となる1日の労働時間 (5)コアタイム(※任意) (6)フレキシブルタイム(※任意)
<引用>:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
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決定したルールは就業規則への記載も必要です。なお、フレックスタイム制の導入時に締結した労使協定は、清算期間が1ヵ月を超える場合にのみ、所轄の労働基準監督署に届出を行います。
フレックスタイム制は自社で自由に設定できる部分が多い一方で、労働時間の管理における複雑性が非常に高い制度です。この仕組みを導入する場合は、厚生労働省が公開している以下の資料をしっかり読み込んだうえで、法律に則った制度設計を行うようにしてください。
<参考>:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
フレックスタイム制における
残業代の基本的な考え方
フレックスタイム制の残業代(時間外労働に対する割増賃金)の考え方は、通常の労働時間制度とは取り扱いが大きく異なります。ここでは、3つのポイントを簡単に紹介しましょう。
(1)フレックスタイム制の時間外労働と締結すべき労使協定の種類
フレックスタイム制のなかで対象者に時間外労働を行わせる場合、通常の労働時間制で残業および休日出勤を行わせる際と同様に、「36協定」を締結して所轄の労働基準監督署に届出をする必要があります。
また、清算期間が1ヵ月を超える場合、フレックスタイム制に関する労使協定の締結と届出も必要です。
(2)フレックスタイム制における時間外労働のカウント要件
フレックスタイム制では、日ごとの労働時間が従業員自らの決定に委ねられます。そのため、割増賃金の支給対象となる時間外労働のカウントは、清算期間を通じて「法定労働時間の総枠を超えて労働した時間」に対して行われます。
また、時間外労働の判断には清算期間を用いることになるため、労使協定のなかでは、「1日」の延長時間を定める必要はありません。それはつまり、「1ヵ月」と「1年」の延長時間を協定することを意味します。
なお、フレックスタイム制のもとで休日労働(1週間に1日の法定休日に働くこと)を行った場合、その労働時間は、清算期間における総労働時間および時間外労働とは別で取り扱います。
(3)清算期間が1ヵ月を超える場合の時間外労働カウント
フレックスタイム制で清算期間が1ヵ月を超える場合、清算期間が1ヵ月以内の場合とは異なる考え方で労働時間を管理します。時間外労働のカウントについても、以下の2要件のいずれかに該当したときに行われます。
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(1)1ヵ月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間 (2)清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間
<引用>:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き<PDF>(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
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なお、清算期間が1ヵ月を超える場合、各月ごとに異なる計算方法を用いて残業代の算出およびチェックを行う必要があります。
変形労働時間制の導入ステップ
変形労働時間制を導入するときには、法律を守りながら適切な流れで制度の選定や設計などの手続きを進める必要があります。ここでは、これから初めて変形労働時間制を導入する場合の基本ステップとポイントについて解説します。
ステップ(1)現状分析を行う
まず、従業員の勤務実態を見て、以下のような課題を洗い出します。
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効果の高い制度を導入するうえでは、「繁閑差がありすぎる」といった漠然とした分析ではなく、例えば「部門AとBの労働時間が、繁忙期の12月中旬~3月最終週だけ◯%ほど増大する」のように具体化することが重要です。
ステップ(2)自社に合う制度を選定する
自社の課題を洗い出したら、次は「変形労働時間制を導入するのか?」「導入する場合、どの制度にするのか?」の2点を考えます。
これから変形労働時間制を導入する場合、従業員の労働時間や働き方はもちろんのこと、勤怠管理の方法にも影響が出るのが一般的です。そこで人事労務担当者が法制度を十分に理解していないと、残業代などに計算ミスや未払いが生じてしまうかもしれません。
また、たとえば一部の従業員だけを変形労働時間制にしたり、一つの部門内で異なる労働時間制度を混在させたりすると、各メンバーのスケジュール調整方法やコミュニケーション手段にも影響が出る可能性があるでしょう。
変形労働時間制を導入する場合は、新たな仕組みを取り入れることによるデメリットやそれに伴う業務上の変化、リスクなどを加味したうえで、「それでも導入すべきだろうか?」という視点を持つ必要があります。
つまり、『高い費用対効果が得られるか』という視点で検討を重ねることが重要です。
ステップ(3)
制度の詳細検討と労働者との話し合い
新たに変形労働時間制を導入することを決めたら、法律で定められた各制度の詳細の検討に入ります。
ここで1つ注意点があります。それは、変形労働時間制の導入により、たとえば「残業代(収入)がかなり減る」とか「繁忙期の長時間勤務が増える」といった変化が生じる場合には、「当初の労働条件が変わる」ことを意味する可能性がある点です。
労働条件の変更は、法令で定められた適切な流れで、事前に労使間で十分な話し合いなどをしたうえで進めなければなりません。特に従業員側から見て不利益ともとれる変更が生じる可能性がある場合は、話し合いから合意までのステップを丁寧に進める必要があるでしょう。
変形労働時間制の導入で労働条件が変わる可能性がある場合の手続きは、厚生労働省の以下資料で詳しく解説されています。
ぜひチェックしてください。
<参考>:労働条件を変更する際には労使間で十分に話し合うことが必要です(厚生労働省)
ステップ(4)
労使協定の締結・届出と就業規則の整備を行う
従業員の合意や適切な手続きを経て制度の詳細が決まったら、労使協定の締結と所轄の労働基準監督署への届出、就業規則の整備を行います。変形労働時間制の種類と、労使協定と就業規則に関する手続きについて表にまとめると、以下のようになるでしょう。
| 1ヵ月単位の 変形労働時間制 |
1年単位の 変形労働時間制 |
非定型変形 労働時間制 |
フレックス タイム制 |
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| 変形労働時間制についての労使協定締結 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
| 所轄労働基準監督署への労使協定届出 | ◯ | ◯ | ◯ | △ (清算期間が 1ヵ月を超える 場合は必要) |
| あらかじめ就業規則等での時間・日の明記 | ◯ | ◯ | - | - |
| 就業規則変更届の提出 (10人以上) |
◯ (10人未満の事業場でも準ずる規程が必要) |
◯ | ◯ | ◯ |
<出典>:変形労働時間制(厚生労働省 徳島労働局)
ステップ(5)従業員への周知を行う
変形労働時間制の導入で働き方や残業清算などのルールが変わったら、その旨を従業員に周知します。
たとえば、これまで法定労働時間の「1日8時間・週40時間」をベースとする一般的な考え方で労働時間を管理していたと仮定します。
その職場にフレックスタイム制を導入すると、以下のような運用や考え方が大きく変わります。
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これらの内容をレクチャーしたうえで、従業員側でも自分でおおよその労働時間の把握や管理ができる状態にする必要があるでしょう。
変形労働時間制を導入して就業規則を変更した場合、労働基準法第106条にもとづき、各作業所の見やすい場所への掲示や備え付け、書面交付といった方法で内容の周知をする必要があります。
<参考>:就業規則を作成しましょう(厚生労働省)
スキップ(6)定期的な振り返りと見直しを行う
変形労働時間制の導入後は、最初に洗い出した課題の改善効果を測定するのはもちろんのこと、その副作用ともいえる問題が生じていないかどうかなどのチェックを定期的に行う必要があります。
また、変形労働時間制の導入によって労働時間が適正化できたとしても、その影響で現場に新たな負担や問題が生じたり、自社のサービス品質が低下したりしては本末転倒です。新制度による問題を早期に把握するためには、労働時間や人件費などの数字ばかりに注目するのではなく、従業員アンケートなどを通して現場の声に耳を傾ける姿勢も必要でしょう。
変形労働時間制に関するよくある質問
最後に、変形労働時間制に関して人事労務管理の担当者から生じることが多い質問に回答していきましょう。
Q.変形労働時間制と裁量労働制は何が違うの?
変形労働時間制と裁量労働制には、厳密にいうと以下の違いがあります。
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【変形労働時間制】法定労働時間の例外制度 【裁量労働制】労働時間計算の例外制度
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変形労働時間制の場合、「1日8時間、週40時間」という法定労働時間にとらわれない働き方をしていきます。これに対して裁量労働制の場合は、制度上で決められた時間を「働いたとみなして計算する」イメージです。
<参考>:変形労働時間制と裁量労働制(労働時間の例外)(厚生労働省 大阪労働局)
なお、裁量労働制については以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひチェックしてください。
【関連記事】裁量労働制とは? メリット・デメリットや他の制度との違いも解説
Q.自社に合う変形労働時間制(労働時間制度)の
選び方を教えてください。
自社に適した変形労働時間制を選ぶ際のポイントは以下のとおりです。
| 変形労働時間制の種類 | 繁閑差 | 具体的な状況 |
| 1ヵ月単位の 変形労働時間制 |
業務の繁閑がある | 月初、月末、特定週等に業務が忙しい場合 |
| 1年単位の 変形労働時間制 |
夏季や冬季などの季節や特定月に業務が忙しい場合 | |
| 1週間単位の 非定型的 変形労働時間制 |
業務の繁閑が直前にならないとわからない場合 (規模30人未満の小売業、旅館および料理・飲食店に限る) |
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| フレックスタイム制 | 始業・終業の時刻を労働者に自由に選択させることができる場合 | |
<出典>:変形労働時間制(厚生労働省)
変形労働時間制の場合、それぞれの仕組みは大きく異なるため、経験が浅い人事担当者でも比較的検討しやすいでしょう。
Q.変形労働時間制を適用できない
労働者はいますか?
具体的なルールは制度ごとに異なりますが、以下に該当する人については、一定の制限もしくは配慮が求められます。注意しましょう。
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<参考>:労働相談Q&A |15.変形労働時間制(日本労働組合総連合会)
人事労務のアウトソーシングならラクラスへ
本記事では、変形労働時間制の基本概念を確認したうえで、厚生労働省が示す4種類の概要と残業時間の考え方や計算時のポイントを解説してきました。変形労働時間制の導入に関しては、多くのやるべきことや注意点があるため、人事部のなかでも負担に感じている方は多いのではないでしょうか。
もし人事労務における業務効率化をお考えであれば、ラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができコア業務に集中できるようになります。
ラクラスの特徴として、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ対応を得意としています。他社では難色を示してしまうようなカスタマイズであっても、柔軟に対応することができます。それにより、大幅な業務効率の改善を見込むことができます。
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この記事の監修者:監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
社労士試験合格後、社労士事務所勤務を経て、ソフトバンクグループのシェアードサービス企業で給与計算業務に携わるとともに人事システムの保守・運用を担う。
その後、人事業務のアウトソーシングサービスを提供する企業の立上げに参画。
主に業務構築、システム運用に従事。
その他、人事領域以外のアウトソーシング企業等での勤務も経験し2019年に独立。
現在、人事・給与計算システムの導入支援を中心に社労士として顧問企業の労務面のサポートも行う。
