退職の引き止めはすべき?成功率を高める対策とNG対応について解説
本記事では、人事担当者や上司が退職希望者の引き止めを行ううえで理解しておくべき基礎知識、引き止め成功につながる対応とNG対応、効果を高めるポイントについて解説していきます。退職の引き止めを実施する人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
近年のビジネス環境では、会社を辞める従業員が増える傾向があり「退職の引き止めは行うべき?」という悩みを抱える上司や人事担当者が多くなっています。
結論からいえば、引き止めを通じて退職の意向を撤回してもらうためには、その土台となる多くの準備や心がけが必要です。また、引き止めに関連して起こる“労使間トラブル”を防ぐためには、NG対応の知識も身につける必要があるでしょう。安易な引き止めは逆効果になる一方、適切な対話によって離職防止につながるケースもあるのです。
そこで本記事では、人事担当者や上司が退職希望者の引き止めを行ううえで理解しておくべき基礎知識、引き止め成功につながる対応とNG対応、効果を高めるポイントについて解説していきます。
退職を引き止める前に押さえておきたい基本とは
かつての日本では、終身雇用制度のなかで多くの従業員が正社員として定年まで勤め上げるのが当たり前でした。
一方で近年のビジネス環境では、長く続いた終身雇用制度が崩壊し、人材の価値観やキャリアパスが多様化するなかで、いわゆる“昭和世代”の上司から見ると考えられない理由での退職も起こりやすくなっています。
このような状況で退職の引き止めや離職防止の対策を適切に行うためには、近年における労働者の離職傾向や動向、会社を辞めやすい層の価値観などを理解しておくことが大切です。
本章では、厚生労働省が示すデータなどを確認しながら、近年における離職率の傾向と、退職の引き止めが難しいとされる社会的背景・価値観などを見ていきましょう。
離職率は今どうなっているか
厚生労働省が公開する「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、令和5年における離職率は、一般労働者が12.1%、パートタイム労働者が23.8%であることがわかっています。これらの数字は、前年の令和4年と比べると僅かに上昇している形です。
| 令和5年 | 令和4年 | 前年差 | |
| 一般労働者 | 12.1% | 11.9% | 0.2% |
| パートタイム労働者 | 23.8% | 23.1% | 0.7% |
<出典>:令和5年雇用動向調査結果の概況|表1 令和5年の常用労働者の動き<PDF>(厚生労働省)
また、同調査が示す以下のグラフを見ると、近年における離職率が十数%という高い水準で推移しており、さらに令和3年以降は上昇傾向にあることもわかるでしょう。

<出典>:令和5年雇用動向調査結果の概況|図1-1 入職率・離職率の推移<PDF>(厚生労働省)
こうしたなかで近年とくに問題視されているのが、新卒における“就職後3年以内離職率”の高さです。
厚生労働省が令和7年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は、新規高卒と新規大卒において以下のようになっていることがわかります。
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【新規高卒】37.9% 【新規大卒】33.8%
<出典>:新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します(厚生労働省)
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これらは、先ほど紹介した一般労働者の離職率12.1%や、パートタイム労働者の23.8%と比べてはるかに高い数字です。なお、人事領域では、就職後3年以内の離職を「早期離職」と呼んでいます。
早期離職が増加する社会的背景と引き止めの難しさ
近年のビジネス環境では、以下のように新卒・若手の早期離職につながる多くの要因が生じています。
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かつての日本では、新卒一括採用で入社した人材が年功序列制度のなかで出世をしながら、定年まで終身雇用されるのが一般的でした。これに対して近年は、終身雇用が崩壊するなかで、「1つの会社で勤め上げる」という考え自体がなくなりつつあります。
そこで「この会社(や上司)と自分は合わない」とか「業績を適切に評価してもらえない」といった不満が生じた場合、そんな職場に見切りをつけ、自分に合った新たな環境を模索することも自然な流れでしょう。
また、インターネットの普及による起業やテレワークのしやすさも、1つの会社に留まり続けなくても良い要因の一つとなっています。
このほかに、SNSが普及し、同級生や同年代の働き方に触れやすくなった点も新卒・若手の早期離職の増加に関係しているという声があります。
たとえば、学生時代に仲の良かった同級生が「仕事が楽しい」とか「この会社に入れてよかった」といったポジティブな投稿を頻繁に行っていると仮定します。それを見た人が、彼らと同時期に新卒入社したにもかかわらず、やりがいや成長実感が得られていない場合、「私もポジティブな社会人生活を送りたい!」という願いから、別の環境の模索を始めることも多くなるわけです。
このように近年のビジネス環境には、新卒・若手が特に辞めやすく、また会社側としても従来と比べて引き止めを行いづらい状況が生じています。こうしたなかで、退職を検討し始めていたり退職意思を持っていたりする従業員を引き止めるためには、どのような施策を行えばよいのでしょうか。
退職を引き止めるために企業がやるべき対応のポイント
退職を希望する従業員を引き止めるうえで必要となるのは、「丁寧な対話」です。ただし、会社を辞めようとしている従業員の気持ちを動かすためには、対話のなかでいくつかのポイントを実践する必要があります。4つを挙げて詳しく見ていきましょう。
ポイント(1)退職希望の社員には「本音の退職理由」があることが多い
従業員との対話を行ううえで注意したいのが、退職希望者の大半は、会社側に対して「本音の退職理由を伝えない」ということです。
たとえば、本人が「家庭の事情で辞めたい」や「結婚するから辞める」と言っていても、実は企業への不満や違和感、ハラスメントといった事実が隠れているかもしれません。
そこで表向きの理由を鵜呑みにしてしまうと、本人を引き止めるための提案は本当の理由や本質的な問題とは異なる方向に進んでしまうでしょう。
退職希望者との対話をする際には、まずは「本当の理由を語る可能性が低い」ことを理解したうえで、丁寧なアプローチを図る必要があります。
ポイント(2)退職を希望する社員の話を傾聴する
退職希望者と対話をするうえでポイントになるのが、「傾聴」という話の聞き方です。文字どおり「聴く」と書く傾聴は、日常的に行われている「聞く」とは大きく異なるものです。
たとえば、上司がデスクで書類チェックなどをする傍らで、部下の報告を情報として耳に入れるような場合は、「聞く」であることが多いでしょう。
これに対して傾聴の「聴く」は、相手とより深いコミュニケーションを取るための技法です。相手の話に耳を傾け、本音や気持ちを「理解しよう」「共感しよう」とする姿勢で話を聴くことを意味します。
なお、傾聴には下記のとおり3つのレベルがあります。
| 種類 | 概要 | |
| 1 | 受動的傾聴 | 「相手のために聴くこと」を意識し、真摯に受け止める状態です。相手が自分の心の内を明かしやすいように努めます。 |
| 2 | 反射的傾聴 | 別の表現・言葉での言い換え、要約、オウム返しなどで、自分が相手の話を聴いていることを伝えます。 |
| 3 | 積極的傾聴 | 退職希望者の引き止めや対立の解消、部下との1on1などでも役立つ効果的な種類です。聴き手の主体的な働きかけにより、相手を深く理解するための手法となります。信頼関係の構築にも効果的です。テクニックはもちろんのこと、真摯な姿勢が求められる聴き方となります。 |
退職希望者の引き止めをするのであれば、「積極的傾聴」までの3つを段階的に行う必要があるでしょう。
ポイント(3)退職希望者に自己開示をする
自己開示は、退職希望者の本心を引き出すうえで有効なテクニックの一つです。自己開示とは、人事担当者や上司がプライベートな情報をありのままに伝達する行為となります。具体的には、以下のような話が自己開示にあたるでしょう。
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自己開示には、返報性というものがあります。返報性をわかりやすくあらわすと、「上司がプライベートの話をしてくれたのだから、自分も少し心を開いてみようかな……」と思わせるような現象・法則です。
退職者の引き止めをする際には、自己開示の内容も本人の話や状況に合わせる必要がありますが、「上司が心を開くと、部下も開きやすくなる」という基本的な考え方は、本音を引き出すうえで役立つものでしょう。
ポイント(4)退職希望者にキャリアの選択肢を示す
従業員が以下のような悩みや問題から退職を検討している場合、相手のニーズに耳を傾けたうえで他のキャリアパスを示すのも大切なポイントです。
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本人のニーズや適性に合ったキャリアを提案することで進む道が大きく変われば、仕事のやりがいやモチベーションなどの向上につながることもあるでしょう。
退職を引き止める際にやってはいけない
NG対応
退職希望者に間違った引き止めを行うと、場合によっては逆効果になることがあります。特にここで挙げる3つは、会社や上司への不信感につながりやすいNG対応です。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
NG(1)会社の都合を一方的に押し付ける
従業員に会社を辞められた場合、「人員不足になる」とか「業務が回らなくなる」といった問題が生じるかもしれません。しかしそこで、「あなたが会社を辞めると業務が回らなくなって非常に困る」といった自社の都合を一方的に伝えることは、基本的に逆効果になります。
退職希望者の引き止めで高い効果が期待できるのは、先述したとおり、「相手の話に耳を傾けて、相手のためになる提案をすること」です。そこで自社の都合ばかりを一方的に伝えると、「この会社は私の悩みや意見に興味がないんだな……」といった不信感や違和感を与えてしまいます。
また、相手を逃すまいとして発する「あなたのような人はウチの会社でしか通用しない。だからこの会社に留まったほうが……」などといった心理的圧力も逆効果になりやすいでしょう。
NG(2)間違った情報を提示する
退職希望者が仕事や組織などに不満や不信感を抱えていた場合、その解決や改善につながる提案をすることで、引き止めに成功するケースがあります。しかし、そこで行った以下のような提案や約束が実現できない場合、従業員本人はどう思うでしょうか。
| 退職理由 | 会社側の提案 | 実現の可能性 | |
| 1 | なかなか業績をあげられず上司からの叱責を受けてばかりだから、法人営業の仕事自体を辞めたい。 | 法人営業よりも難易度が低い個人営業に変更してみては。 | 実際は、個人営業も法人営業と同様に難しい。また、個人営業部のリーダーは、法人営業よりも厳しい人である。 |
| 2 | 高い業績をあげても適切な評価が得られない。 | いま人事評価制度を見直している最中。だからもう少し待ってほしい。 | 人事評価制度の見直しは、最近の幹部会議の議題に上がったばかり。導入~運用開始までには相応の時間がかかる。 |
退職希望者は、会社や上司などに対して既に多くの不信感や違和感を抱えている可能性が高いです。そこで上記のような提案・約束が実際には実現されなかった場合、不満や不信感がさらに大きくなってしまう可能性があります。そうすると円満退職は難しく、場合によっては口コミ・評判サイトやSNSなどに不満の声が投稿されてしまうかもしれません。
退職希望者に良い提案をして引き止めたい気持ちも理解できるところではありますが、会社の信頼を守ることを考えると、提案内容は確実に実現可能なものに限ります。
また、従業員との信頼関係を維持するためには「◯月までに必ず実現する」といった具体的な情報を伝えることも重要になるでしょう。
NG(3)有給消化や退職手続き自体を妨害する
期間の定めのない正社員の場合、原則としていつでも退職することが可能です。また、民法627条の第1項では、労働者が退職の申し出をした日の翌日から原則として14日を経過すれば、会社の承認がなくても退職できるルールになっています。
それはつまり、会社を辞めることは“労働者の権利”の一つであり、企業がそれを妨害すれば法律違反になるということです。また、従業員が退職する場合、会社は原則として年次有給休暇の消化を拒否できません。
仮に会社が以下のような妨害を行った場合には、法律違反になる可能性があります。
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また、会社側の対応に疑問や不信感を抱いた従業員が労働基準監督署や法律事務所に相談した場合、さらなる信用低下や労使間トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
退職希望者にどうしても辞めてほしくない場合、“対話”という意味での引き止めは可能です。しかし、そこで「妨害」や「邪魔」ともいえるようなことを行った場合、逆効果になるのはもちろんのこと、信用低下によってさまざまな悪循環が生じる可能性が高いでしょう。
従業員の退職にともなう基本ルールについては、厚生労働省の以下の資料でも詳しく解説されています。ぜひ確認しておいてください。
<参考>:第5章 仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき<PDF>(厚生労働省)
退職の引き止めを効果的にするための対策
退職希望者の引き止め効果を高めるためには、その土台となる環境・仕組みの整備や、人事担当者・上司におけるコミュニケーション力の向上が必要です。この章では、退職希望者を減らしたり、引き止めの成功率をあげたりするうえで役立つ対策を紹介しましょう。
対策(1)
心理的安全性の高い職場環境づくりを目指す
心理的安全性とは、部下やチームメンバーが自分の感じた疑問や意見を伝えることについて、不安や恐れを抱かない状態のことです。心理的安全性が高い組織では、新人や若手でも上司やメンバーの顔色を伺うことなく、以下のようなチャレンジングなコミュニケーションが積極的に行われます。
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心理的安全性の高い組織では、上司・先輩・若手・新人といった階層は関係なく、多くのメンバーが自然体の自分でいられることが多くなります。たとえば上司との1on1や評価面談などを行う際に、以下のような率直な想いを明かしやすくなるわけです。
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1on1の際に上記のような話が出てくると、退職意思が固まる前のフォローや提案なども行いやすくなります。また、高い心理的安全性のなかで自分の率直な意見や考えを伝えることができれば、組織の居心地がよくなり、いわゆるコミュニケーション不全によるストレスや退職意思も生じにくくなるでしょう。
対策(2)
人事担当者や上司のヒューマンスキルを高める
心理的安全性の高い組織づくりの土台となるのが、上司のヒューマンスキルの高さです。ヒューマンスキルは、日本語で「人間力」と訳されたりします。この意味を平易な言葉であらわすと、相手と健全なコミュニケーションを図るなかで、信頼関係を築いていく力となるでしょう。
先述の心理的安全性が高い組織は、上司がメンバーとの健全なコミュニケーションを図るなかで生まれるものです。
また、心理的安全性の高さは、上司・部下やメンバー間の信頼関係の強さがあってこそ実現するものとなります。
ヒューマンスキルは、以下のような要素で構成される複合的な能力です。
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上記のなかでもコミュニケーション力・プレゼンテーション力・ヒアリング力・ネゴシエーション力は、退職希望者の引き止めをするうえでも求められるスキルでしょう。
ただし、このヒューマンスキルは一朝一夕で身につくものではありません。自社で離職者や不満の声が多く生じている場合は、経営層・上司・人事担当者のヒューマンスキルを底上げしながら心理的安全性の高い組織づくりをすることからはじめてみるとよいでしょう。
対策(3)人事評価制度を見直す
優秀な新人や若手の離職が多い場合、人事評価や報酬制度の見直しを検討するのも一つの対策です。
特に終身雇用&年功序列のもとで機能していた人事評価制度の場合、社歴が短い新人・若手の業績が適切に評価されない可能性があります。そういった環境で優秀な新人・若手を獲得しても、頑張って出した成果が評価・報酬に反映されないわけですから、「優秀な人ほどすぐに辞めてしまう」といった問題が頻発するのは自然なことといえます。
ただし、人事評価制度の大幅な見直しをする場合には、一つ注意すべき点があります。
新しい制度で仮に優秀な新人・若手の評価が高まると、従来の年功序列制度のなかで高い評価・賃金をもらっていたベテラン社員の評価が大幅に下がるリスクがある点です。その結果、ベテラン社員のモチベーションが低下し、場合によっては離職者が出る可能性もあるでしょう。
人事評価制度の見直しをする際には、いま不満を抱えている層だけでなく、新規導入によるネガティブな影響を受ける層にも目を向けてバランスをとることが大切です。
人事評価制度の効果を最大化するポイントを知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】人事評価とは?効果を最大化する最新トレンド手法や成功事例、導入ポイントを解説
対策(4)キャリア共律を目指す
キャリア共律とは、「本人と企業で一緒に個人のキャリア自律にコミットすること」を指す概念です。近年のビジネス環境でキャリア共律が重視される理由は、終身雇用制度が崩壊するなかで、働く人が自律的に自身のキャリア形成をする必要性が高まってきているからです。
たとえば、新卒で入社したAさんは、教育制度が整った自社でプログラマーとしての経験を積み、3~4年後には転職をして、さまざまな開発現場でシステムエンジニアとしてレベルアップしょうと考えているかもしれません。
そこで企業が「キャリア共律」の考え方を持つと、新卒入社したAさんに「あなたのキャリアを応援したい」という文脈でのヒアリングを行いやすくなります。そこでAさんが「将来的には、大規模システム開発のプロジェクトでマネージャーをやりたい」という具体的な夢や目標を持っていれば、人材配置の部分からも配慮しやすくなるでしょう。
最近のビジネス環境では、終身雇用が崩壊したことで「キャリアアップをするために離職・転職をする」という考え方も当たり前になっています。そこで優秀な人材に少しでも長く自社に留まってもらったり、円満退職からの“アルムナイネットワーク”につなげたりするためには、キャリア共律の考え方でコミュニケーションを図ることも重要になるでしょう。
対策(5)
柔軟な配置転換を行える環境・制度を整備する
家族の介護や自身の妊娠出産などを機に離職を検討せざるを得ないケースへの対策としては、従業員が仕事と家庭の両立をしやすい仕組みや環境づくりをすることも大切です。そんな施策を行ううえで特に重要となるのは、休業・休暇や時短勤務などの制度導入に加えて、仕組みを利用しやすい体制・風土を醸成することです。
たとえば、人事部門が会社説明会で「子育て中の従業員は時短勤務やリモート勤務を行えます」と謳っていても、実際に申請をしたときに上司の機嫌が悪くなったり他のメンバーの負担が増大したりする状況では、せっかくの制度が絵に描いた餅になってしまいます。
人事部門が設計・導入した制度をうまく活用してもらい、従業員の離職防止につなげていくためには、各自が抱える事情への理解や支え合いの精神などの醸成が必要です。この考え方は、先述の心理的安全性につながるものでもあるでしょう。
対策(6)
定期的に従業員アンケートやヒアリングを実施する
定期的に実施するアンケートやヒアリングは、従業員個人の悩みや労働環境の問題を知るうえで非常に役立つものです。
ただし、記名式のアンケートや直接のヒアリングは、組織の心理的安全性が高く各メンバーが「こんなことを言っても怒られることはない」と思えているからこそ、有効となります。もし心理的安全性が低く、各メンバーが率直な意見を言いづらい環境である場合、アンケート内容の有効性は下がってしまいやすくなるでしょう。
従業員のリアルな声を退職の引き止めや労働環境の改善につなげるためには、会社・上司とメンバーの信頼関係を高めることが第一なのです。
退職の引き止めに関してよくある質問
ここまでにご紹介したとおり、退職希望者の引き止めには多くのテクニックや土台となる準備が必要です。この章では、人事担当者が退職の引き止めをするうえで生じやすい疑問と、その回答について記載していきます。
Q.退職する社員の本音を上手に引き出すには?
本編の「ポイント」でもお伝えした「積極的傾聴」は、相手の本音を引き出すうえで有効なテクニックです。ただし、積極的傾聴の効果を高めるためには、人事担当者や上司と退職希望者の間で信頼関係が構築されている必要があります。
逆にいえば、信頼関係が著しく低下していて「上司には何を言ってもわかってもらえない」などの諦めが生じている状態では、どんなに素晴らしいテクニックを使っても退職希望者の心を開かせることは難しいでしょう。
退職希望者や困り事を抱えたメンバーから本音をうまく引き出すためには、人事担当者や上司がヒューマンスキルを磨き、心理的安全性の高い組織や関係性を構築する努力を続ける必要があります。
Q.退職の引き止めはそもそも違法なのでは?
たとえば、1on1などの際に「業績をあげられないため退職も考えている」とやんわり伝えられた状態でさまざまな提案を行ったりすることは「対話」です。対話の場合には、原則として違法にはなりません。
一方で、従業員が退職届を提出して退職意思を明確にしたあとに強引な引き止めや退職妨害を行うことは、民法が定める「労働契約の終了」や、憲法22条の「職業選択の自由」などを侵害する行為として、違法とみなされる可能性があります。
そもそも、人事担当者や上司による「自分はあなたの退職を認めない」とか「退職届は受理しない」といった主張には、法的拘束力がありません。大切な従業員の離職を防ぎ、自社で長く働いてもらいたいのであれば、退職意思が明確になる前のコミュニケーションが大切になってくるのです。
Q.退職の引き止めが成功する割合は?
一般的に、退職の意思が固まった従業員の引き止めは難しいとされています。ただし、退職の引き止めには、そもそも明確な定義がありません。したがって、すべての企業が同条件でこの割合を算出するのは難しいでしょう。
また、ここまで解説したとおり、心理的安全性が高く上司と部下の間で何でも話し合える場合とそうでないケースでは、引き止めの成功率もかなり変わってくるものです。
人事労務のアウトソーシングならラクラスへ
本記事では、人事担当者や上司が退職希望者の引き止めを行ううえで理解しておくべき基礎知識、引き止め成功につながる対応とNG対応、効果を高めるポイントについて解説してきました。退職の引き止めは難易度も高いため、人事部のなかでも負担に感じている方は多いのではないでしょうか。
もし人事業務における業務効率化をお考えであれば、ラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができコア業務に集中できるようになります。
ラクラスの特徴として、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ対応を得意としています。他社では難色を示してしまうようなカスタマイズであっても、柔軟に対応することができます。それにより、大幅な業務効率の改善を見込むことができます。
また、セキュアな環境で運用されるのはもちろんのこと、常に情報共有をして運用状況を可視化することも心掛けています。そのため、属人化は解消されやすく「人事の課題が解決した」という声も数多くいただいております。
特に大企業を中心として760社86万人以上の受託実績がありますが、もし御社でも人事の課題を抱えており解決方法をお探しでしたら、ぜひわたしたちラクラスへご相談ください。
