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通勤手当が社会保険料に与える影響とは?正しい計算方法と注意点も解説

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通勤手当と書かれたブロック

本記事では、通勤手当の概要と社会保険料の概要を確認したうえで、非課税要件や社会保険料の計算における注意点を解説します。記事の後半では、通勤手当に関するよくある質問や今後の展望も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
監修者:社会保険労務士 伊藤大祐

 

通勤手当と社会保険料・税金の関係は、人事担当者が給与計算を行ううえで複雑に感じやすいものです。給与計算を適切かつ円滑に行うためには、通勤手当の課税・非課税要件や社会保険料の考え方をしっかりと理解する必要があるでしょう。

 

そこで本記事では、通勤手当の概要と社会保険料の概要を確認したうえで、非課税要件や社会保険料の計算における注意点を解説します。記事の後半では、通勤手当に関するよくある質問や今後のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

通勤手当と社会保険料の基本知識

 

通勤手当に関する事務手続きを適切に行うためには、まず通勤手当と関連する社会保険料・税金がどのようなものかを知ることが大切です。この章では、通勤手当の計算業務に携わるうえでの基礎知識を確認していきます。

 

通勤手当とは?

 

通勤手当とは、従業員の通勤にかかる費用を負担する目的で支給される以下のような手当の総称です。労働基準法上は、労働の対償かつ賃金の一部として整理されています。

 

 

  • 通勤手当
  • 通勤費
  • 交通費
  • 通勤交通費 など

 

 

通勤手当は、法律によってすべての企業に一律の支給が義務付けられているものではありません。
ただし、就業規則、賃金規程、雇用契約書などに支給条件を定めている場合、企業はその内容に基づいて支給する必要があります。

 

  • 通勤手当と旅費の違い

通勤手当と似たものに、旅費(出張旅費など)があります。

 

業務上において必要な出張旅費のうち、通常必要と認められる範囲のものや従業員が立て替えた費用を実費精算するものは、原則として給与所得に含まれません。また、事業主が負担すべき費用の実費弁償であれば、社会保険上の報酬にも該当しません。

 

ただし、通常必要と認められる範囲を超えて支給した部分や、実費弁償とは認められない定額の手当などは、課税対象や社会保険上の報酬となる可能性があります。

 

通勤手当に関連する社会保険料・労働保険料・税金の種類と概要

 

従業員に通勤手当を支給した場合、給与計算や保険料計算では、社会保険料等・労働保険料・税金について確認する必要があります。

 

  • 通勤手当に関連する社会保険料・労働保険料・税金

通勤手当を支給した場合、給与計算や保険料計算では、主に以下の項目を確認する必要があります。

 

 

《社会保険料等》

  • 【健康保険料】
     業務外のケガ・病気・出産・死亡などに備える制度の保険料
  • 【介護保険料】
     原則として40歳から64歳までの健康保険加入者が負担する保険料
  • 【厚生年金保険料】
     老齢・障害・死亡に備える制度の保険料
  • 【子ども・子育て支援金】
     少子化対策などの財源に充てるため、
     健康保険料と併せて徴収される保険料

 

《労働保険料》

  • 【雇用保険料】
     失業や育児休業、教育訓練などに備える制度の保険料
  • 【労災保険料】
     業務上または通勤による負傷・疾病などに備える制度の保険料。
     原則として事業主が全額を負担

 

《税金》

  • 【所得税】
     個人の所得に対して課される税金
  • 【復興特別所得税】
     所得税額に対して2.1%の税率で課され、
     所得税と併せて徴収される税金
  • 【住民税】
     前年の所得を基に課される税金。
     非課税限度額を超えた通勤手当は、翌年度の住民税にも影響する

 

 

社会保険料の基礎知識については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

 

【関連記事】社会保険料の計算方法は?|給与計算と賞与計算の違い、保険料の種類や注意点を解説

 

通勤手当の課税・非課税要件と
基本的な考え方

 

従業員に通勤手当を支払う場合、税金の計算を行わなければなりません。通勤手当の場合、まず1ヵ月あたりの非課税限度額が以下のように定められています。

通勤手当が社会保険料に与える影響②
<引用>:通勤手当の非課税限度額の改正について(国税庁)

 

また、令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について、従業員が、勤務先や通勤に利用する駅・停留所の周辺にあるなど、利用している駐車場等が一定の要件を満たす場合に限り、距離区分に応じた非課税限度額に駐車場等の料金相当額として上限5,000円の加算ができるようになりました。

 

たとえば、以下のAさんのようなケースがあると仮定します。

 

 

  • Aさんは片道50kmの距離をマイカー通勤している
  • 会社の近くに駐車場(月額8,000円)を借りている
  • 会社の支給額は
    「通勤手当:32,300円」+「駐車場の料金相当額:8,000円」
     ⇒合計40,300円(①)である

 

 

この場合、上記の表の「片道45km以上55km未満」に該当するため、通勤距離に応じた非課税限度額は「32,300円(②)」です。1ヵ月あたりの駐車場等の料金相当額は「上限の5,000円(③)」となります。②と③を合算すると、非課税限度額は「④37,300円」です。

 

課税対象額は、「支給額の①」から「非課税限度額の④」を引くと算出されます。上記の場合「40,300円-37,300円⇒3,000円」ということで、非課税限度額を超えた3,000円が給与所得として課税対象になります。ですから、仮に支給額が20,000円の場合だと非課税限度額37,300円の範囲内であるため、全額が非課税となるわけです。

 

通勤手当を支給する際の課税・非課税の考え方は、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

 

【関連記事】通勤手当とは? 課税・非課税ルールや計算方法、働き方の多様化による会社側の対応を解説

 

通勤手当と社会保険料の関係と考え方

 

従業員に支給する通勤手当は、原則として全額が標準報酬月額の算定対象となる報酬に含まれます。所得税の非課税限度額の範囲内で支給される通勤手当も、社会保険上は報酬として取り扱われます。

 

では、所得税の非課税限度額の範囲内で支給される通勤手当が、なぜ社会保険料の算定対象に含まれるのでしょうか。

 

通勤手当が社会保険料の対象になる理由

 

健康保険料と厚生年金保険料は、標準報酬月額にそれぞれの保険料率を掛けて計算します。「定時決定」では、原則として4月・5月・6月に支払われた報酬を基に標準報酬月額を決定し、その年の9月から翌年8月まで適用します。なお、入社時には資格取得時決定が行われ、固定的賃金が大きく変動した場合には随時改定が行われます。

 

そこでポイントになるのが、「通勤手当は報酬に該当するのか?」ということです。その答えは、社会保険料に関連する法律に定められています。

 

たとえば健康保険法の第三条では、「報酬」を以下のように定めています。

 

 

5 この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。

<引用>:e-GOV法令検索|健康保険法

 

 

また、日本年金機構でも、以下のように回答しています。

 

 

標準報酬月額の対象となる報酬とは、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを含みます。また、金銭(通貨)に限らず、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。ただし、臨時に受けるものや、年3回以下支給の賞与(標準賞与額の対象となります)などは、報酬に含みません。

<引用>:標準報酬月額の対象となる報酬とは何ですか。(日本年金機構)

 

 

通勤手当は、上記に登場する「労働の対償として受けるもの」に含まれます。したがって、課税・非課税は関係なく標準報酬月額の算定対象となる報酬に含まれるのです。

 

通勤手当が社会保険料や世帯負担に与える
影響

 

企業担当者が通勤手当の制度を設計したり、物価高騰対策として従業員への支給額を増やしたりする場合は、通勤手当が社会保険料に与える影響を考えることが大切です。ここでは、その“影響”のポイントを3つ挙げて見ていきましょう。

 

(1)社会保険料の増加要因になる

 

通勤手当は標準報酬月額の算定対象となる報酬に含まれます。ただし、通勤手当が増えたからといって、健康保険料や厚生年金保険料が必ず増えるわけではありません。通勤手当を含めた報酬月額が現在の等級の範囲内であれば、保険料は変わりません。報酬月額が等級の境界を超え、標準報酬月額が上がった場合に保険料も増加します。

 

たとえば、通勤手当を除く月額報酬が335,000円で、協会けんぽ東京支部に加入する事業所に勤務する40歳未満の人を例に比較します。「通勤手当ゼロ」と「通勤手当3万円」のケースについて見てみると、健康保険料と厚生年金保険料の被保険者負担額(労使折半後)だけでも以下の違いが生じることがわかるでしょう。

 

 

【通勤手当がゼロの場合(標準報酬月額は34万円)】

  • 健康保険料⇒16,745円
  • 厚生年金保険料⇒31,110円
  • 合計⇒47,855円(①)

 

【通勤手当が3万円の場合(標準報酬月額は36万円)】

  • 健康保険料⇒17,730円
  • 厚生年金保険料⇒32,940円
  • 合計⇒50,670円(②)

 

 

(※上記の保険料は、協会けんぽが公開する「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」を参考にしています)

 

②から①を引くと、健康保険料と厚生年金保険料の被保険者負担額は、月額2,815円増加します。また、2026年4月分(5月納付分)からは、子ども・子育て支援金率0.23%が適用されます。
被保険者負担額は、標準報酬月額34万円の場合は391円、36万円の場合は414円であるため、差額は23円です。

 

したがって、子ども・子育て支援金を含めた被保険者負担額の増加は、月額2,838円となります。

 

<参考>:令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(協会けんぽ)

 

また実際には、上記の健康保険料と厚生年金保険料のほかに、以下の数字を用いて雇用保険料の計算も行う必要があります。

 

令和8年度の雇用保険料率

<引用>:事業主・被保険者の皆さまへ令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内<PDF>(厚生労働省)

 

雇用保険料は、健康保険料や厚生年金保険料とは異なり、標準報酬月額ではなく、原則として実際に支払った賃金総額に雇用保険料率を掛けて計算する必要があります。

 

2026年度の一般の事業における労働者負担率を見てみると5/1,000です。そのため、通勤手当が月額30,000円増えた場合は、雇用保険の労働者負担額は原則として月額150円増加することになります。

 

(2)「130万円の壁」への影響

 

原則として年間収入が130万円以上になると、健康保険の被扶養者の収入要件を満たさなくなります。ただし、60歳以上または一定の障害がある人は年間収入180万円未満、19歳以上23歳未満の親族は年間収入150万円未満が収入要件となります。なお、19歳以上23歳未満の収入要件の特例から配偶者は除かれます。

 

さらに、2026年4月1日以降の被扶養者認定では、労働条件通知書などに記載された賃金から見込まれる年間収入が基準額未満で、給与以外の収入が見込まれないなど、一定の要件を満たす場合には、労働契約の内容に基づいて年間収入を判定する取り扱いが始まっています。

 

この「賃金」には諸手当や賞与も含まれます。また、契約期間が1年未満である場合や、労働時間、通勤手当の金額などが不明確で年間収入を算定できない場合は、この取り扱いによる認定はできません。

 

130万円の壁については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

 

【関連記事】年収の壁とは? 令和7年改正の見直しポイントと具体的な対策を徹底解説

 

 

(3)会社の配偶者手当への影響

 

企業によっては、独自に配偶者手当、家族手当、扶養手当などの制度を設けています。そのため、支給対象者や収入要件、収入に通勤手当を含めるかどうかは、企業の賃金規程や福利厚生規程によって異なります。

 

仮に配偶者手当などの収入要件に通勤手当を含める規程となっている場合、通勤手当の増額によって収入基準を超え、手当の支給対象外となる可能性があります。判定方法は企業によって異なりますので、賃金規程や福利厚生規程をよく確認する必要があるでしょう。

 

ノートを指さしながら書く人間の指

通勤手当の支給・計算方法と注意点

 

通勤手当の金額は、定期代や実費といった支給方法の影響を受けるものです。また、通勤手当は従業員の「通勤手段」「自宅住所の変更」「定期券の購入方法」などの影響を受けて、再計算が必要になることもあるでしょう。

 

この章では、通勤手当のさまざまな支給方法が社会保険料の計算にもたらす影響と、算出方法の参考例や注意点を見ていきましょう。

 

注意点(1)通勤手当の支給方法と社会保険料の算出への影響

 

通勤手当の支給で社会保険料の算出に影響するポイントは、「定期券の通用期間」と「実費と定期代」の2つです。

 

  • 定期券の通用期間

多くの企業では、コストを抑えるために定期代を3ヵ月や6ヵ月分まとめて支給しています。その場合、通用期間の月数で按分計算して、1ヵ月分の通勤手当を算出しなければなりません。

 

一方で定期代を1ヵ月分ずつ支給している場合は、そのままの支給額で計上できるでしょう。

 

  • 定期代支給と実費支給の違い

社会保険料の標準報酬月額を決める際は、定期代と実費交通費のいずれで支給する場合も、通常の通勤に要するものであれば、原則として報酬に含まれます。

 

ただし、テレワーク勤務者について、労働契約上の労務提供地が「自宅」とされている日に、業務命令によって一時的に出社した場合の実費交通費は、“実費弁償”として標準報酬月額の算定対象に含まれないことがあります。

 

たとえば、標準報酬月額の定時決定の算定対象となる4~6月にオフィス出勤が増えたりした場合、報酬が増えて等級が上がることで、保険料が上がる可能性があるでしょう。

 

標準報酬月額については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

 

【関連記事】社会保険料の計算方法は?|給与計算と賞与計算の違い、保険料の種類や注意点を解説

 

注意点(2)複数月分の定期代を支給する場合の計算方法と変更時の注意点

 

企業によっては、1ヵ月分の定期代を毎月支給するのではなく、3ヵ月分や6ヵ月分をまとめて支給することがあります。

 

複数月分の通勤手当を一括して支給した場合でも、その全額を支給月だけの報酬として扱うわけではありません。標準報酬月額を算定する際には、支給額を定期券の通用期間の月数で割り、1ヵ月あたりの金額を各月の報酬に含めます。

 

たとえば、4月に6ヵ月分の定期代として60,000円を支給した場合、1ヵ月あたりの通勤手当は次のように計算します。

 

60,000円÷6ヵ月=10,000円

 

この場合、4月に60,000円全額を計上するのではなく、4月から9月までの各月の報酬に10,000円ずつ含めます。

 

通勤手当を現金で支給する場合だけでなく、会社が通勤定期券を現物で支給する場合も、原則として標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。

 

注意点(3)転居や通勤経路の変更があった場合

 

定期券の通用期間中に従業員が転居したり、勤務地や通勤経路が変わったりすると、次のような精算が発生することがあります。

 

 

  • 使用中の定期券の払い戻し
  • 新しい通勤経路の定期券の購入
  • 新しい定期券を購入するまでの交通費の実費支給
  • 旧定期代と新定期代との差額の追加支給または返還

 

 

このような場合、旧定期代と新定期代、切符代を単純に合計するだけでは、各月の通勤手当を正しく算出できないことがあります。変更月の処理は、「定期券の払い戻し額」や「新しい定期券の購入日」「会社への返還額」「給与の締め日」「通勤手当規程」などによって異なるためです。

 

そのため、人事給与担当者は、次の事項を確認したうえで処理する必要があります。

 

 

  • 通勤経路の変更日
  • 旧定期券の通用期間と払い戻し額
  • 新しい定期券の通用開始日と購入額
  • 従業員から会社への返還額
  • 会社から従業員への追加支給額
  • 変更月に支給した実費交通費
  • 就業規則や賃金規程に定められた精算方法

 

 

特に注意したいのは、定期券の購入額と、会社が従業員に通勤手当として支給した金額が必ずしも一致するとは限らない点です。

 

たとえば、従業員が旧定期券の払い戻しを受けても、その金額を会社に返還していなければ、会社と従業員の間で通勤手当の精算が完了していない可能性があります。反対に、払い戻し額を会社に返還し、新しい定期代との差額だけを追加支給した場合は、その精算内容を踏まえて各月の報酬を確認する必要があります。

 

変更月の通勤手当を一律の計算式で算出するのではなく、実際の支給・返還・精算内容に基づいて判断することが大切です。

 

注意点(4)通勤手当の変更が随時改定につながる場合もある

 

転居や通勤経路の変更によって、毎月定額で支給する通勤手当が増減した場合は、固定的賃金の変動に該当する可能性があります。

 

固定的賃金の変動後、継続する3ヵ月間の報酬を基に算出した標準報酬月額が、従前の標準報酬月額と比べて2等級以上変わるなど所定の要件を満たした場合は、随時改定の対象となり、標準報酬月額変更届の提出が必要です。

 

通勤手当の変更額が小さく、標準報酬月額の等級が変わらない場合は、その変更によって直ちに健康保険料や厚生年金保険料が変わるわけではありません。しかし、基本給やほかの手当の変更と重なった場合は、標準報酬月額が2等級以上変わる可能性もあります。

 

転居や通勤経路の変更があった際には、通勤手当の精算だけでなく、随時改定に該当しないかも併せて確認しましょう。判断が難しい場合は、管轄の年金事務所や社会保険労務士へ確認するとよいでしょう。

 

通勤手当に関するよくある質問

 

続いては、通勤手当の取り扱いで生じやすい「よくある質問」と回答を紹介します。

 

Q.通勤手当ではない他の手当も、課税対象になるのでしょうか?

 

従業員や役員に支給する以下のような手当は、原則として課税対象(給与所得)となります。

 

 

  • 住宅手当
  • 家族手当
  • 扶養手当
  • 地域手当
  • 職能手当
  • 残業手当
  • 休日出勤手当 など

 

 

ただし、次の金品は、一定の要件を満たす範囲で非課税となります。

 

 

① 通勤手当のうち、一定金額以下のもの

② 転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの

③ 宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの

<引用>:No.2508 給与所得となるもの(国税庁)

 

 

Q.通勤手当ではない他の手当も、社会保険料の報酬になるのでしょうか?

 

日本年金機構では、社会保険料の報酬になりうる手当について、以下の例と考え方を示しています。

 

  考え方
賃金、給料、俸給、賞与、インセンティブ、通勤手当、扶養手当、休業手当、住宅手当、家族手当、地域手当、職能手当残業手当、休日出勤手当 現実に提供された労働に対する対価に加え、給与規程等に基づいて使用者が経常的(定期的)に被用者に支払うものは、「報酬等」に該当する。労働の提供と対償の支払が時間的に一致する必要はなく、将来の労働に対するものや、病気欠勤中や休業中に支払われる手当であっても労働の対償となり、「報酬等」に該当する。また、雇用契約を前提として事業主から食事、住宅等の提供を受けている場合(現物給与)も「報酬等」に含まれる。
補填を目的とした見舞金、傷病手当金と給与の差額 恩恵的に支給するものであっても、労働協約等に基づいて支給されるもので、経常的(定期的)に支払われる場合は、「報酬等」に該当する。

 

<引用>:事業主・社会保険事務担当の皆さまへ|社会保険事務のポイント(日本年金機構)

 

※年3回以下支給される賞与は、毎月の標準報酬月額ではなく、標準賞与額として別途保険料を計算します。年4回以上支給される賞与は、原則として標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。

 

ただし、社会保険料の報酬に該当するかどうかは、手当の内容に基づく判断が必要となります。自社での判断が難しい場合は、管轄の年金事務所に相談してみましょう。

 

Q.在宅勤務制度を導入する場合、通勤手当はどのように支給すればよいのでしょうか?

 

在宅勤務制度を導入する場合、定期代を継続して支給する方法と、出社日数に応じて交通費を実費支給する方法があります。

 

社会保険上の取り扱いは、交通費の名称や支給方法だけでなく、労働契約上の労務提供地によって異なります。出社した日の労務提供地が事業所とされている場合、自宅から事業所までの交通費は、実費支給であっても原則として“通勤手当”に該当し、標準報酬月額の算定対象となる報酬に含まれます。

 

一方、労務提供地が自宅とされている日に、業務命令によって一時的に事業所へ出社した場合、その交通費は原則として“実費弁償”と認められ、報酬に含まれません。

 

定期代支給から実費支給に変更する場合は、労務提供地の定め方を確認したうえで、就業規則、賃金規程、テレワーク勤務規程、雇用契約書などを見直す必要があります。また、通勤手当の支給方法の変更が固定的賃金の変動に該当し、随時改定の対象となる可能性にも注意が必要です。

 

Q.通勤手当は、労働保険(労災保険・雇用保険)の算定にも影響する?

 

通勤手当は、労働保険料の算定にも影響するものです。

 

労働保険料は、原則として事業主が労働者に支払った賃金総額を基礎に計算します。賃金総額には、基本給、各種手当、賞与など、名称を問わず労働の対償として支払うものが含まれます。通勤手当も、所得税の課税・非課税にかかわらず賃金総額に含まれます。

 

厚生労働省では、賃金総額の定義を以下のように示しています。労働保険の場合も、課税・非課税は問いません。

 

 

労働保険における賃金総額とは、事業主がその事業に使用する労働者(年度途中の退職者を含みます。)に対して賃金、手当、賞与、その他名称のいかんを問わず労働の対償として支払うすべてのもので、税金その他社会保険料等を控除する前の支払総額をいいます。

<引用>:労働保険対象賃金の範囲<PDF>(厚生労働省)

 

 

通勤手当に関する今後のポイント

 

人事担当者が通勤手当制度の設計や計算を進めるうえでは、将来的な視点を持つことも大切です。ここでは、人事担当者が意識すべき2つのポイントを紹介します。

 

ポイント(1)通勤手当における重要性の変化

 

近年のビジネス環境では、多くの企業に採用難や離職増加による「人材不足」が生じやすくなっています。一方で令和8年4月1日以後に支払われる通勤手当から、通勤距離が片道65㎞以上の人の非課税限度額が引き上げられることになりました。そこで注目されているのが、人材への戦略的な投資として通勤手当を活用するというものです。

 

たとえば、これまで月額3万円としていた社内の通勤手当上限を引き上げることで、遠方から通勤する従業員の金銭的負担を軽減できます。ただし、公共交通機関や有料道路を利用する場合の所得税の非課税限度額は、原則として月額15万円です。支給額が非課税限度額を超えた場合、その超過部分は給与所得として課税されます。

 

さらには、昨今のようにガソリン代を含めた物価高騰が著しいなかでは、通勤手当の見直しは、福利厚生の充実や、採用対象地域を広げるための施策の一つとなります。

 

通勤手当には、標準報酬月額の算定対象になることから、引き上げをする際に注意すべき点もあります。しかし、それでも通勤手当を戦略的に活用することは、採用を強化するための選択肢となり得るでしょう。

 

ポイント(2)税制や社会保険制度の変化に備える

 

政府では、近年のビジネス環境や多様化する働き方に合わせる形で、社会保険や税金、労働に関するさまざまな制度の改正を行っています。たとえば、令和7年の税制改正で大幅な見直しが入った「年収の壁」も、大きな関連トピックの一つでしょう。

 

こうした数々の改正は、人事給与担当者の事務負担を増やす可能性が高いものです。また、社会保険料の制度が変わると、年収の壁を意識して働く従業員からの相談や問い合わせが増えたりするかもしれません。

 

そんななか、従業員への適切なサポートを行いながら毎月の給与計算や法改正への対応を実施するためには、ITツールなどを活用した定型業務の効率化も有効です。たとえば、クラウド型のITツールでは、法改正や保険料率の変更に対応するアップデートが提供される製品もあります。

 

複雑化するビジネス環境や制度へ備えることは、人事業務を戦略的に進めるうえでも非常に重要になるでしょう。

 

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本記事では、通勤手当の概要と社会保険料の概要を確認したうえで、非課税要件や社会保険料の計算における注意点を解説してきました。通勤手当と社会保険料の関係は複雑で「負担が大きいな」と感じた担当者の方も多いと思います。

 

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この記事の監修者:社会保険労務士 伊藤大祐
社労士試験合格後、社労士事務所勤務を経て、ソフトバンクグループのシェアードサービス企業で給与計算業務に携わるとともに人事システムの保守・運用を担う。
その後、人事業務のアウトソーシングサービスを提供する企業の立上げに参画。主に業務構築、システム運用に従事。
その他、人事領域以外のアウトソーシング企業等での勤務も経験し2019年に独立。
現在、人事・給与計算システムの導入支援を中心に社労士として顧問企業の労務面のサポートも行う。

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