給与計算業務を徹底解説! 業務の全体像と効率化のポイントを詳しく紹介

2025.06.04

本記事では、「給与計算の基本的な仕組み」やこの業務に関連する“賃金支払いの5原則”などを確認します。さらに、給与計算の担当者が身につけるべき基本知識や年間スケジュール、業務効率化するための方法についても解説してまいります。

給与計算は、求められる役割の幅広さや業務の複雑性から、人事給与部門に配属されたばかりの新人担当者にとって全体像がつかみにくい仕事の一つかもしれません。

 

そもそも給与計算には、毎月行う月次業務のほかに年次や随時の仕事もあります。人事給与部門の担当者として計画的に業務を進めていくためには、給与関連の年間スケジュールも把握しておく必要があるでしょう。

 

本記事では、初めに「給与計算の基本的な仕組み」やこの業務に関連する“賃金支払いの5原則”などを確認します。そして後半では、給与計算の担当者が身につけるべき基本知識年間スケジュール、業務効率化するための方法も解説していきます。

 

給与計算の担当になったばかりで右も左もわからず、とにかくこの業務の概要や全体像を掴みたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

給与計算とは何か

そもそも給与計算という概念には、狭義と広義の2つがあります。

 

 

  • 【狭義の「給与計算」】給与額を算出する月次業務
  • 【広義の「給与計算」】毎月の給与額算出に加えて賞与関連の手続き、社会保険料および税額の決定・申告・納付に関係する随時・年次業務を含めたもの

 

 

狭義の給与計算は、事業主が従業員に支払う給与(賃金)を計算する月次業務の総称です。事業主が従業員の口座に振り込む給与は、基本給に残業代や各種手当などを足した金額から、税金や社会保険料などを差し引いたものになります。

 

毎月の給与計算業務では、従業員本人の勤怠を含めた各種データや社会保険などの適用要件などをチェックしながら、法律および自社のルールに則った適切な方法で給料を算出し、振込などの手続きを進めることになります。

 

人事部門の仕事をするなかで、たとえば上司から「今月の給与計算は終わった?」と尋ねられた場合、それは狭義の給与計算を指していると考えて良いでしょう。

 

これに対して広義の給与計算は、毎月の給与算出に不可欠な社会保険料を算定・変更したり、本人の所得に応じた適切な金額で税金を払ったりする随時・年次業務も含めたものになります。

 

月次での給与の算出に加えて、給与を算出するために必要な数字を決めるために必要となる以下のような随時・年次手続きを含めたものが、広義の給与計算業務になるでしょう。

 

 

  • 従業員の入社・退社時の社会保険手続き
  • 賞与支払届出の提出
  • 特定徴収税額決定通知書にもとづく住民税額の変更
  • 社会保険の算定基礎届と労働保険申告書の提出
  • 定時改定による社会保険料の変更
  • 労働保険料の納付
  • 最低賃金の確認
  • 年末調整 など

 

 

『賃金支払いの5原則』を遵守しよう

 

給与計算および支給の手続きは、労働基準法第24条が定める「賃金支払いの5原則」に則って進めていく必要があります。給与計算が期日厳守である理由も、この賃金支払いの5原則を守る必要があるからです。

 

 

『賃金支払いの5原則』

  1. 通貨で
  2. 直接労働者に
  3. 全額を
  4. 毎月1回以上
  5. 一定の期日を定めて

<参考>:賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。(厚生労働省)

 

 

なお、近年では、キャッシュレス決済や送金サービスの多様化が進むなかで、一定の要件を満たした場合に、いわゆる賃金のデジタル払いが可能となりました。ただし、自社にこの方法を導入する場合、労使協定の締結や各従業員からの個別同意といったさまざまな手続きが必要となります。

 

これから給与計算の業務を担当する場合、「賃金支払いの5原則」はもちろんのこと、「賃金のデジタル払い」などの法律もしっかり理解しておく必要があるでしょう。

 

<参考>:使用者の方向け – 賃金のデジタル払いについて(厚生労働省)

 

 

 

【月次業務】給与計算の基本的な仕組みと流れ

月次業務の給与計算は、ある程度の決まった仕組みのなかで進められていくものです。

 

社会保険料などの変更があればもちろんその情報を反映させるなどの対応が必要となりますが、月次業務としての給与計算では、以下の1~5のステップを毎月繰り返すことが原則となります。

 

各ステップの概要を見ていきましょう。

 

ステップ1:総支給額を算出する

 

総支給額とは、各種控除を差し引く前の金額です。一般的には、基本給に以下のような各種手当を追加した金額になるでしょう。

 

 

  • 残業手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 役職手当 など

 

 

また、企業側が給与から独自に天引き・控除できる以下のような制度に該当した場合は、このステップで総支給額から差し引くことになります。

 

 

  • 旅行積立金
  • 住宅費
  • 遅刻・早退・欠勤に対する控除 など

 

 

まとめて計算式であらわすと、以下のとおりです。

 

 

【総支給額の算出】=基本給+各種手当-欠勤や自社独自の控除部分

 

 

ステップ2:法令で定められた控除額を算出する

 

法律で定められた控除項目には、以下のものがあります。対象の要件を確認したうえで、給与計算時に適用する必要があるでしょう。

 

 

  • 【社会保険料】厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料

  • 【税金】所得税・住民税・など

 

 

社会保険料は、日本年金機構から通知された標準報酬月額や各保険料の料率などの情報を参照して計算する必要があります。住民税および所得税についても、法律で定められた計算式にもとづき適正な数字の算出が求められます。

 

社会保険料の計算方法については、下記の記事をご確認ください。

 

社会保険料の計算方法は?|給与計算と賞与計算の違い、保険料の種類や注意点を解説

 

ステップ3:差引支給額を算出する

 

差引支給額とは、従業員が実際に受け取る手取り額です。ステップ1で算出した「総支給額」から、ステップ2の「控除額」を差し引いたものになります。計算式であらわすと、以下のようになるでしょう。

 

 

【差引支給額】=総支給額-控除額

 

 

ステップ4:給与の振込手続きと明細書の作成

 

次に、自社が定めた方法で、給与の支払い手続きと明細書の発行を行います。

 

具体的なやり方は企業ごとに異なりますが、銀行振込をする場合は期日までに振込予約を行い、従業員には別途、給与明細書を渡すイメージになるでしょう。

 

近年の給与計算業務では、専用システムを使いWeb明細を発行する方法も多くなっています。

 

ステップ5:税金・社会保険料の振込手続き

 

従業員の給与から源泉徴収した社会保険料と税金は、期日までに納付しなければなりません。納付期限の原則は、以下のとおりになります。

 

 

  • 【所得税・住民税】給与が支払われた月の翌月10日までに納付
  • 【所得税・住民税】給与が支払われた月の翌月10日までに納付

 

 

上記の社会保険料および税金を期限までに納付しない場合、事業所にペナルティが課せられます。給与計算の業務を担当する場合、“賃金支払いの5原則”を守ることに加えて、社会保険および税金の納付ルールなどを意識したスケジューリングが必要となるでしょう。

【月次業務】給与計算における毎月のスケジュール

毎月の給与計算では、時期ごとに行うべき仕事が概ね決まっています。ここでは「10日締め、当月25日支払い」の会社で月次業務としての給与計算をするケースを例として、担当者が行うべき業務とスケジュール感を見ていきましょう。

 

【毎月11日以降】勤怠チェック~給与計算

 

会社の規模やほかの仕事との兼ね合いで変わる部分もありますが、中小企業の場合、給与支給日の2週間前ぐらいから勤怠データの確認を始めることが多いです。具体的には、以下のような項目のチェックが必要でしょう。

 

 

  • 労働時間
  • 残業時間
  • 出勤日数
  • 欠勤日数
  • 遅刻早退の有無
  • 有給休暇の取得状況

 

 

確認対象データが多い場合は、「前月末ぐらいに半分、11日以降に残りの半分」などの形で業務分散してもよいかもしれません。

 

勤怠データが固まったら支給額と控除額の計算を行い、差引支給額を算出します。

 

【毎月25日】給与の支給

 

給与支給日までに給与明細を発行しておきます。金融機関からの銀行振込の場合、振り込み依頼~入金までに3営業日ほどかかることがあります。

 

給与の支払日は“賃金支払いの5原則”と関係する要素です。金融機関の情報を確認しながら、振り込み遅れ・忘れを起こさない手続きを意識する必要があるでしょう。

 

<参考>:賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。(厚生労働省)

 

【毎月末日】前月分の社会保険料納付

 

社会保険料の納付期限は、給与支給月の翌月末日です。前月に従業員の給与から天引きした社会保険料と、事業主負担分の社会保険料をあわせて納付します。

 

<参考>:納付期限(日本年金機構)

 

【翌月10日まで】住民税と源泉所得税の納付

 

従業員の給与から源泉徴収した税金(源泉所得税+住民税)は、翌月の10日までに納付します。住民税は市区町村、源泉所得税は税務署での納税となります。

 

なお、要件に該当した事業者が申請を行った場合、源泉所得税の納付を「半年に1回」にできる特例もあります。この特例については、記事の後半で詳しく解説します。

給与計算業務に必要な基本知識

給与計算における月次・年次・随時の業務を行うためには、非常に幅広い分野の知識を身に付けたうえで、法改正などのたびにそれらをアップデートし続ける必要があります。

 

ここでは、給与計算の初心者に習得してほしい専門知識における5つのカテゴリを紹介しましょう。

 

(1)労務・労働に関する法律知識

 

給与計算の業務に関連する法律は、先ほど紹介した“賃金支払いの5原則”のほかにも、さまざまなものがあります。たとえば、労働条件の最低ラインを定めた法律に労働基準法があります。

 

労働基準法のなかでも人事給与の担当者にとって特に重要となるのが、時間外労働における割増賃金の計算です。その考え方をわかりやすくまとめると、以下のとおりになります。

 

 

  • 【時間外労働】法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えたとき
    ⇒割増率25%以上(月60時間を超える部分は50%以上)
  • 【休日労働】法定休日(週1日)に労働させたとき
    ⇒法定休日(週1日)に労働させたとき割増率35%以上

  • 【深夜労働】22時~5時まで労働させたとき
    ⇒割増率25%以上

※時間外+深夜労働の場合は割増率50%以上(月60時間を超える部分は75%以上)

※休日+深夜労働の場合は割増率60%以上

 

 

たとえば、時給1,500円の従業員が13時~23時まで(うち休憩1時間)で働いた場合、22時~23時までが時間外労働+深夜労働になるイメージです。この場合、以下の割増賃金の支払いが必要となるでしょう。

 

 

時給1,500円×1.5(時間外労働1.25+深夜労働0.25)=2,250円

 

 

上記のように割増賃金の計算をするためには、「法定労働時間とはなにか?」や「時間外労働の定義と割増率とは?」などの幅広い法律知識を身に付け、それらを業務のなかで引き出せる状態にしておく必要があります。

 

<参考>:割増賃金の計算方法<PDF>(川崎北労働基準監督署)

 

(2)社会保険料の知識

 

人事担当者が取り扱う社会保険料は、以下5つの保険料で構成されています。

 

 

(1)【健康保険料】病気・ケガに備える制度の保険料(労働災害以外)

(2)【厚生年金保険料】高齢や障害の状態、死亡に備える制度の保険料

(3)【介護保険料】要支援・要介護認定時の介護サービス利用に備える保険料

(4)【雇用保険料】失業や教育訓練などに備える制度の保険料

(5)【労災保険料】労働災害に備える制度の保険料

 

 

このうち、労災保険料は企業側の100%負担ですので、給与計算時に取り扱うものは、(1)~(4)の4種類になります。

 

そして、社会保険の場合は、保険料の算出に加えて以下のような手続きを随時行う必要があります。

 

 

  • 従業員が入社・退社したときの手続き
  • 従業員の氏名・住所・生年月日に変更が生じたときの手続き
  • 従業員が家族を扶養に入れたときの手続き
  • 従業員の被扶養者に異動があったときの手続き
  • 産休取得時の社会保険料免除への対応 など

 

 

また、社会保険は、以下のように年次業務も非常に多くあります。

 

 

  • 各保険料のチェックと最新情報の反映
  • 労働保険料の納付
  • 社会保険の算定基礎届・労働保険申告書を提出
  • 定時改定による社会保険料率の変更
  • 賞与支払届の提出
  • 年末調整

 

 

随時・月次・年次の業務を滞りなくすべて行うためには、各保険料の概要はもちろんのこと、年金事務所や健康保険組合などに行う手続きの概要も早めに理解してスケジューリングをしていく必要があるでしょう。

 

社会保険料の詳しい計算方法については、下記の記事をご確認ください。

 

社会保険料の計算方法は?|給与計算と賞与計算の違い、保険料の種類や注意点を解説

 

(3)税金の知識

 

従業員が給与所得者である場合、毎月の給与や賞与から天引きした分を企業が納付したうえで、その年の最後に実施する年末調整の手続きで精算をするのが原則です。1年間の収入にかかると予想される所得税を、企業側が給与・賞与からあらかじめ差し引くことを『源泉徴収』と呼びます。

 

源泉徴収する税額は、国税庁が毎年発表する「給与所得の源泉徴収税額表」を使って算出します。

 

<参考>:「給与所得の源泉徴収税額表」(国税庁)

 

ただし、住民税の特別徴収を選択している場合は、「特別徴収税額の決定通知書」に記載された月割額を各従業員の給与から源泉徴収する形になります。

 

なお、給与計算における税額の算出や納付は、国の政策の影響を受けることもあります。たとえば、令和6年度分所得税では、国が定めた定額減税の影響で給与計算のオペレーションにも大きな変更が入ることになりました。

 

また、大半の給与所得者は年末調整で所得税額が確定することになりますが、一部の人は自分で確定申告を行う必要がでてくる場合もあります。

 

12月頃になると、年末調整に加えて確定申告に関する問い合わせが生じる可能性もあるでしょう。こうした事態に備えて、以下のポイントを早めに整理しておくことが重要になります。

 

 

  • 給与所得者と税金の関係(源泉徴収)
  • 市県民税の特別徴収
  • 年末調整
  • 給与所得者と確定申告の関係

 

 

<参考>:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

 

これらの内容は、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひチェックしてください。

 

年末調整業務の進め方ガイド|担当者がやるべき手続きの流れや必要書類の種類などを解説

 

(4)自社独自の賃金制度や働き方の知識

 

近年のビジネス環境では、国が推進する働き方改革やダイバーシティ経営に対応するために、独自の働き方や賃金制度などを導入する企業も多くなっています。そのため、給与計算をするうえでは、こうした自社の独自ルールもしっかり理解しておく必要があります。

 

また、自社ルールの知識は、新しい給与計算システムの導入や給与計算アウトソーシングの利用相談をするうえでも必要なものです。自社ならではのルールを熟知していると、「こうした働き方に対応できるか?」「カスタマイズは可能か?」などの具体的な相談もしやすくなるでしょう。

 

(5)情報リテラシーの知識

 

給与計算の業務では、従業員個人および会社のさまざまな情報を取り扱います。

 

こうしたなかで、大事な申請書やデータの紛失・情報漏洩を防ぐためには、情報リテラシーを高めることが大切です。情報リテラシーとは、情報機器の操作や、各種情報の適切な取り扱い・活用に関する能力の総称になります。

 

特に近年は、給与計算システムを使うなかで、インターネット上にデータをアップロードしたり、外部委託時に専門業者に大事なデータを渡したりすることも当たり前の時代になりつつあります。

 

こうしたなかで情報漏洩などのトラブルを防ぐためには、給与計算の担当者にも高い情報リテラシーの高さが求められるでしょう。

 

<参考>:平成10年版 通信白書|第1章 デジタルネットワーク社会の幕開け~変わりゆくライフスタイル~(総務省)

給与計算業務での注意点

これからはじめて給与計算業務に携わる場合、以下の2点に注意する必要があります。

 

注意(1)企業によって業務範囲が異なる

 

「どこからどこまでの仕事を給与計算と呼ぶのか?」や「人事部門の担当はどこまでなのか?」といった役割・範囲は、企業ごとに異なります。

 

たとえば、人事部門が給与・賞与の計算をして、そのデータを受け取った経理部門が振り込み手続きを行う場合、連携オペレーションを理解したうえで、毎月の調整などをしていく必要があるでしょう。また、小さな企業などでは、人事という部門がそもそもなく、総務部や管理部で給与関連業務を一括で行うケースもあるようです。

 

このように、具体的な仕事内容や役割も「給与担当者が1人だけの場合」と「複数人で給与計算する場合」では大きく変わってくるかもしれません。

 

人事部門に配属されて「給与計算の担当」と言われたときには、「自分の担当範囲がどこからどこまでなのか?」「他部署や先輩などとの連携・共同作業はあるのか?」などの確認をしたほうがよいでしょう。

 

自分の担当範囲を理解することで、適切な専門知識の習得がしやすくなるはずです。

 

注意(2)給与計算のミスは許されない

 

給与計算は、さまざまな法律や要素が絡み合っていて非常に複雑である一方で、ミスは絶対に許されない業務です。仮に給与計算でミスが生じた場合、企業には以下のような問題が生じる可能性がでてきます。

 

 

  • 従業員や社会からの信用を失う
  • 従業員に遅延損害金を支払う可能性が生じる
  • 行政罰が課せられることがある
  • 加算税や延滞税が課税されることがある

 

 

具体的な問題は、ミスの内容や発覚後の対処によって変わってきます。しかしいずれにせよ、従業員にとって大事な収入や税金などの額が間違っていたとなれば、そこに不安や不信感が生じることは否めないでしょう。

 

給与計算で生じやすいミスの特徴や適切な対処法などは、以下の記事でも解説しています。ぜひチェックしてください。

 

給与計算でミスが発覚! 適切な対処方法とリスク、効果的な防止策を解説

給与計算業務の年間スケジュール

給与計算の業務をミスなくスケジュールどおりに進めていくためには、各月にどのような年次業務があるかを把握したうえで、月次の給与計算との間で優先順位などをつけながら、作業を進めていくことが必要です。

 

ここでは、給与計算の年間スケジュールと重要なポイントを見ていきましょう。

 

給与計算業務における年間スケジュール

 

4月に入社式や昇給がある会社で、賞与を7月と12月に支給する場合、給与計算業務の年間スケジュールは以下のようになります。

 

給与計算業務の内容

提出先と期日

公的な情報

(令和6~7年度分)

1月

・源泉所得税の特例納付(事前申請した場合)

20日まで(7~12月給与からの源泉徴収分)

A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(国税庁)

・法定調書の提出

31日までに税務署へ

法定調書(源泉徴収票、支払調書)の作成と提出(税務署)

・給与支払報告書の提出

31日までに市区町村役場へ

給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)(国税庁)

・労働保険料の納付

31日まで(分割納付の第3期分)

労働保険料の申告・納付(厚生労働省)

4月

新入社員の入社手続き(社会保険)

 

健康保険・厚生年金保険事務手続きガイド(日本年金機構)

・保険料率の変更確認(健康保険・雇用保険・介護保険)

 

保険料率(協会けんぽ)

事業主・被保険者の皆さまへ|令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内(厚生労働省)

・昇給や異動などによる手当や給与額の変更確認

 

随時改定(月額変更届)(日本年金機構)

6月

・特別徴収額決定通知書に基づき住民税額を変更

 

6.特別徴収税額通知書について(豊島区)

7月

・源泉所得税の特例納付

(事前申請した場合)

10日まで(1~6月給与からの源泉徴収分)

A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(国税庁)

・社会保険の算定基礎届と労働保険の年度更新申告書の提出

10日までに年金事務所へ

労働保険の年度更新とは(厚生労働省)

定時決定(算定基礎届)(日本年金機構)

・賞与支払届の提出

賞与支給日から5日以内に年金事務所・健康保険組合へ

従業員に賞与を支給したときの手続き(日本年金機構)

10月

・定時改定による社会保険料の変更

 

定時決定(算定基礎届)(日本年金機構)

・労働保険料の納付

31日まで(分割納付の第2期分)

労働保険料の申告・納付(厚生労働省)

・最低賃金の確認

 

地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)

12月

・賞与の支給

 

 

・年末調整

 

年末調整がよくわかるページ(令和6年分)(国税庁)

・賞与支払届の提出

賞与支給日から5日以内に年金事務所・健康保険組合へ

従業員に賞与を支給したときの手続き(日本年金機構)

 

給与計算の年間スケジュールにおける重要ポイント

年次業務の多くは、実施時期が決まっています。月次・随時の仕事と並行して、期日までに年次業務を滞りなく進めるためには、専門的な知識を理解したうえで、適切なスケジューリングをすることが重要です。

 

ここでは、年次業務のなかで特に重要度が高い7つのポイントを簡単に紹介しましょう。

 

ポイント(1)社会保険料率の見直し

 

社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険)の料率については、最新の情報を給与計算システムなどに反映させる必要があります。なお、健康保険料と介護保険料の料率は、毎年3月の改定です。

 

厚生年金保険の料率は、段階的な引き上げが終わり18.3%で固定されている状況です。各保険における2025年(令和7年)の料率は、公的なページから参照してください。

 

<参考>:保険料率(協会けんぽ)

<参考>:厚生年金保険料額表(日本年金機構)

<参考>:事業主・被保険者の皆さまへ|令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内<PDF>(厚生労働省)

 

ポイント(2)住民税の年度更新

 

会社が住民税の特別徴収をしている場合、各自治体から届く「住民税の特別徴収納税額通知書」を開封し、給与計算システムなどにその情報を反映させていく必要があります。

 

通知書に記載された税額は、従業員ごとに異なります。企業側では6月の給与より住民税の特別徴収を始めるため、通知が届く5月~6月にかけて年度更新の対応を行う必要があります。

 

ポイント(3)労働保険の年度更新

 

労働保険料(労災保険・雇用保険)については、毎年6月1日~7月10日までの間に、以下の2つの手続きを行います。これがいわゆる「労働保険の年度更新」というものです。

 

 

  • 前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付
  • 新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続き

 

 

労働保険ではこの手続きによって、保険年度ごとに概算で保険料を納付し、保険年度末に賃金総額が確定したあとの精算を行う仕組みになっています。

 

<参考>:労働保険の年度更新とは(厚生労働省)

 

ポイント(4)社会保険の算定基礎届

 

事業主は、健康保険・厚生年金保険の被保険者および70際以上の被用者が受け取る実際の報酬と標準報酬月額の間に大きな開きが生じないようにするために、7月1日現在で使用している全被保険者の3ヵ月間(4月、5月、6月)の報酬月額を算定基礎届で申告する必要があります。

 

この算定基礎届の内容に基づき年1回標準報酬月額を決め直すことを、「定時決定」と呼びます。定時決定の詳細や随時決定との違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

 

社会保険における月額変更とは? 随時改定と定時決定の違いや月額変更届の書き方を解説

 

 

ポイント(5)年末調整

 

年末調整とは、給与所得者である従業員が「本来支払うべき年税額」を算出したうえで、給与から源泉徴収された「税額の年間合計額」と一致させる清算手続きの総称です。

 

年末調整は、人事給与部門のなかで特にボリュームが大きい業務になります。メインの作業は12月ですが、その準備は10月頃から始めることが一般的です。

 

年末調整の精算を終えたあとは、源泉所得票・給与支払報告書・法定調書合計表といった書類を作成し、翌年の1月末までに市区町村や税務署に提出する必要があります。

 

年末調整業務の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

 

年末調整業務の進め方ガイド|担当者がやるべき手続きの流れや必要書類の種類などを解説

 

ポイント(6)源泉所得税の納付

 

従業員の給与などから源泉徴収した税金(所得税および復興特別所得税)は、給与支払い月の翌月10日までに国に納付するのが原則です。

 

ただし、給与を支払う従業員数が常時10人以下で特例の適用を受けた場合、本来であれば毎月納付すべき税金を以下の年2回に分けて納められるようになります。

 

 

  • 【7月10日まで】1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税
  • 【翌年1月20日まで】7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税

 

 

<参考>:A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(国税庁)

<参考>:源泉所得税の納税手続(国税庁)

 

ポイント(7)固定給の変更

 

社会保険の被保険者である従業員の報酬が昇給もしくは降給などの要因で大幅に変動した場合、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定することになります。この手続きは「随時改定」と呼ばれるもので、月額変更届の提出が必要となります。

 

随時改定の具体的な要件などについては、以下の記事を参考にしてください。

 

社会保険における月額変更とは? 随時改定と定時決定の違いや月額変更届の書き方を解説

給与計算業務を効率化するためのポイント

給与計算をミスなく、月次・年次のスケジュールどおりに進めていくためには、仕事の効率化をすることも大切です。給与計算の効率化は、担当者の負担を減らすうえでも役立つものとなります。

 

ここでは、給与計算業務における効率化のポイントをいくつかご紹介しましょう。

 

ポイント(1)給与計算業務の棚卸しをする

 

給与計算業務の効率化で目指すべきゴールは、適切な施策の導入・実施によって、費用対効果を高めることです。そのためには、現状の月次・随時・年次業務の中身とフローをすべて洗い出し、給与計算の業務全体を可視化することが重要になります。

 

また、施策の費用対効果を高めるうえでは、給与計算をするなかで感じている問題点を明確にすることも大切です。たとえば、「年末調整の書類が紙なので、客先常駐組の提出が遅くなりがち」や「ダブルチェック体制がないため、年に1回程度のミスが発生する」といった具体的な課題がわかると、それらに対する適切なアプローチも見つけやすくなるでしょう。

 

ポイント(2)法令変更に対応できる環境と体制づくり

 

給与計算の担当者は、国の施策や法令変更にも対応しなければなりません。国の施策のなかには、2024年に行われた定額減税のように1年限定のスポットかつ給与計算のオペレーションを複雑化するようなものも存在します。

 

法令変更を見逃すと、誤った制度・数値で計算することになり会社や従業員に迷惑がかかってしまいます。こうした問題を防ぐためには、給与計算に関連する制度情報を定期的にチェックし、最新の内容を業務フローや給与計算システムに反映できる柔軟性も必要です。

 

ポイント(3)給与計算のIT化やDX化を行う

 

仮に手計算によるミスが生じやすかったり、年末調整で配布した紙の書類の回収率が悪かったりする場合には、専用システムを導入して業務のデジタル化を図ることも考えましょう。

 

たとえば、クラウド上で動くシステムの場合、法令の変更内容も自動でシステム内に反映されることが多いです。また、給与計算システムの多くは、入力された項目のチェック機能も充実しています。

 

自社に適したシステムを導入することで、給与計算担当者を悩ませる問題の多くが緩和・改善しやすくなるかもしれません。

 

ポイント(4)給与計算アウトソーシングを利用する

 

そもそも給与計算ができる担当者が少なく業務の属人化が生じていたり、月次の給与計算に追われて採用や組織開発を含めた人事業務全体がうまく回っていなかったりする場合もあるかもしれません。

 

そういった環境であれば、定型化された給与計算や年末調整などの業務を切り出し、外部の業者にアウトソーシングするのも一つの手段です。

 

外部の事業者は、給与計算のプロです。こうした業者にすべてを任せれば、法令変更に対応するための仕組み・体制づくりなども不要になります。また、給与計算アウトソーシングの利用とあわせて専用システムを導入することで、アナログな仕組みで生じていた「書類の提出率が悪い」や「従業員側の記入ミスが多い」などの問題も解消しやすくなるでしょう。

給与計算アウトソーシングならラクラスへ

本記事では、給与計算の基本的な仕組みやこの業務に関連する賃金支払いの5原則などを確認してきました。給与計算の担当者が身につけるべき基本知識や年間スケジュール、業務効率化するための方法も解説しましたが、最後にお伝えしたとおり給与計算アウトソーシングは効率化を実現できる選択といえます。

 

もし、給与計算のアウトソーシングを実現して人事業務を高品質化したいとお考えであれば、ラクラスにお任せください。ラクラスなら、クラウドとアウトソーシングを掛け合わせた『BpaaS』により、人事のノンコア業務をアウトソースすることができコア業務に集中できるようになります。

 

ラクラスの特徴として、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ対応を得意としています。他社では難色を示してしまうようなカスタマイズであっても、柔軟に対応することができます。それにより、大幅な業務効率の改善を見込むことができます。

 

また、セキュアな環境で運用されるのはもちろんのこと、常に情報共有をして運用状況を可視化することも心掛けています。そのため、属人化は解消されやすく「人事の課題が解決した」という声も数多くいただいております。

 

特に大企業を中心として760社86万人以上の受託実績がありますが、もし御社でも人事の課題を抱えており解決方法をお探しでしたら、ぜひわたしたちラクラスへご相談ください。